最後の晩餐にはまだ早い


神楽坂「ビズ‘bisous’」

 意識した訳ではないが、「古屋オーガストロノーム」に続き、今年2店目のフレンチも新店訪問になった。今回は神楽坂にある「ビズ‘bisous’」で、場所は坂上交差点から近く、神楽坂通りから一本裏手に入った細い道に沿った「ROJI神楽坂」と云う新築ビル内に、2014年12月にオープンした店だ。
 此処を知ったのもネットからで、職場から便利な神楽坂では、好きな店だった「ル・デッサン」「オー・トレーズ・ジュイエ」が続いて閉店し残念な思いをしていたが、「続けて通えそうな将来性ある若い料理人が居る」の視点で探して見つけた店だ。
 WEB情報によるとオーナー料理人は、大阪の名門調理師学校~同フランス校~リヨン「ポール・ボキューズ」~ウィンザーホテル洞爺~乃木坂「FEU」~銀座「ミラヴィル」を経て独立とあるので、料理人として王道エリートを歩んで来たが、その割に独立店は、価格を抑えたカジュアル路線に感じたので興味を覚えた、この日職場の仲間を誘って初訪問をする事に。

     160202-1.jpg

 「ROJI神楽坂ビル」は「こんな処にあるの?」と驚く位に細い路地の途中、小さな公園に沿って建てられたガラス張り建築で中が丸見え状態、「ビズ」を含め4軒の飲食店が入居していて、階下の中国料理は知られた店だ、この2階にある。
 夜の開店時間直後に着いてしまったが、入口ドアを開けると笑顔と元気な声で迎えてくれたのが村田敏範料理長、後で知ったのだが1982年生れと云う若い料理人だ。時折アルバイトが手伝っているそうだが、この日は最後まで彼がワンオペ対応だった。
 ディナーは3,800円、4,950円(税別)の2種の他にアラカルトもあるが、初回はお手並み拝見と云う事で、4,950円の方をお願いした。
 店内はカウンター席も含め19席、クロスもナプキンも省略しカジュアルな印象だが、インテリアは工夫が感じられチープさは無い。
 まずは当日の料理全品を紹介したい、

        160202-2.jpg
・アミューズ(本日のお楽しみ盛り合わせ)あん肝、ブルーチーズのカナッペ他

        160202-3.jpg
・栃木足利の知的障害者支援施設が母体になった、ココ・ファーム・ワイナリーの「農民ドライ2014」、スッキリとした美味しさ

        160202-4.jpg
・フランス産ホロホロ鳥のデクリネゾン、ピーナッツソース

        160202-5.jpg
・自家製パン

     160202-6.jpg
・北海道産エゾ鹿のパピヨット仕立て

     160202-7.jpg
・茨城県常磐産ヒラメのヴェノワーズ仕立て

     160202-8.jpg
・スペイン産イベリコ豚肩ロースの低温ロースト

        160202-9.jpg
・静岡産緑茶とマシュマロアイス

     160202-10.jpg
・ガトーショコラ、三日月のクッキー、「眼」を付けたフルーツ(笑)

 まずこの料理を全て一人で、それもランチ営業をしながら作る料理人に敬服する(笑)、話を聞いたら毎日ではないが、築地市場にも自転車で通っているそうで、若いから無理出来るのだろうが、そうかと云ってテンション高くキリキリしている訳でもなく、この夜は後2組来店したが、滞りなく料理を出していた。そして料理が画像のとおり、ガルニまでキチンと細かい仕事をしていて雑でない、立派なレストラン料理だ。
 次いで感心したのはキュイッソン(火入れ)で、魚も肉もジャスト、アセゾネ(味付)も外していない、「FEU」時代には下村浩司料理長の下で働いていたそうだが、基本を学んで影響は受けたとしても、料理は独自路線を歩んでいると思った。

 最後のデセールを食べ終わって、「これは新しい才能を見つけた」と、思わず笑い出したくなった。料理を運んで来た時に話をしても、料理人は雇われの軛を離れ、自分の店で好きな料理を出す事に何よりの幸福を感じている様に見える。モヒカン刈り髭の風貌は少々強面、話す口調は「体操のお兄さん」みたいな元気系だが(笑)、料理に関しては幾らでも喋りたい事があるみたいで、熱いハートを感じた。
 そして支払いは内容を考えたら嘘みたいに安い、この料理がこの値段で出せるのなら、あの店(あえて書きません(笑))のあの値段は一体何?と、馬鹿馬鹿しくなって来た(笑)。
 ワインは国産の品揃えを充実させているが、最近フランス人の来店も多くなった(神楽坂は仏人率が高い)ので、フランス物も増やしているとの事、円安の現在、この料理が40ユーロ位で食べられるのならPARISより断然お得と思う、彼等はちゃんと判っている。
 食べ歩き人間としてはあまり教えたくない店だが、ブロガーとしては記事を書かざるを得ないと云う、アンビバレントな気持ちになった(笑)。前回フレンチの「古屋」もそうだが、今の東京は新しい若い才能が次々と現れ恐ろしい事になっている、長生き?して良かったと思うが、自分が料理人でない事を安堵する、若さと体力そして感性は、お金を積んでも得られない、それは失って初めて気付くものだ。
 レストランにベタなサービスや期待する人には向かないが、若い料理人の元気さとセンスある料理を体験出来る場所、通いたい店がまた増えてしまった。


スポンサーサイト

  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0


 管理者にだけ表示を許可する
 


プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

訪問者

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2017 06  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -