最後の晩餐にはまだ早い


代官山「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」(2015年1月)

 去年一年間に初訪問した店の中で、料理に関しては最も鮮烈な印象を残したのが、代官山と恵比寿の中間にある、フランス料理の「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」、1977年生まれと云う若い高橋料理長の料理は、アイデアと構成力、遊び心とアーチスト精神を感じさせ、「これは注目すべき才能」と瞠目、それまで訪れていなかった事を後悔した店だった。
 再訪問を願いながらも、代官山が我家からも職場からもアクセスが悪く、なかなか機会がなかったのだが、今回高橋料理長が今年3月一杯での退店を発表したため、慌ててグルメ仲間を誘って駆け付ける事にした(笑)。
 今の時代店は人を待ってくれない、「何時か行こう」と思いながら日程や面子が揃うのを待つ間に店が無くなり、料理人も居なくなっていた事が過去に何回かあった(笑)。

 前回は昼だったが今回は夜、レストランの本領発揮は夜の部なのは理解しているつもりだが、加齢により最近は夜遅いのが辛くなり(笑)、昼食中心の外食生活になっていた。それでも「今日は勝負」と云う時はやはり夜だろう、特にこの週は前半に「フロリレージュ」を夜訪れていたので、同世代の才能ある料理人が同価格帯でどんな料理を提供するのか、興味と期待が大きかった。
 まずはその料理(税込12,400円)14品を紹介したい、なお料理名は後で料理長に確認したもの、

        150128-1.jpg
・米の泡をまとった真鯛、ライムマリネ

     150128-2.jpg
・薩摩芋(五郎島金時) チュロス、紫芋のコルヌ・ブーダンノワールムース

        150128-3.jpg
・ワカサギの牛蒡フリット

     150128-4.jpg
・徳島県産カワハギのカルパッチョ、その肝と洋梨のヴィシソワーズ

        150128-5.jpg
・蜜柑風味のテリーヌドゥフォアグラ、スパイスチュイル、キャラメルナッツパウダー 、ピスタチオソース

        150128-6.jpg
・北海道産毛蟹のコンソメ・パイ包み、蟹味噌、セロリラブとハーブの香るクネル

     150128-7.jpg
・鰤大根のミルフィーユ、山葵菜のソルベ

     150128-8.jpg
・鱈の白子、カリフラワー、シャンパンのエミュリション

        150128-9.jpg
・萩産甘鯛のヴァプール、鮑とその肝、タラの芽、九条葱のリゾット

     150128-10.jpg
・茨城県産コルヴェール、ソースサルミ

        150128-11.jpg
・その腿肉と内臓のクロケット、紅苔菜と紫芽キャベツ、人参のクーリー

・黒トリュフのグラス、じゃがいもとイヴォワールのムース、フランボワーズ、トリュフの森(すいません、画像撮り忘れました)

     150128-12.jpg
・熊本県産晩白柚の冷たいミルフィーユ、ヴィーニュリヨネーズ、バジル

     150128-13.jpg
・トンカ豆 ブランマンジェ、アールグレイ オレンジ シューアラクレーム

 料理全体の印象から云うと、前回は8月盛夏の料理だったせいか、全体に軽やかで随所に緻密な遊び心があり、何処か北欧調も感じさせる料理だったと記憶している。ところが今回は途中からフランスへ航路を戻したみたいな印象、「自分のオリジンはあくまでもフランス料理」と高橋料理長が宣言しているみたいで、少し意外感もあったが、考えてみれば彼はパリで「ルドワイヤン」「シェ・ラミジャン」と云った、高級店とビストロそれぞれを代表する名店で働いている、根源にあるものはあくまでもフランスそれもクラシック料理なのだろう、本当にフランスのいい部分を学んで来て、それを忘れないでいるのだなと感じた。だからと云って決して古臭くなく現代の東京料理として昇華している、これが彼のセンスだと思う。

 全品を解説すると長くなるので簡単に留めるが、ワカサギは前回の稚鮎と同じくゴボウのフリットに泳がせたもの、冷たいカワハギの後にはフォアグラで舌を中和させ、その後には熱いパイ包み焼きスープ、そして冷菜の鰤ミルフィーユ、更には白子の温かいヴルーテ、ここまでが前菜になるが、温度差と食感の違う緩急の付け方が見事、他店ではなかなか味わえない優れたコンビネーションだった。
 魚料理は鮑とタラの芽の苦味の扱いが印象的、そして肉料理は茨城産のコルヴェール、奇しくも同じ週に行った「フロリレージュ」と同じ食材、これは偶然ではないと思いたいが(笑)、両者全く対照的な料理だった。塊肉を軽めのソースで鋭利なテーブルナイフを使い食べさせる川手料理に対し、エギュイエット(薄切り)仕立てで、ソースサルミと云う伝統的手法で提供された高橋料理、勿論現代的に軽くリファインしているが、予想とは違うアプローチだったので、不意打ちを受けたみたいだ(笑)。この鴨料理は古典へのリスペクトを感じて、フランス料理はやはりソースだなとあらためて思う。
 デセール3品はビジュアルや味面で文句なし、今の東京では料理人が作るものとしては最高レベルではないだろうか?これならパリの超高級店でも通用する筈だ。

 前回にも増して見事な料理構成、トリュフやキャビアみたいな飛び道具(笑)を使う訳では無いし食材は殆ど国産だが、とてもフランスの風を感じさせる。そして「フロリレージュ」の川手料理と同じく、「この次」にも期待が高まってしまう。私見だが、この二人は今の東京を代表する若手料理人だと云える、技術があるだけでなくフランスのフランス料理と、日本人が美味しいと感じるフランス料理を知っている、これは大事だ。各自の特徴を一言で云えば「感性の川手、構成の高橋」だろうか?作曲家なら川手料理がC・ドビュッシーで、高橋料理はM・ラヴェル(笑)。
 退店時には一階まで降りてきた高橋料理長に挨拶、4月以降については書いていいのだと思うが、独立を視野に入れているみたいだ。これは「フロリレージュ」の新店同様に、今年の東京フレンチの目玉イベントになると思う。でも今のうちに行っておいた方が、将来「私はこの人気理料人が雇われだった時代を知っている」と、自慢出来る事になるかも知れない(笑)。

スポンサーサイト

  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0


 管理者にだけ表示を許可する
 


プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

訪問者

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2017 07  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -