最後の晩餐にはまだ早い


六本木「ル・スプートニク」

 「彗星のように出現した」との言葉があるが、「人工衛星のように出現した」フランス料理店が登場した(笑)。店の名前は「ル・スプートニク」、ある程度の年代の人ならご存知だろうが、1957年に当時のソ連から打上げられた、世界初の人工衛星に因んだ店名だ、ロシア語本来の意味は「旅の同伴者」。
 オーナー兼料理長は高橋雄二郎氏、代官山「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」で6年間料理長を務め、7月20日に六本木に自店をオープンさせた。
 前店の料理についてはこのブログでも紹介したが、これからの東京フランス料理界を牽引する若手(1977年生)料理人と思っていただけに、自店開業をとても楽しみにしていた。レストラン開店直後はオペレーション等定まらない事もありがちで、今迄は少し時間が経ってから訪れる事が多かったが、この店に関しては待ちきれず、食仲間を誘って訪れる事にした(笑)。

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 店の場所は六本木7丁目、東京ミッドタウンから道を挟んで向かい側にある細い路地を、国立新美術館方面へ向かった辺り、新しいビルの1階部分になる。目立ちはしないが、フロリレージュの旧店舗程には判り難くはない、なかなか絶妙なロケーションだ。
 ドアを開けると迎えてくれたのは黒いスーツ姿の若い小柄な女性、テーブルに着くと名刺を貰い、この方が支配人の田村さんだと知った、日本橋「メルヴュイユ」、広尾「マノワ」等でセルヴーズ&ソムリエールとして働き、この店の開業に併せ支配人として就任したと聞く、つまり高橋料理長に「旅の同伴者」として選ばれた(笑)。

 あまり前置きが長くなってもいけないので、まずは当夜の料理全14品を紹介したい、これだけ見てブログから去っていただいても、勿論構いませんが(笑)。

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・シュセット、帆立と蕪の柑橘マリネ、蕪のヌーベ

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・エアバゲット(ミニバケットの生ハム巻き)

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・ピュアホワイトのグラス、サマートリュフ

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・枝豆のチュロス

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・パプリカのムース、オマール、マンゴーとパッションフルーツのエスプーマ

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・和歌山産鮎のコンフィ、ジャガイモのクルスティアン、パンプルネル、加賀太胡瓜
鮎のブルーテ

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・鮑、黒米、紫キャベツ、アスパラガス、コキヤージュのエミュリション

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・フォアグラ、メロン、クレソンアレノア

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・炭火鱧、花ズッキーニ、青柚子、そのエキス

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・静岡産大岩魚ロティ、ブールノワゼット、焼きなすピュレ、コリアンダー、トマト

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・茨城産小鳩炭火焼 、玉葱ロティ、ビーツ、軽いソースアバ

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・白桃 、ハイビスカス、ヨーグルト

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・ベルガモットオレンジショコラ(カライブ)、生茶のソルベ

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・レモンティーのシューアラクレーム

 料理全体の印象から云うと、「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」時代は、店名のとおり「遊び」の要素を随所に取り入れて、サプライズ的料理もあったが、今回はもう少し抑えた感覚で、安心して料理が楽しめると思った。体操競技なら離れ技や捻り技の回数を減らし、着地が乱れないように上手くまとめたと云う印象(笑)。
 これは支配人も話していたが、開店して未だ一ヶ月も経っておらず、スタッフも厨房器具も店内のオペレーションも不慣れな部分がある、そのため来た客を失望させないよう、安全策を採ったのがあるみたいだ、料理長はこれから「攻めたい」と思っているので、もう少し時間をかけて料理は変えて行くつもりとの事だった。個人的な感想としては、今のままでも十分良かったが(笑)。
 パプリカムース&オマールに果物を加えた前菜は味の積層や見た目がデセール的で、これぞ高橋料理と思った。鮎、鮑、鱧、岩魚と云った和の食材を多く使い、それでいて十分フランス的要素と香りを感じさせるのが、この料理人の非凡な点だろう。あえて言えば肉料理の皿が少し盛り込み過ぎで、もう少し整理した方がいいかも知れない。
 デセール3品に関しては文句の付け様がない、中でもショコラの一品は「これは、大人のエンゼルパイだ」と思った(笑)、生緑茶との組合せはとても面白い。デセールが2品以上の場合、季節の果物系⇒ショコラ系と続けるのは王道だが、平凡なものにしないのはさすがだと思う。

 店内はブラウンを基調色とした落ち着いた印象、テーブルクロスは省略している。20の客席数に対し厨房4人、サービスが3人の体制、店内を取り仕切るのが前述の田村支配人だ、若いながら客観察に優れ、それに合わせたオートクチュールな対応が光る。女性で且つ支配人の業務となると、大変な気苦労と体力を要すると思うが、21世紀は女性達の時代だ(笑)、後に続く業界関係者のためにも、長く続けて欲しいと思うし、そのスキルは充分あると見た。

 今年の東京フランス料理界は新店ラッシュだが、前半のハイライトが「フロリレージュ」の移転新店なら、後半はこの「ル・スプートニク」だと云って間違いない、それだけのポテンシャルと今後の発展性を、開業2週間目ながら既に感じる事が出来た。これから楽しみな店だが、この2店に並んで更に越えようとするには、相当の覚悟と優秀な人材集めが必要になると云っておきたい(笑)、「東京の今」を感じたいなら、まずは訪れてみる事です。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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