最後の晩餐にはまだ早い


八丁堀「シック・プッテートル」(2016年6月)

 「この前行ったのは、何時だっけ?」と、自分のブログを調べるのも失礼になる位に、前回訪問から月日が経ってしまった、八丁堀の「シック・プッテートル」。去年10月末に某百貨店のフェアでイートインに出店していた時、「近々、店へ行きますから」と、星オーナーと生井料理長に約束?してからも半年以上過ぎている(笑)。
 決してレストランに不満があった訳ではなく、超人気店になって満席が続き、なかなか利用できないとの噂を聞き、私みたいに開店半年後から訪れていた人間は、もう他の客に譲った方がいいのかな?とも思い、特に4月以降は一人平日ランチ行が増えたので、一人での予約利用は店側の1席損失になり、遠慮する気持ちもあった。
 でもこれは某元知事みたいな「下手な言い訳」にしか聞こえない(笑)、星オーナー、生井料理長、サービスの北野さん、まずはご無沙汰をお詫びします。
 この日も、直前に「今週、来週でランチに空いている日、何時でもいいですから」と潜り込ませてもらった予約、駅からの道順も忘れて、一本違う道を歩き近所にフランス料理店が何時の間にか出来ていたのを知った(笑)。
 盛夏みたいな暑さの中、入店は12時半で既に他は満席、現在は通常4卓しか作っていないみたいで、MAXでも14名、それに対するスタッフは店内が2人で厨房が3人の計5人なので、客に対してかなり手厚い体制と云える。
 星オーナーに挨拶して着席、窓際の明るい昼光はブロガーには嬉しい(笑)、そして久しぶりの生井ワールドが始まる、

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・バスク産サラミ「ジェズ」、ラングドック産オリーブ漬(以前からの定番)

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・ジャガイモとキャビア、サワークリーム(食べられるのは天辺の一つだけ(笑))

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・フォアグラのムース、新玉葱のチップ

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・地ハマグリと豆、マイクロクレソンのスープ仕立て

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・緑アスパラとトリ貝、カモミールの花のサラダ、チーズ風味のメレンゲ

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・長崎五島産、海中放血神経〆して2週間寝かせたスジアラのポワレ、オゼイユソース

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・煮込んでポワレした仏ペリゴール産仔牛、軽くサバイヨン仕立てにしたモルネソース

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・キャラメルのムース、アメリカンチェリー、ゴルゴンゾーラのメレンゲ、黒牛蒡

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・「ウォーリーをさがせ」みたいに、この中から探すギモーブとマカロン(笑)

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・カップとマシンが替わったからか、以前より美味しくなった気がするエスプレッソ

 和テイストも感じたスープ仕立ての蛤に続くアスパラとトリ貝は、繊細でいながら野性と大胆さも感じさせる生井料理長の真骨頂、貝を扱わせたら東京でもトップクラスの料理人だと思う。
 続く魚料理のスジアラはこの日最も感心した皿で、ハタ科の大型魚を「海中放血神経〆」と云う特殊な活け締めをした後に出荷、寝かせた後に調理する、大型魚は味が散漫になり易い傾向があるが、この料理は全くそれを感じさせず、繊細な肉質とそれを生かす的確な火入れが見事だった。
 仔牛料理は煮込んだ骨付バラ肉を一旦冷ました後にソテー、仔牛独特の風味が生きていた。キャラメル風味のデセールは料理長の得意技だ(笑)。

 久しぶりに生井料理長の料理を味わい感じた事は、他の料理人にない独自性と感覚。伝統的なフランス料理は油絵技法に似ている、まずは下地をしっかり作って、その上に油絵具を何層にも塗り重ねていく、一方生井料理は皿の上で魚貝や肉、野菜やハーブと云った幾つかの要素が一気に集合する、まるで水彩やアクリル絵具で短時間に描き上げた絵画みたいに。これは「炊き合せ」の様な和食の方法論と似ている、和食の経験値が少ない外国人には、とても新鮮に感じる料理ではないかと思った。
 こうした即興性を感じるのは、生井氏が元音楽志望だった事と関係ありそうな気がする。私が過去体験した中では、P・ガニェールとその門下生達の料理と共通性がある。
 この店を初訪問した当時、一人だった厨房内は現在三人体制、料理は細部まで手をかけられる様になり、以前より精巧になった、ただ絵画と同じくディテールに拘り過ぎると、全体の流れが停滞する事もありがちだが、現在の処その心配はないと思った。

 サービスを担当する星オーナーと北野さんの動きと客対応も、時間を重ねて洗練さが増した、他卓を見ると殆どの客が食べているのは2,800円のショートコースみたいだが、居心地の良さも含めて、十分満足している様子が伝わって来た。
 開店後4年を迎える店、今ではレストランの総合力に容れ物が足りなくなった気もする、ブカブカで緩い制服を着た中学一年生が、三年間に成長し制服が小さくなってしまったみたいな印象を受けた(笑)。
 星氏の話では、同業者(料理人等)の来客が増えているとの事だが、その理由も納得出来る、飲食店供給過剰の東京でも、途切れる事なく客を呼び続ける店は、やはり何かを持っている、同業として学ぶ事はある筈だ。

 美味しくて楽しい午後になりました、お心遣いありがとうございました、次はこんなに間を開けないで来たいと思います(笑)。

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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