最後の晩餐にはまだ早い


千石「モンプチコションローズ」

 格安牛丼チェーンの過酷な労働実態を表す言葉として、すっかり有名になってしまった「ワン・オペレーション」、略して「ワンオペ」、その店舗の労働全てを一人だけで回す事を呼ぶが、悪い意味で使われる事が多い、ところがこのワンオペ、東京のフレンチやイタリアン、更にはモダンスパニュッシュやバル系の店で増加している、理由の第一は飲食店における深刻な労働力不足だ。
 時給1,200円出してもアルバイトすら来ない、来たとしても長続きせずにすぐ辞めてしまう。「そして誰もいなくなった」みたいに、朝来たら料理人もサービスも消えていたと云う店の話も聞いた、オーナーとしたらこれは堪らない。新しい人間が来てもまた最初から教えないといけない、その繰り返しでは疲労感とストレスが増すだけだ。
 もう「他力」をあてに出来ないなら、夫婦二人いや自分一人だけで店をやる、料理人兼サービスでも回せるよう、開店当初からワンオペを想定した店造りをする、こう考える料理人が、若い世代に増えて来ていると感じている。

 この日初めてランチタイムに伺う事になった、文京区千石のフランス料理「モンプチコションローズ」もカウンター8席だけのワンオペ店だ、店主は市原氏で、元々千葉市内で同じカウンターフレンチを営んでいたが、2012年に現在地に移転して来た。
 店の場所は都営地下鉄千石駅を出て巣鴨方面へ向かい、左側の道を入って、小さな商店街の中にある、間口の小さな店なので気を付けないと通り過ぎそうだ(笑)。

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 扉を開けたら目の前がすぐカウンターだった、店主に予約の名前を告げて入口側の席に座らせてもらう。
 ランチメニューは3,000円(税、サービス料別)のおまかせ一種のみで、肉料理が豚か仔羊の選択、ここは店名に因んで豚を選ぶ事にした(笑)。
 以下当日の料理、

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・焼いたメレンゲの中には蟹のムース

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・自家製ベーコンとヤリイカ、食用花

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・自家製バゲット

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・千葉県産豚ロースのロースト

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・変わったデザート用カトラリー

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・自家製シフォンケーキ、飴の球体の中に苺とキウイ、牛乳のアイスパウダー

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・飴を割った中身

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・自家製キャラメルポップコーンと豚の頭を模したホワイトチョコレート

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・エスプレッソ

 事前情報では「ガッツリ系」の料理かなと勝手に想像していたが、アミューズ、前菜&デセールは創作的で繊細な料理だった、他店で見た記憶もあるが、焼きメレンゲのアミューズは丁寧な作り、続く自家製ベーコンの出来が秀逸且つ烏賊との相性も抜群で美味しい。メインの豚ローストは量も塩使いも男前(笑)で、結構食べ応えがあり、ガルニのガルバンソと野菜のトマト煮も良かった。
 面白かったのがデセールで、自店で焼いたシフォンケーキに、飴細工で球体を作りその中には苺とキウイを入れた物、更にはパコジェットで作ったミルクパウダーを添えると云うかなり凝ったもの。その後に出たキャラメルポップコーン、豚の頭のチョコも自家製、そしてバゲットまで粉から練って焼いているそうだから凄い。
 この料理人は人任せにするのが嫌いなのだろう、何でも自分がやらないと気が済まず、納得のいく仕事をするために席数を減らし、自分のスタイルを判ってくれる客だけに料理を提供したい、そう思う人なのだ。

 市原料理長の風貌はスキンヘッドでTシャツ姿、一見強面でちょっと怖い(失礼)が、調理の合間に話してみると結構気さくに喋ってくれる、料理には熱い人なのだなと云うのは、話していて判った。
 この日は私の他に男女カップルが1組、後で近くの六義園で桜を観てきたと云う中年女性3人組もやって来た、一斉スタートではないし、8席埋まると一人では大変だろうと思うが、この日見ている限り、あまり停滞もなく料理を出していた。
 ワンオペでやるには仕込み作業も大事だが、同時に料理の順番を考える応用力等、かなり知力を使う事になる、これは頭が良くないと出来ない(笑)。例えば将棋の達人が将棋盤を三台使って三人を相手にするみたいな感じだろうか、通常のやり方でワンオペ営業の料理人は、認知症になり難いのではないか?反対に客側に一斉スタートを強いる店の料理人は、早く呆けるかも知れない(笑)。

 奥に座ったカップルは何と、「夜も空いていますか?」と確認して同じ日のディナーを予約していた、その間は桜を観ているそうだ、地方から来た客ではなさそうだし、これは凄いと思った。まだまだ私の知らない名店や凄いフレンチフリークが居るみたいだ、人生は短いが食べ歩きの道は終わりがない(笑)。
 レストランに「痒い所に手が届く」みたいな、ベタなサービスを求める人には向かないが、作り手と対面で対決するみたいな、ライブ感溢れる料理に興味のある人や、これから一人で店を始めようと思っている人は、一度行ってみるのをお勧めしたい店だ、参考になる事は多いと思う。
 

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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