最後の晩餐にはまだ早い


赤坂「古屋オーガストロノム」(2016年9月)

 東京は9月に入って急に涼しく過ごしやすくなった、涼しくなると同時に「ヨコメシ熱」が沸いてくるものだ(笑)、現在は平日昼に動けるので、お得なランチメニュー狙いで、いつもの活動エリアより外に出てみようかなと考える。
 この日選んだ店は、今年の新規訪問店では料理が最も印象に残った、赤坂「古屋オーガストロノーム」、今年1月に初訪問してこれが3回目、浮気性の私にしてはかなりの訪問頻度になる、「フロリレージュ」でさえ今年まだ2回の利用だ(笑)。
 
 千代田線赤坂駅から一ツ木通りへ出て、大阪風串カツ店がある四つ角を左に曲がると店はもう近い、昼時なのでサラリーマン&OLが界隈を闊歩しているが、「ランチ500円」を掲げた店もあり、バブル景気時代の商社員とTVマンに国会関係者が入り乱れていた、派手な時代の赤坂を知っている古い人間は、驚愕するしかない(笑)。
 店に近付くと、ドアを開けてくれたのは石橋支配人、古屋料理長も客席で待っていてくれた、4月以来なのでもう5ヶ月経っている、私の歳になると月日は矢どころかミサイルみたいな早さで飛んで行く(笑)。
 手前の4人掛けテーブルに座らせてもらったが、まずはこの日の料理から紹介したい。

     160921-1.jpg
・アミューズ・ブーシュ(島根県産かぼちゃの冷製ポタージュ・キャラメルマキアート風、フランス産根セロリのスパゲティ風サラダ・イタリア産サマートリュフ添え)

        160921-2.jpg
・ハンガリー産フォアグラと長崎県産アナゴの燻製、オニオンとリンゴのミルフィーユ風、オレンジとベトラーブのクーリ添え

     160921-3.jpg
・自家製パン3種とサンドゥー

        160921-4.jpg
・淡路産スズキのポワレ、縮緬キャベツ、5種のスパイスを使ったカレー風味のクリームソース

        160921-5.jpg
・ハウスワイン的存在のラングドック=ルシヨンの赤

     160921-6.jpg
・ニュージーランド産仔羊のロティ、季節野菜とムースリーヌ・ド・ポム・ド・テール、
ローズマリーソース

     160921-7.jpg
・同かぶり肉を使ったクスクス

        160921-8.jpg
・岡山県産白桃のバジルコンポート、ジュレ、ヒューガルデンホワイトビールのソルベ

        160921-9.jpg
・チョコレートブラウニー、ピスタチオのグラス、ピスタチオオイル

     160921-10.jpg
・エスプレッソ

 他店を回った後に古屋料理を体験すると何故かホッとする(笑)、「自分が食べたかった料理はこれだ」と納得してしまう。例えばフォアグラとアナゴの料理だが、味のベースになるのは焦がさない様根気よく炒めた玉ねぎ、この甘味が全体の味を立体的にしている、今こんな面倒なやり方をする料理人は少なくなった。
 スズキは昨今流行の低温調理ではなく、厚い切り身をしっかりと火を入れる事によって、コクと香りあるソースに負けない味になっている。
 量のある羊を食べた後トイレに立ったら、何と肉2皿目のクスクスが来た(笑)、「もう食べられないかな?」と思ったが、ビストロ料理とは違う繊細に作ったクスクスで、殆ど完食する事が出来た。
 デセールがいいのは、パティスリー勤務経験のある料理人ならでは。凄いのはこれ全品パンも含めて一人で作っている事で、料理全てに込められた手間は相当なものだ、それを週一日の休み以外は昼夜営業しているので、呆れる程に職人気質ある料理人だと思う(笑)。

 古屋賢介料理長は1973年東京生まれ、学校卒業後大手スーパーに就職したが、たまたま食品売場に配属された事から料理に興味を持つ、その後某店で食べたフランス料理に感動し、自分はこの道へ進むしかないと決心、勤めを辞め調理師学校へ入学する、その時はお金がなかったので、一番授業料の安い学校を選んだそうだ(笑)。卒業後は本場で働きたいとの想いが募り単身渡欧、以降5年間フランス、ベルギーで働く事に。一度日本へ帰り、都内のフレンチ料理長に就くが、ベルギー「オーガストロノーム」の総料理長から懇願され、再度渡欧し同店の実質的な料理長に就任する。
 活躍した場がパリやブリュッセルみたいな大都会ではないので、日本では注目されていなかったが、総合的な実力は最近出会った料理人中では頭一つ抜けているなと思った。 
 彼と話していて感じるのは、まず「面構え」がいい事(笑)、顎が発達してエラが張り、顔の縦軸と横幅が変わらない、この手の顔は例えばジョエル・ロブション、それから和歌山「オテル・ド・ヨシノ」手島、あとは「グリグリ」伊藤、もう少し優男だが「キエチュード」荒木各料理長が同じタイプ、遭難して食糧が無くなっても、自分の腕を齧ってでも生き延びそうな肉食系、大料理人になれる(可能性のある)顔だと思った(笑)。
 そして欧州生活が長かったからか、日本では他の誰かと群れず、誰かの傘の下に入らず、独自な道を歩んでいる様に見える、それでいて日本のフランス料理界に対しては、結構冷静に観察していると思った、願わくはこのままの姿勢で居て欲しいものだ。

 前任のベテラン支配人の跡を継いだ石橋氏も、何処か飄々としていて、若いながら、なかなかいい味を出している(笑)、これから優秀なサービスマンになりそうだ。
 「今、東京フレンチなら何処がお勧め?」と訊かれたら、昔から伝わる手間を惜しまない古典系料理が好きな人には、まず教えたい一軒。
 表現の世界に於いて、「優れた古典は前衛である」なのかも知れない(笑)。

スポンサーサイト

  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0


 管理者にだけ表示を許可する
 


プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

訪問者

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2017 07  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -