最後の晩餐にはまだ早い


和歌山「オテル・ド・ヨシノ」(2016関西食べ続け③)

 「コーイン」の翌日に向かうは和歌山「オテル・ド・ヨシノ」、これは曙と対戦した後に全盛期の小錦とぶつかるみたいな事で、関西滞在時間が少なく体力に自信のある人以外はお勧めしません(笑)。私は2000年にフランスで「アラン・シャペル」「ラムロワーズ」「ラ・コードドール(現「ベルナール・ロワゾー」)」を3日間で回ったが、結果それに匹敵するハードな行軍だった(笑)。

 今回は在阪の友人料理人が以前から「行ってみたい」と話していたので、この訪問をメインに計画したもの、定休日が同じなのでわざわざ店を閉めて来た。
 最近「オテル・ド・ヨシノ」の利用は夜が多く、食事後そのまま階下のホテルに宿泊していたが、今回は昼席、快晴に恵まれ大きな窓外には和歌山市内が一望出来る、個人的にはこの場所昼の方が好きだが、「カフェ・ステラマリス」でのランチ客のすぐ後ろがアプローチになるので、それだけが気になる処、日常空間から非日常空間へトリップするには、何か一工夫欲しい気もする。
 セルヴーズの案内で一番奥の丸テーブルに着席、手島料理長に挨拶して本日の‘Menu Spécial’が始まった。今回は食事後に料理長から料理について詳細な説明があったが、そのまま載せると長くなるため要約して記します。

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・グジェール

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・ジビエのコンソメ
料理長『多くの人にジビエを理解して味わっていただこうと思い、(以前より)丸く作っています。』

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・和歌山産足赤エビのジュレ アボカドのエスプーマ
『ずっと作っている足赤エビのジュレです。上の海老せん含めガストロノミーらしく、パーツが多く手間と時間のかかる料理ですが、完成度を上げていきたい。』

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・ベキャスのビスク トリュフ風味
『丸のベキャス2羽と2羽分の骨、その肝臓、心臓と下茹でしたニンニク、フォワグラ、アルマニャックを、ジビエのコンソメで柔らかくなるまで煮て、内臓、骨ごとミキサーにかけなめらかになるまで漉す、仕上げにごく少量の生クリーム、牛乳、バターでまろやかさを調整しています。』

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・ジャガイモと鴨コンフェ、ガチョウのフォワグラのテリーヌ
『田代シェフの「イワシとジャガイモのテリーヌ」、吉野シェフの「縮緬キャベツと黒トリュフのテリーヌ」お二人の偉大なスペシャリテに啓発されて作った料理です。今迄自分の料理と呼べる料理を殆ど作った事なかったですが、40歳を良い機会として少しずつ「創造」をしていこうかなと思っております。』

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・和歌山産平鱸のシャンパーニュ風

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・ジビエのトゥルト
『真中はスコットランド産野鳩、フォワグラ、和歌山産鹿ロースで、周りのファルスは鹿・猪・キジ・野鳩・兎・豚・フォワグラ・ジビエのアバ(内臓)です。フィユタージュは成田さん※の物を使いました。ずっと作り続けていずれ僕を代表する料理になってくれればと思う料理です。ソース、パート、ファルス、キュイソン、ジビエの扱い等、フランス料理の高度な技術の粋を集めた料理だと思っています。』
※銀座「エスキス」シェフ・パティシェ

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・日本では滅多に頼まないフロマージュまで注文してしまった、状態いい。

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・プレデセール(栗のプディング)

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・チョコレートのスフレ

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・ミニャルディーズ

 コンソメは料理長が語るとおり、前回より尖った部分を抑え柔らかくしていて、後の料理との繋がりが出て好ましく感じた。続く足赤エビ料理のアボガドはもっと少量でもよかったかも知れない、そして中盤のハイライトがビスク、通常は甲殻類で作るが、希少なベキャス(山鴫)を使用する贅沢バージョン、これは凄かった、皿からベキャスの生命感が立ち昇って来て、思わず「成仏して」と手を合わせたくなった(笑)、この一皿だけで遠路和歌山まで来る価値あると思う。
 続くテリーヌはこれからスペシャリテとして進化する料理だろう、魚料理は伝説の名店「ピラミッド」の「ティルボ・シャンパーニュ」が原型、魚をまるで肉の様に扱い重厚な食後感を残す、これぞフランス料理と云う印象。
 そして真打が「ジビエのトゥルト」、私は6年前にこの場所で「ピティピエ」の形にした別バージョンを体験しているが、完成度に進化が感じられる、味の密度と重量感が増しデザインも良くなった。中にこれだけ要素を詰め込むと、味の方向性が散漫になる事もあるが、さすがはスペシャリテとして作り続けて来ただけあって、ソース、パート、ファルスの味積層が見事。A+B+C=の計算結果をDにして、より次元の高い領域の味にするのはフランス料理伝統の手法、各パーツのクオリティも文句なし、これぞ足し算の美学だ。
 現在のパティシェールが作るデセールは、味の決め方が私好み、「関西圏の中では」と書くと誰かに怒られるかも知れないが(笑)、量も甘さも見かけも現代的に洗練されている。

 去年まで居たベテランメートルが抜けたので心配していたが、メートレスを筆頭に若いサービススタッフの対応はとても良かった、関西の飲食は東京以上に女性の活躍が目立つが、この店も剛腕料理人の重量級料理と彼女達の細やかなサービスが不思議なバランスを保っていて、素敵な時間が過ごせた。
 今回は料理長が「伝家の宝刀」ばかり並べた印象あるが、やはり美味しいものは美味しい、宝刀も磨かなければ錆びるし、誰かに見せないと価値がなくなる(笑)。
 まるで自分がロイヤルファミリーの一員になったみたいな、優雅な午後でした(笑)、手島料理長そしてスタッフの皆さんに感謝です。

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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