最後の晩餐にはまだ早い


外苑前「フロリレージュ」(2016年3月)  

 今年初の訪問になる外苑前の「フロリレージュ」、前回利用が昨年11月だったので、その後店はミシュラン東京2016版で一ツ星を獲得(旧店では一時付いていたので復活)、更には"ASIA'S 50 Best Restaurants"で「注目のレストラン賞」を授賞した。これがどの位価値がある事なのかはよく判らないが、スタッフのモチベーションを高めた意味では十分意義があったと思う、一ファンとしては素直に喜んでいいのだろう、あらためておめでとうございます(笑)。
 一応フランス料理店訪問歴30年を超えると、今上り坂にあるレストランは、そうでない店に較べて、「この店、何かが違う」と感じる事が出来る、この夜がまさにそんな印象を受けた、席に着くと前回とは店の空気が微妙に違うと思った、ゲストとキャストが繰り広げる、心地よい緊張感が伝わって来る。

 レセプションで他のメンバー達と集合し、カウンター席のメインダイニングに案内される、川手料理長が挨拶に来たが、揃ったメンバーを見て「うわ、濃いな」と笑って一言、その言葉どおりこの夜はかなり濃いメンバーで、お祝いディネには最適だった(笑)。
 キッチン内にはサービス担当が整えた、「海」をイメージした飾り付けが客の目を惹く、各自に今日の料理が記された小さな紙が配られ川手劇場が始まった、まずは当夜の料理全品を紹介したい。 

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投影 蕗の薹

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懐かしみ 鰯

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芽吹き ホワイトアスパラ

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コンフィ すっぽん

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コントラスト フォアグラ

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本質 海老

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和の風味 甘鯛

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分かち合う 塊肉(経産牛のロースト)

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ヘテロ感 パッションフルーツ

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お似合い 落花生

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春の訪れ よもぎ

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苺のパートフリュイ
コーヒー(新登場)

 料理全体は「春」を感じさせるもの、まずは鰯とドライトマトの一皿で客のハートを一掴みし、白アスパラは活力と再生を感じさせる、次のすっぽんはこの日一番印象に残った料理だが、玉子豆腐状のフランの上にすっぽんのかき揚、そこへすっぽんのコンソメが加わる、まるで和食の椀物みたいな構成だが、日本人女性陶芸家の円錐型磁器に盛られると、やはりこれはフロリレージュの料理だと納得してしまう(笑)。
 禁輸前に入手したと聞く仏産フォアグラ&トリュフに続くのは、高級和食でも使えない位の見事な海老、次の甘鯛は添えられた和風な出汁との相性が抜群。
 そして「私たちひとりひとりの食べ方、飲み方で地球は変わる!」と題された、食品廃棄物を減らそうと云うメッセージの紙が配られた後に、「分かち合う塊肉」として提供されたのが宮崎経産牛のロースト。経産牛とは文字通り出産を経験した雌牛の事で、通常食肉にされる未経産牛よりランク下にされ加工品等に回されていたが、最近食材として注目されている肉牛。以前この店でカルパッチョを食べた事あるが、ローストは初体験、その味は俗な言い方をすれば「熟女の味」だ(笑)。脂肪部分に独特の風味があって、最初「過去食べた牛肉と違う」と脳内が混乱するが、食べ進むうちに「これは美味しい牛肉だ」と納得する、処女牛と較べると少し雑味はあるが、噛み続けるとそれが複雑さになって飽きさせない、これが若い雌牛にはない経産牛の魅力だろう、熟女に嵌ると抜け出せなくなるかも知れない?(笑)。
 デセール3品はシンプルな作りながら、レストランならではのアシェットデセールで楽しめた、各素材の質も高い。
 
 料理人でない私からすれば僭越な言い方だが、料理&デセール各皿の構成はそう複雑ではない、食材のアイテム数も決して多くない筈、それでいて各食材に絶妙な伴奏(調理)で寄り添い、実力以上のアリアを歌わせるのが川手料理の特徴、名指揮者の指揮棒により11皿の料理達が演じる見事なオペラ作品が完成する。
 今回の訪問は、まさにジャストタイムだったなと云う印象、店が上り坂を駆け上がろうとする時に同乗出来たのは幸運で、過去でもこうした経験はそう何回もあるものではない。支払いはそれなりにするが、充足感を考えれば決して高いとは思わない、前にも書いた事だが、此処は少年の心と大人の財布を持った人にこそ来て欲しい店だ。
 「料理が美味しい」「料理が変わっている」だけの店なら他にもあるかも知れない、ただこの店みたいに、ゲストもスタッフも一緒に輝ける場所はそう無い、客は傍観者ではいられず、一緒に楽しんで一期一会のアトモスフィアを作らないといけない、そのセンスが問われる(笑)。

 最後は川手料理長と濃いメンバー揃って記念撮影。ここ数年の東京では「忘れ難いレストラン体験」の筆頭になりそうな濃いディネでした(笑)、この夜この店に集った全ての人に感謝。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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