最後の晩餐にはまだ早い


神楽坂「オー・トレーズ・ジュイエ」(2015年5月)    

 この日の夜は、久しぶりになってしまった神楽坂のフランス料理「オー・トレーズ・ジュイエ」へ、1月のランチ、ディナーだと去年8月以来だ。
 今は一度店へ行くと、その店をローテーションに入れたとしても、次に伺うのは一年後位になってしまう事もある、それだけ財布の中身に反比例する様に、東京では店が増え続けている 。「今度行こう」と思っているうちに閉店していた事も珍しくなくなった(笑)、閉店した店舗の後には次のレストラン、この繰り返しを「閉店スパイラル」と呼ぶそうだが、潤うのは物件オーナーだけだ(笑)。

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 「オー・トレーズ・ジュイエ」は現在、佐藤料理長一人だけで店を運営している、過去に入った若い子達は皆辞めて行ってしまい、料理長自身も「雇っても戦力にならないなら、一人でやった方がいい」と開き直った?みたいだ、ただ店の構造が「アルドアック」や「モン・プチ・コションローズ」みたいに、ワンオペを想定した造りになっていないので、その点では難しさもある。
 
 初夏5月末のメニューは以下のとおり、

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・甘海老のタルタルと三つ葉、大根とレフォールのスープ

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・Camille Giroudの2010 Bourgogne Blanc

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・テクビイカのピペラードファルシー、ラディッシュのクーリ

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・焦がした小麦を使ったフォカッチャ

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・帆立貝とブルグ―ㇽ小麦、コーヒーゼリーとブーダンノワール

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・ソイのポワレ、つぶ貝とレンズ豆のミジョテ、焼きナスとケッパーの香り

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・フランス産鶉のオレンジとパンデピスファルシー、ヤングコーン、牛蒡、蕪

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・豚すね肉のカシス煮のカダイフ包み、グリーンピースのピュレ

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・セックス・オン・ザ・ビーチ~メロン、パイン、フランボワーズ~

 アミューズは大根を使った和的な料理、次のテクビイカは別名ヒイカ、ジンドウイカと呼ばれる小型のイカで、青森が名産地との事だ。イカの火入れは難しいが、この料理は堅過ぎず柔らか過ぎないジャストな旨さを引き出していた。
 帆立貝は小粒だが旨味あるもの、ブルグ―ㇽとコーヒー風味のブーダンノワールとの相性が面白い。魚料理のソイはカリっと焼かれた皮身をレンティーユのスープに合わせる、佐藤料理長が得意とする手法だ。
 肉料理は二種類出してくれたが、特に鶉が良かった、繊細な肉質の仏産カイユだが、その特質を際立たせる調理は見事(笑)。
 カクテルの名前に因んだデセールは、クリームチーズベースのムースに、フルーツのコンポートとパイナップルケーキを置き、フランボワーズのグラニテを添えたもの、フルーツを使用したデセールは難しいのだが、これは見た目、味共上手くまとめていると思った。

 佐藤料理長とは約3年の付き合いだが、料理の基本はあくまでもガストロ路線、値段を落としたからと云って、煮込んだだけとか焼いただけの肉は出したくない料理人だと見ている。
 例えば人形町「イレール」や銀座「ル・ボーズ」の料理人が、ガストロ出身ながら現在はビストロに路線変更し、営業的に成功しているのと対照的だ。これは自分の料理をどう考えるか、何を表現して誰にどう提供したいのか等、料理の本質に関わる難しい問題なので、簡単には結論付けるのは無理だが、あまり儲けていない事だけは推測できる(笑)。おそらく彼は「レストランとは、こうあるべき」みたいな理想を持っていて、それを崩してまで仕事をしたくないのだろう。
 食後、佐藤料理長とこの店を初めて訪れた頃からの話をしたが、僅か3年でも随分と昔みたいになってしまった、東京での3年間は日本全体の平均値で考えれば6年位にあたるかも知れない(笑)。

 帰りはメトロ神楽坂駅まで歩いて帰ったが、平日だった事もあリ、神楽坂の夜の人出は意外に少ない。消費税上げや円安に伴う諸物価値上げに対し、私を含めた一般庶民の節約志向は顕著だと感じている。この神楽坂でも客単価はランチ1~2千円、夜でも5千円以下がいい処ではないか?客が入っているのは、その価格帯の店だけみたいに見える、それに合わせて客単価を抑え回転で身入りを増やそうとする、ワインバーやバル的な店が増加している。これが良い事なのか、悪い事なのかは何とも言えない。
 今東京の飲食、特に設備投資が多額になる本格的フレンチやイタリアンで、テナントを借り、人を雇って且つ安定した黒字を続けるのは本当に難しくなっているが、これから本気で料理に取り組もうとしている、若い料理人達の意欲と才能を生かす場所が無くならない事を願っている、何とか業界全体を盛り上げたいものだ。


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Re: サイト掲載の件

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  2. 2015/06/06(土) 10:52:11 |
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  4. オンクレ・トシ
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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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