最後の晩餐にはまだ早い


札幌・西8丁目「クネル」(2015札幌食べ続け⑥)

 今年の札幌フレンチ3軒目は、西8丁目狸小路にあるビストロ「クネル‘Quenelle’」を訪問する事にした、2008年この地に開業し、私は2010年秋に訪れていて、それ以来だから5年ぶりになる、「光陰矢の如し」と云うが、私の年齢になると歳月は矢よりミサイル並のスピードに感じてしまう(笑)。
 オーナー料理人は屋木宏司氏、東京・三田の名店「コートドール」で14年間斉須料理長と働いた後に出身地の札幌で開業した、奥様も料理人出身で有名調理師学校の職員として勤務経験がある。
 前回訪問の印象では、コートドールの精神を受け継ぐ、正統的でシンプルな料理を、東京では考えられない低廉価格で提供していると思った事に加え、料理人夫妻の飾らない人柄、細やかな気遣いに心打たれた記憶がある。すぐに再訪するつもりだったが、札幌は行きたい店が多過ぎて後回しになっていた、それを反省して今年の訪問計画に入れた店だ。

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 店のある場所は、中国人観光客がドラッグストアで「瀑買い」に励む狸小路アーケードの入口(出口?)近く、わざと古びた感じのドアを入口にしてあり、北海道特有の雪除け室から店内の雰囲気は初訪問当時と変わっていない、レストランと云うより、私が通っていた小学校の古い木造教室を思い出す(笑)。

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 店奥の半円テーブルに座らせてもらう、同じ卓の奥には別のグループが居たが間を仕切ってあり特に気にならない。店を利用した人は「ああ、あの席ね」とすぐ判る筈。

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 「プロヴァンサル・キムラ」のマダムはマダムだが、此の店の奥様は奥様と呼びたくなる(笑)、久しぶりの訪問である事を告げると、覚えていてくれたみたいだ、おかげで緊張がほぐれていく(笑)。前回利用時は夫妻だけで営業していたが、今はサービス担当の女性が加わり3人体制、厨房に見える尾木料理長も全く変わっていなかった。

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 ムニュはなくカルトのみ、さあ何を選ぼうか悩む、前菜はすぐ決まったが、メインはコートドール直伝の「牛尾の赤ワイン煮込み」と最後まで悩みながら、結局以下の組合せにした。

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・カリフラワーのフランとカキのムニエル(税別1,600円)

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・自家製パン

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・十勝仔牛もも肉のストロガノフソース、バターライス添え(2,400円)

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・きたあかりとホワイトチョコレートのスフレ、ヴァニラアイスクリーム添え(650円)

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・コーヒー(400円)

 スペシャリテのクネル(900円:安い!)も食べてみたかったが、翌日ランチの店でクネルを食べるつもりでいたので断念した。
 カキ料理は道産牡蠣だと思うが、小ぶりながらしっかりした食感と旨味の詰まった身をムニエルにし、柔らかいフランをソースにして食べる、「カキフライとタルタルソース」の変形?これは旨くない訳がない、幾つでも食べられそうだ。
 ビーフストロガノフは三田「コートドール」のランチメニューで食べた記憶があり、それとの比較もしたかったのだが、よりビストロ的と云うか親しみやすい料理になっていた。悪い意味ではなく「まかない料理」的で、コートドールの厨房で、斉須氏、尾木氏、私の3人でこれを食べている光景が浮かんだ(笑)、フランスの厨房で食べる「まかない」は世の中で一番旨いと、斉須氏が名著「十皿の料理」で語っていたと思った。
 デセールは前回もスフレで今回もスフレ(笑)、作るのが面倒なのか東京のビストロではあまりカルトに載らないが、やはり出来たては格別、道産「きたあかり」を使ったのが珍しい。

 近い席だったので見えたのだが、厨房内に斉須政雄氏が料理している姿を撮った小さな写真が掲げてあった、独立して7年経っても、修業した店と師へのリスペクトを忘れない姿勢は素晴らしいと思う、その真摯さが料理にも表れている、そう思った。
 前記事で「成長や進化を感じられる店に通うのは面白い」と書いたが、この「クネル」にはそれとは違う「変わらない事の良さ」がある。
 店内は何時の間にか満席に、同じ卓や他席の会話が聴こえるが、「有名店に一度は来てみたかった」みたいな一見客ではなく、皆本当に料理を楽しんでいる、実直で芯があって「今日何を食べたか」が、後になっても思い出せる料理を作る店とは、理想的な関係に見える。私みたいな道外者がいい関係を荒らしてはいけないのかな?とも思ったりするが、でもまた来たい店だ(笑)。

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 卓上にはこの店を紹介したガイド本が置いてあり、「気軽にフレンチを自然体でいただく」と書かれていたが、店も客も作為の無い自然体そのもの、「味も人なり」だなとつくづく思う(笑)。
 奥様に見送られて退店するが、次来る時には「ただいま」と云いそうな気がする、札幌が誇るべき珠玉のビストロ、この地で健在でいて欲しいと願わずにいられない。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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