最後の晩餐にはまだ早い


麻布十番「グリグリ」(2016年7月) 

 八丁堀「シック・プッテートル」、神楽坂「ビズ」に続いて「また来ると云っておきながら、訪れていない店へ行く」シリーズ(笑)、今回は麻布十番のフランス料理「グリグリ」でした、此処も最終訪問から1年以上経っていた。東京は店の数が多過ぎで、頻繁に回るには、体力・資力・時間が必要、他の二つは無いが時間だけはあるので、主に昼間だがこれから少しずつ再訪、再々訪をしたいなと思っている。
 現在「グリグリ」は金・土・日の週3日だけランチタイム営業をしているが、麻布十番の人混みが少なそうな金曜日を選んで席をお願いした。
 盛夏を思わせる暑さの中、麻布十番商店街を上って店の入っているビルに到着するが、前回訪問時にあった地下と1階の店舗が空き家になっていた、このビルは「グリグリ」と同じ2012年開業の筈で、都内では飲食に限らず、現れては消えるテナントが何と多い事か(笑)。

 2階のドアを開けるとマダムが迎えてくれる、店内は少しレイアウトが変わっていた、今回は初めてカウンター席へ座らせてもらう、このカウンターはラーメン店等にある二重構造で、厨房とカウンター間に人が一人通れる隙間がある。
 伊藤料理長にカウンター越しに挨拶して始まった夏のデジュネ、料理は以下のとおり、

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・青トマト、トマトウォーター

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・薫製した鶉卵とミガス(ポルトガルの郷土料理)をイメージした粉末

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・帆立のチップ、コーヒー風味

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・長崎産白烏賊のタルタル、シトロンヴィネガーとレモンのジュのエスプーマ、ヘーゼルナッツのカップに入れて、上は烏賊墨を固めた物。

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・自家製カンパーニュ系パン、後ろ左の水牛乳バターが珍味

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・ホロホロ鳥とフォアグラの冷製、ヴァンジョーヌのソース、カルダモン風味

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・サンピエール(的鯛)とキュウリ、バターソース

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・神奈川産デュロック種豚のロースト、サーディンとズッキーニ

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・ブルーベリー、スミレ、ホワイトチョコレートとパンデピス

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・エスプレッソドゥーヴルと自家製チョコレート

 まずはトマトの鮮烈な酸味で目が覚める(笑)、次の燻製鶉卵はグラスの七味唐辛子状の粉末の中に入れて食べる、これは「ミガス」と云うポルトガルのパンスープをイメージしたものだそうだ。
 白烏賊のタルタルは、シトロンの香りにヘーゼルナッツのビスキュイ生地の風味を加え、不思議で絶妙な味のバランス。次の的鯛はこの日一番感心した皿で、おそらくコンベクションでの調理だと思うが、身がしっとりとして繊細、過去日仏で食べたサンピエール中でも最上質な料理だと思った。
 牛肉とサーディンを合わせる料理は他店でも経験したが、今一つ必然性が判らないでいた、この日は牛より淡白な豚肉だったので、ようやくその意味を理解した、これは古代ローマの食卓で使われていた魚醤「ガルム」みたいに、外から味を付加する調味料なのだ、ただ醤油味を知っている日本人には少し難しい料理かも知れない、豚肉の火入れは抜群。
 ブルーベリーと菫のデセールは初めてだが、この店の夏のスペシャリテなので安定して美味しい、自家製ショコラもいい。

 久しぶりに伊藤料理長の料理を体験して感じたのは、ランチだった事もあるが、以前より構成要素が減って料理がシンプルになり、酸味を強調する様になったと思う。湿気の多い日本の夏にフランス料理を作る場合、特に前菜系は「昆布出汁ジュレ」みたいな物を使って和へ逃げるか、こうした酸味を使って脂分をマスクするか、どちらかへ行く事になる、もう「フランスそのまま」では受けない(笑)。
 そしてこの日の料理に、六本木「ル・スプートニク」の高橋料理長と共通するものを感じた、1976年生れの伊藤氏に対し高橋氏は1977年、どちらも天才肌と云うより職人気質を感じる料理人で、共に2000年代にフランスで働いている。料理の構築の仕方や、夫婦二人で営む「グリグリ」と、スタッフ数人でチームを組む「スプートニク」では店形態も違うが、料理に「和」を殆ど取り入れない点や、見かけはモダンでも根底にフランス、それも古典を感じさせる点に於いて似た部分がある。
 私みたいに1995~2005年頃の、一時代を築いた巨匠達がまだ健在だったフランスのフランス料理に憧れる人間には、両人の料理に大いに共感するものがある(笑)。

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 明るくフェミニンな印象のある店内、でもバブル景気の頃あった、イケメンのサービスを揃えた「蝶よ花よ」的マダムランチ専門店とは違う(笑)、隠れ家的で落ち着くし、何より伊藤夫妻と話していると、私も毎年の様にフランス食べ歩きをしていた時代に戻れる、そう思わせるのはこの店が提供する料理が、決してまがい物ではなく本物だからだと思う。
 お気遣いありがとうございました、夜利用は素敵なカップルに譲り、私はまた平日昼にそっとお邪魔します(笑)。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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