最後の晩餐にはまだ早い


大阪・上本町「レストラン・コーイン」(2015関西食べ続け⑥)

 今回、関西でレストランをご一緒した数人の方から「ブログ見ていますよ」と、激励の言葉をいただき、身に余る光栄?であり、あらためて間違った知識や下品な事は書けないと、気持ちだけは身が引き締まる思いだった(笑)。
 長く食べ歩きの経験を積むと、その日初めて行く店でも料理人の経歴や年齢、店の場所や価格帯等で「今日は大体こんな料理が出るだろう」と予想をする、それが大きく外れる事はあまりなくなった、それだけ日本特に東京の料理人は平均化し、且つレベルが高くなったと云う事なのだろう。
 そんな私でも、極まれにだが予想の斜め上を行く料理に出会う事がある、そうした店を代表するのが、この日一年ぶりに伺う大阪上本町の「レストラン・コーイン」、関西三日目の夜は、「ワルプルギスの夜」が始まる魔窟に招かれるが如く、またこの店へ来てしまった(笑)。

 「本当に営業しているの?」と、疑りたくなる位に照明を落とした入口扉を開けると、笑顔で迎えてくれたのは、現在サービスを担当しているガンジー君(笑)。厨房に近い席に案内され、湯浅料理長にも挨拶し始まった長大なディネ、先ずは当日の料理を全てお見せしたい。

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・トリュフ、オニオン、自家製猪パンチェッタのタルトレット(左)
・グジェールバーガー、トリュフ、自家製鹿生ハム、トマト、ピクルス(右)

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・赤ピーマンのババロア、カニ身とウニ、あかうしのコンソメジュレ

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・長崎トラフグ、パテ・ド・カンパーニュ、ブルノアレギューム

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・セロリラブ、土佐ジロー卵黄、あかうしモアール、トリュフ、赤ワイングラスビアン、ブリオッシュクルトン、チョリソー
―ここまでがアミューズ(笑)。

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・フォアグラカナールとトリュフのテリーヌ、生コショウのソース

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・畑(芽キャベツ、スティツクセニョール、赤キャベツ、コールラビ、黄色人参、ルコラ、マスタードツリー、スイスチャード、ビーツの芽、バジル、ラディシュ、カブ、紫カブ、オニオン新芽)野菜皮を煮たブイヨンとバターのソース、キャビア

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・オマールブルーのコンソメ、リードヴォー、クードオマールブルー
―ここまでが前菜(笑)

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・オマールブルーのブーダン、ソースアメリケーヌ
 (ケンイカ、ラパン、オマールブルー、トリュフ等を詰めて)

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・高知雌鹿のロワイヤル、畑のジャガイモのピュレ

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・自家製フロマージュ(高知県ヤギミルクのシェーブル、北海道ミルクのアオカビ、シロカビ&トリュフ、ジオトリカム(酵母))

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・畑のサツマイモのクリーム、リンゴのグラニテ、ライム、メレンゲ、グラスロワイヤル

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・自家製マスカルポーネとショコラのキャレ(自家製マスカルポーネのムースとヘーゼルナッツのジョコンド、塩キャラメルのアイス、キャラメルショコラソース、ショコラの板)

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・ミニャルディーズ(持ち帰った(笑))

 前菜が終わったあたりで、あまりに馬鹿馬鹿しくなり笑い出したくなった、この時期東京で「トリュフコース」を名乗り、2万円超でムニュを出す店があるが、その量たるやカンナ屑みたいなもの(笑)、「トリュフとはこれ位使う物だ」と、この店みたいに開き直られたら初めから勝負にならない、あとで出て来た湯浅料理長に「今年は黒トリュフ幾らです?」と怖々聞いたら「1キロ20万円位」と、まるで「それがどうした?」と云わんばかりで、もうこれで負けた(笑)。
 米国人の健康オタクを皮肉って「健康になるためなら、死んでもいいと思う人達」と云うが、この料理人は「自分が納得出来る料理を作れ、客の驚く顔を見られるなら、店が潰れてもいい」なのかも知れない(笑)。

 全料理の解説は長くなるので、特徴的だった料理だけに留めるが、まずは卵黄とトリュフの皿で、卵とトリュフの相性は良しとされるが、食感が違うので意外と料理が難しい、この料理はモワル(骨髄)とセロリラブを加える事で両者の繋がりが良くなり、蠱惑的な一品になった、各素材の質も申し分ない。
 フォアグラの皿は刺激ある胡椒の香りが素材を引き立てる、ここでもトリュフが存在を主張している。自家菜園の野菜料理は前回とスタイルを変えたとの事だが、畑の風景を再現したみたいな印象で、各野菜の味も際立っていた。
 特筆すべきはコンソメで、手島コンソメがハルク・ホーガンをLCCの座席へ押し込めた様な凝縮型とすれば、湯浅コンソメは甘味と芳香を発散する妖艶な印象、籐椅子に座った、映画「エマニュエル」でのシルビア・クリステルみたい(笑)。
 そして肉料理は鹿のロワイヤル、前回が猪ロワイヤルだったので、何故同じ料理?と訝ったが、食べてみて納得した、食べる側に違いを感じて欲しかったのだ、猛々しい若者然とした猪に対し、今回の雌鹿はしなやかな肢体の美少女(笑)、繊細な肉質ながら濃厚に舌に残る味がある。本来「ロワイヤル」は野兎(リエーブル)を使う料理だが、今回の鹿は輸送でストレスを受けた兎を上回るのでは?と思った。
 
 自家製フロマージュは精度を増し、やはり自家製のマスカルポーネを使ったデセールも秀逸だった。この日の料理は瑕疵が全く感じられず、食べ手側の知識と経験値を試す企み等、冷静な知性まで感じさせた、この料理人は熱くなりながら醒めている。
 私は1977年頃からフランス料理店に通っているが、その短くはない経歴の中でも十指に入れたい料理だった、勿論国内外を含めてだ(笑)。

 この料理人を或る人が「無冠の帝王」と呼んだが(笑)、まさにそんなイメージ。二日後に京都五条の河井寛次郎記念館を訪れるのだが、人間国宝(重要無形文化財)等、官からの栄達を全て辞退した、河井の独自な作風にも似た、孤高なアルチザン精神を感じた。
 最後のアンフィージョンを飲み終えたら、ワーグナーの楽劇全曲を聞き終えたみたいな充実感と疲労感、長大で過激な料理内容に比べたら、支払いは驚く位に安い、他店を全て蹴散らす様なこの料理人に、今回も完敗だった(笑)。

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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