最後の晩餐にはまだ早い


稲荷町「キエチュード」(2016年5月)

 この日、台東区に住む身内と会う事になり、上野近辺でランチ場所を捜したが、どうも適当な店がない、上野は前記事のとんかつ店みたいに長居が不向きな処が多いからで、浅草まで行けば色々あるが、利用するのが三社祭の始まる日にあたり、人混みに巻き込まれるのはご免だなと考えていたら、上野から少し歩くが稲荷町のフランス料理「キエチュード」を思い出した。電話をしてみたら予約可との事で、去年8月以来久しぶりの利用になった、3月までは私も同じ水曜休みだったので、ランチ利用は初めてになる。

 店の眼の前にある下谷神社の例大祭も先週終わり、この日の天気も快晴で暑かった、どうやら東京下町に早い夏がやって来た(笑)。
 12時丁度に入店したら既に店内は7割の入り、この後も客が現れて満席になる、13時過ぎには予約なしの2回転目客の席も出来た、噂どおり繁盛している。
 「キエチュード」の開業は昨年5月17日なので今月1周年を迎えた、私は7月に初訪問し、その時に「この店はきっと流行る」と確信したが、果たしてそのとおりになった(笑)。やはり他店と似た様な地域と料理内容、例えば中目黒や恵比寿あたりで、夜5,000円ムニュ一本で勝負しても、客が来ないと云う事はなくても大勝ちは望めない、それだけあの界隈は過当競争状態だ。食糧のある地を求めてアフリカから南米まで大移動した人類の祖先と同じで、客の潜在需要のある地域を探す事が、これから独立を考えている人には必要だと思う。

        160520-1.jpg

 荒木料理長とサービス担当の清水氏に挨拶して店奥に着席、ランチメニューは税別1,500円と3,000円の2種類で、予約の段階で後者をお願いしていた。

     160520-2.jpg
・ウリ坊(仔猪)のパテ・ド・カンパーニュ

        160520-3.jpg
・100%甲州種の「蕾」

        160520-4.jpg
・ズワイ蟹 春野菜 リーフサラダ

     160520-5.jpg
・石鯛 ホタルイカ オリーブ

     160520-6.jpg
・仔牛 パルメザン レモン

        160520-7.jpg
・ナッツのクレームブリュレ ラズベリー(特別プレート)

        160520-8.jpg
・コーヒー

 ランチでも初回に訪れた印象とそう変わらない、全体的にライトで爽やかさがあり、大きな窓から光が差し込むこの店の雰囲気に合った料理だ。
 パテは少量だが仔猪の滋味が感じられた、続くガルグイユ風野菜はこの店のスペシャリテ、初夏の野菜は活力があって美味だ。石鯛は繊細な肉質を生かした火入れで、タプナードソースとの相性が生きている。
 仔牛料理は「ミラネーゼ(ミラノ風カツレツ)です」と説明があったが、私は一口食べて「これ、ハムカツだ」と思った(笑)、ハムカツは子供時代の大好物、でも食べているとハムと仔牛は勿論違うし、レモンソースによって十分ガストロ料理になっている。
 デセールは頼んだ訳でもないのに、私の退職を慰労して?の特別バージョンで出してくれた、これは感激してしまう。なお荒木氏は一部で話題の「アシェットデセール2皿4,000円」氏から前店で直接指導を受けていて、そのデセールが3,000円で前菜・魚・肉の後で食べられるのだから、これはお得だ(笑)。
 ランチだった事もあると思うが、前回より全体的にスパイス等の使用は控え目に感じた、この辺りは地域の常連客に合わせて来たのかも知れない。

 荒木料理長は先月第一子が誕生し父親になった、これは料理にも影響していると思う、過去にも料理人が子供を持った事で料理が変わった例を見てきたが、大体において尖った部分が抑えられ大らかになる印象がある。言い方を変えれば「料理が大人になる」(笑)、この日の料理もそんな印象を少し受けた。
 逆に何時までも尖った料理人で居たかったら結婚も子供も必要ない?次回のブログ記事にする予定の、6月公開の映画「二ツ星の料理人」の主人公がそのタイプだ(笑)。

        160520-9.jpg

 近所の人だろうか、かなり高齢の女性が介助する女性と二人で来店しカウンター席に座る、馴染み客みたいで嬉しそうに料理を食べている、私もあれ位まで元気で食べ続けていたいものだが、これまでの不摂生が祟りきっと無理だろうな(笑)。でも今から20年前に、上野駅近くでこんな光景が見られる時代が来るとは夢にも思わなかった、東京は住む人間の予想以上に日々変わって来ている。
 この日初訪問の同行者も云っていたが、此処は女性が来たくなる店だとの事、まず店内が明るくトイレも含め綺麗で清潔、料理は彩りが良く変に重くないが、全部食べると量も丁度いい、そして何よりも料理長以下の男性スタッフの表情が明るく、嫌味がないフレンドリーさで居心地がいいとの意見だ、女性の冷静な視点は怖いが、後半は特にオープンキッチン店では必須な筈なのに、出来ていない店は多い(笑)。
 これから地域に根付き、長く続く店を開業したいと考えている料理人は、参考にするため一度この店へ食事に来たらいいと思う(笑)。
 荒木料理長とサービス担当の清水さん、素敵な午後の時間になりました、お心遣いに感謝です。

スポンサーサイト

  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0


 管理者にだけ表示を許可する
 


プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

訪問者

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2017 07  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -