最後の晩餐にはまだ早い


本郷「鵜飼商店」の鰹本節

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 今から二十年以上も前の話になるが、実家から独立した時に誓った事がある、それは「どんなに忙しくても、味噌汁の出汁は鰹本節を削って使う」事だった。上野の刃物専門店で鰹節削りを大枚8千円出して購入、削る鰹の方は築地かアメ横で買って、さすがに毎日は無理だったが、折につけ削った鰹は一体何本になるだろう、書道家は書に取りかかる前に硯で墨を擦る時間を大切にするが、それと同じく鰹節を削る行為は、精神を落ち着けるために大事な「儀式」にもなった(笑)。

 WEB上で知った情報だが、長年勤めた職場の近くにプロの料理人が利用する鰹節問屋があると聞き、去年の暮れに初めて訪れてみた、店の名前は「鵜飼商店」(文京区本郷2-30-9)、店自体は戦前から続いていて、当初は秋葉原にあった神田青果市場の近くで営業していたそうだ。現在の店主は若い男性でまだ30歳前後にしか見えない、この男性と母親の二人で店を切り盛りしている、店主の話では昔からの馴染み客である銀座の高級料亭や、そこから独立した個人営業の店主も変わらず贔屓にしてくれているそうだ。

 この若い店主、とにかく話好きで鰹節の事になると松岡修造みたいに熱くなって止まらない(笑)、教えてもらった事は、一口に「鰹節」と言っても様々な種類がある、まずは材料の鰹だが網漁で獲ったものに比べ、一本釣りで釣り上げたものの方が身の傷みが少なく値段も高い、その後どれだけ手をかけて鰹節にするかだが、製造業者によって相当差が出てしまうそうだ、この店では鰹節の本場、鹿児島枕崎の業者の中から選別しているとの事で、それについては販売先の料理店の評価が大事で、製造元を指定して買って行く料理人が多いそうだ。更にはカビ付けした「本節」とカビを付けない「荒節」、本節にも1年物から3年物まであって、削り易さと味わい重視なら1年物、香り重視なら3年物、また吸物に向く背中側の雄節、煮物等に向く腹側の雌節、更には両方をブレンドして使うとか、単純そうに見えてこの世界は実に奥深い。

 「家庭用の鉋で削るのならこれがいい」との店主の助言により、枕崎産の一年物本節の背中側を買って使ってみたが、これが見事な香りと味で、それからはこの店で買った物だけを使いたいと思ってしまった。一本2,000円前後で決して安くはないが「本物」を使いたいのなら納得の品物だ、食べ物に限らないが良い物を使いたいのなら、それを扱っている良い店を見つけるのに限ると云う事をあらためて理解した。

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  2. 2013/04/05(金) 14:44:44 |
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  4. 投資初心者
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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