最後の晩餐にはまだ早い


新橋「スブリム」

 今年10月30日にオープンした新橋「スブリム‘Sublime’」は、若い感覚に溢れた新しいコンセプトのレストランだ。
 オーナーはサービスマン出身の山田栄一氏、過去「FEU」「エディション・コウジ・シモムラ」等、都内フランス料理の名店で経験を積み、今回満を持して自店を開業、新規オープンが続いた、今年の東京レストラン界の舞台上へ登場した。
 料理を担当するのは加藤順一氏で、名門調理師学校を卒業後、「タテル・ヨシノ」グループ〜PARIS「アストランス」〜デンマークのレストラン2店〜国内レストランを経て、今回新店の料理長に就任、1982年生まれと云う激若料理人だ。
 古典からモダンフレンチ、更にはモダンノルディック(北欧)まで、守備範囲の広い二人のコンビが、どんな料理を発信するのか、開店前から東京の一部グルメ達には話題になっていた店だ。
 私は山田氏とはFEU時代から面識があり、加藤料理長とも前店で会って話していて、オープニングレセプションにも参加し、新店へかける抱負を両人から聞いていたので、訪問を大変楽しみにしていた、開業後一ヶ月も経っていないが、この夜グルメ仲間を誘って早速訪問する事になった。

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 店の場所は新橋駅前から続く雑多な飲食店街を抜けて、通称「マッカーサー道路」と呼ばれる環状2号を渡って間もなく、店の向かいには塩釜神社がある、此処も「神社の近くには名フレンチあり」の法則狙い?(笑)。
 新しいビルの地下1階だが、ドライエリアに連なっているので閉塞感はない、ドアを開けると、北欧調のシンプルな空間が広がる。配管剥き出しの天井に木の床、クロスを省略したテーブル席は4卓だが、他に個室も備えている、オープンキッチンで厨房の様子は全て客席から見え、全体的にはカジュアルで堅苦しくない雰囲気だ。

 山田オーナーと加藤料理長に挨拶し、始まったディネ(10,000円税・サービス料別)全品をまず紹介、

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・モルト 馬肉

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・栗南瓜

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・菊芋 トリュフ

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・蟹 ブリッコリー ディル

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・発酵マッシュルーム 卵

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・厚岸産牡蠣 ハーブ

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・和歌山産サワラ 甲殻類のコンソメ

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・蝦夷鹿内腿 ソース・ポワヴラード

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・洋梨 キャラメル

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・ショコラ ヨーグルト ベリー

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・デンマーク風パンケーキ ローズヒップ

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・栗の糖蜜(右) ヴァニラアイスクリーム

 前菜は少量多皿仕立でモダンフレンチ+モダンノルディックの印象、ハーブや野菜を多用し、味わいはあくまでも軽め、味、見た目の色合い、食材の組合せは面白い。故辻静雄は料理を食べて料理人のおよその年齢を言い当てたと云われるが、辻でなくても「これは若い感覚の料理だ」と思う、液体窒素料理まで登場(笑)。
 中でも印象的だったのが、発酵マッシュルームと半熟玉子を使った一品で、加藤料理長が勤めていた前店でもスペシャリテだった料理だ、北欧は日本と比べると食材の種類が少なく、料理の構成要素も限られる、そこで生まれた知恵で、マッシュルールを一旦発酵させ、その発酵汁で新しいマッシュルームに味を加えると云う面白い技法だ。
 印象がガラリと変わったのが、魚料理の鰆と肉料理の鹿で、どちらもボリュームを持たせ、ソースもしっかりとした味付け、モダンからクラシックに急に舵を切ったみたいで、これは吉野建氏のエコールだなと感じた。
 デセールはまた北欧に戻ったみたい(笑)、少ない構成要素ながら、テクスチャの面白さと素材を生かした、なかなか印象に残る内容だった。

 料理一品一品の精度は高く、いい教育を受けてきた料理人なのは判った。少し気になったのは、前菜・主菜・デザートでそれぞれ色合いが違い、統一感が若干薄れた事で、例えて云えば、三楽章の交響曲を三つのオーケストラが一楽章ずつ演奏したみたいな感じも受けた。
 実はこの二日後に「フロリレージュ」を訪れたのだが、開店間もない店と比べるのはフェアでないのは承知の上で、各料理間の有機的な繋がり、ムニュ全体の中での起承転結の置き方等、やはりフロリレージュは流暢でこなれている。こうした点は経験を積んで改善していく事を期待したいし、十分それが出来るポテンシャルある料理人だと思う。
 サービス担当は山田氏一人だが、皿出し&片付けは料理人も行う、オープンキッチンの利点だ。それもあって、店全体は肩の凝らない柔らかさがあって寛げる。
 札幌でも大阪でも感じた事だが、店が「いい店」になるのには時間がかかる、一朝一夕では決して出来上がらない、それはオーナーも料理長も理解している筈だ。

 なお店名の‘Sublime’は仏語で「崇高な、高尚な」の意味で、デンマーク語でも同じだそうだ、店名に追い付く日もそう遠くないと思う(笑)。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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