最後の晩餐にはまだ早い


外苑前「フロリレージュ」(2015年6月) 

 南青山から神宮前に移転して2回目のフロリレージュだが、まずは本題に入る前に、この記事を読んで欲しいと思う、外国人向けのWEBサイトみたいだが、川手料理長がインタビューを受けている(勿論日本語です(笑))。
http://www.japantwo.com/ja/food/restaurant/florilege/chef.php
 最後の「アンパンマンとは子供に人気がある日本のアニメキャラクターです。」の注釈は笑えるが、記事自体は優れたもので、日本人料理人が語る言葉でこれだけ感心したのは久しぶりだ、話を導き出した質問もいい。
 「食」に囲まれて育った多感な少年が、やがて成長し料理人として世界へ羽ばたいて行く、そして自分の理想とする料理とレストランについて熱く語りながらも、冷静な分析も忘れない、読んでからヴェルレーヌの有名な一節「選ばれてあることの恍惚と不安と二つ我にあり」を思い出した。WEB記事だけで終わりにするのは勿体ないので、聞き書きでいいから誰か本としてまとめて欲しいと思う、第二の「十皿の料理」が生まれそうな気がする(笑)。
 
 今回の訪問は知人の料理人二人と同行した、この店を体験して何かを感じて欲しいのは、まず彼等だと思ったからで、それを口実に私が行きたかったのも大きいが(笑)。あとで川手料理長と話したら、この夜集まった客の大半は料理人もしくは料理業界関係者だったらしい、私は希少な民間人?だった(笑)。
 まずは当日の料理を全品紹介したい、前回と同じく料理名ではなく、配られたメニューに沿ったメッセージと食材の表記から。

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・投影 ヤングコーン

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・連鎖 キャビア

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・ヘテロ 牡蠣

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・風景 帆立

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・はしり 鮎

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・分かち合う 塊肉(岩手石黒農場産ホロホロ鳥)

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・出逢い 鰹

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・本質 海老

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・原点 鳩(茨城産仔鳩)

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・薫り 花 チーズ

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・予感 マンゴー

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・再生 ミルク

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・こきあか 西瓜

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・緑茶 奈良産

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・佐藤錦のパート・ド・フリュイ

 インタビューのとおり食材は殆どが国産、キャビアも宮崎産との事で、旧店舗時代にはスペシャリテだったフォアグラもチョコレートデザートも無い、更には食後にコーヒーも提供しなくなった、誰かが国内で生産すれば採用されるかも知れないので、これから市場開拓するつもりならこの3つは狙い目かも、「フロリレージュ御用達」を名乗れるチャンスあり?(笑)。
 それぞれの料理は、旧店時代に作られていたものが原型になっていると思う、ただクオリティは向上しているし、何より皿上から余計なものが消えて本質がよく見える様になった。一例としてホロホロ鳥の料理を挙げるが、夜の客のために午後3時頃から焼き始めたと聞く低温長時間調理で、まず一羽そのままの姿を皆に見せ、その後「分かち合う」ために切り分ける、まずはこの火入れが絶妙、ガルニは新玉葱のロースト(中にウッフブイエを仕込んである)だけという潔さ、食べながら「ホロホロ鳥、こんなに美味しい鳥だったとは」と、目からウロコいや目からホロホロの思いだった(笑)。
 前店から最も変わったのはデセールだと思う、一品の完成度は前の方だが、今はもっと物語性がある、今回もマンゴー以下の3品を食べていると、何故か懐かしい気持ちに捉われた、子供時代に何よりも美味しかった駄菓子や、汗をかきながら食べた真夏の西瓜、あの味を思い出した、食べる人間の深層心理に訴えるのだ。過去レストランでこうした感情になったのは、バスクの名店「マルティン・ベラサテギ」での、魚のスープ以来だった。

 そしてこの店を最も特徴づけるのが、オープンキッチンで繰り広げられる料理人達の動きを観られる事で、2ヵ月前の移転後初訪問時より更に洗練されたと感じる。同行した料理人は「誰一人として無駄な動きをしていない」と、同業者らしく感心していたが、私はもっと感覚的に、バレエそれもストラヴィンスキー「春の祭典」の舞踏版を見るみたいな、知的な興奮を覚えた。通常、一回目で感心した店でも、二回目では何処かの瑕疵に気付くものだが、今回はそれを全く感じさせなかった。
 ただ酒飲みでない私があえて言わせてもらうと、この繊細な料理にワインは合わないのでは?と感じた事位、特に南欧や南米等の果実味濃いワインは難しいと思う、国産ワインか日本酒、いや水が一番相性いいかも知れない(笑)、料理人は勿論それを理解していて、ワイン以外のドリンクペアリングやノンアルコールドリンクのペアリングも用意している。

 この料理人と店は一体何処まで進化するつもりなのだろうと、正直怖くもなるが、通えるお金のあるうちは、また次の予約を取らないといけない、もしお金がなくなったらカードローン使ってでも行きたい(笑)、こう思わせる稀有な店だ。

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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