最後の晩餐にはまだ早い


六本木「ル・スプートニク」(2016年9月)

 昨年7月に新規開店し、8~9月に3回連続で利用した六本木の「ル・スプートニク」、最後に訪れてからもう1年経っていた、決して不満があった訳ではなく、反対に「また行きたい」と思いながらも、店が星付き赤丸人気急上昇になった事や、東京で行ってみたいと思う店が続いてオープンしたのもあり、つい行きそびれていた。
 今回同行を誘ってもらえたので、1年ぶりの訪問を果たす事が出来た、電話予約の際、応対に出た田村支配人に「なかなか行けなくてすいませんでした」と、先に謝ってしまった(笑)。

 夜の六本木を歩くのも1年ぶり、この日は千代田線の乃木坂駅から歩いて行ったのだが、新しいビルがオープンしているし、飲食店も入れ替わっている、高級店が減って低価格帯店が増えているのは赤坂と同じ(笑)、昼千円、夜2~3千円単価の客を数店で奪い合いしている様に見える。
 店前の植木も1年経つと大きくなったと感じた「ル・スプートニク」、ドアを開けて入店すると、迎えてくれたのは田村支配人、彼女の案内で今回初利用の個室に着席する。
 ブラン・ド・ブランのシャンパーニュで乾杯後、提供された料理は以下のとおりで、これが「圧巻の15品」だった、画像を見直しても「よくこれだけ出して、これだけ食べたな」と感心する(笑)。

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・枝豆のチュロス

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・熟成コチを燻製にして生ハムのイメージで、グループフルーツ、モッツァレッラ

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・ピュアホワイトのブランマンジェ

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・長崎産岩牡蠣とキュウリのジュレ、液体窒素で作ったキュウリソルベ

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・卵の肝のソースを挟んだ鮎フリット、牛蒡のチップ、別添で牛蒡バルサミコのソース

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・鰯の瞬間燻製、イチジク、ナス、セミドライトマト、ジャガイモのソース

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・フォアグラのポワレ、エスプレッソ風味のシートとスパイスのクランブル、オレンジのコンポート

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・オマールのバニラロースト、蜂蜜風味の焦がしバター

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・舌平目、サマートリュフ、大分産ステーキ椎茸のパイ包み、トリュフ風味のソースサバイヨン

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・北海道白糠町酒井さんが育てた仔羊(サフォーク種・雌7ヵ月)その1、右はタン、ハツ、レバー、バベット、左はピペラード風トリップ

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・仔羊その2、シンプルなロティで、仔羊のジュ、ロックフォールソース、35年物のローズマリー風味、そのローズマリーの枝(笑)

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・白桃のコンポート、ジュレ、上に液体窒素を使った紫蘇パウダーのソルベ、ムラメ、穂紫蘇、刻んだ大葉、白桃のソルベ

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・ソーテルヌのグラス(左下)、シェーブルのムース(右)、ピオーネの自家製セミドライ

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・バナナとチョコレートのグラスの中にラムレーズン、ヘーゼルナッツ、キャラメリゼしたバナナ、上からラム酒入りの熱いチョコレート。ベジタブルゼラチンで包んだマンゴーとパッションフルーツ。

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・紅茶のシュー・ア・ラ・クレーム、トンカ豆のブランマンジェ
・カモミールのアンフィージョン

 料理を全部説明すると長くなるので、特に印象的だった料理について記したい。
 まずは熟成させたコチを燻製にかけ生ハムのイメージにした料理は、締ったコチの旨味が舌を刺激する、次のトウモロコシのブランマンジェは甘味が濃厚。岩牡蠣は液体窒素のキュウリパウダーと合わせる事によって新しい味に変化する。スペシャリテの瞬間燻製は鰯で、イチジクやナスとの意外な相性を感じさせる。
 フォアグラとコーヒーの組合せは、他店でもあったので最近流行みたいだが、この料理ではジュレ状のシートにして、そこへスパイスクランブルが加わり、味が立体的になっている、フランス産ではないがフォアグラの質は申し分ない。
 バニラとオマールは、かのアラン・サンドランスへのリスペクトか、考えたのが天才なら、その意味を正しく伝えている良好な味のバランス。舌平目パイは香りの弱いサマートリュフを補う意味で使った椎茸が面白い味のアクセントになっていた。
 そしてこの日の主役が、北海道白糠町「羊まるごと研究所」の酒井氏が育てた仔羊、シンプルなローストかロニョナードどちらも可との事だったが、肉の素性を知りたくて前者をお願いして正解だった。日本の仔羊も遂に此処まで来たかと感心する旨味、まずは脂が美味で、赤身部分は舌にまとわり付く肉質、まるで雌羊と濃厚なディープキスをしている感覚(笑)。勿論優れた素材を生かす調理があるからだが、高橋料理長は「ビーツとフォアグラの薔薇」みたいな前菜が有名だが、肉を焼かせても東京でもトップクラスだと思う、前座で出してくれた内臓料理も美味。
 デセール3皿(ミニャルディーズも含めると4皿)も、起承転結があって流れと完成度が高い、特にチョコレートとバナナの皿は、長く記憶に残りそうな逸品だった。高橋氏もパティスリー勤務経験があるので、デセールの重要度が高まる現在、強さになっている。

 昨年の開店直後は、各料理の精度の高さを見せながら、全体の流れではバランス的に不均衡を感じる部分もあった、それだけ独立新店でのプレッシャーは相当なものだったと思う、1年経ってそうした部分が解消され、全体のムニュ構成も考え抜かれ、料理間の繋がりが良くなっていると感じた、やはり実力あるレストランは進化するものだ。
 あえて注文を付けるとすれば、食事中のパンはカイザーのバゲットみたいだが、料理のクオリティに比して普通過ぎた、自家製は無理でも上質なカンパーニュ等なら更に良くなると思った事位か。
 この日、外国人客が3卓あったが、田村支配人がクリーンな英語で難なく対応していた、魔界の夜の六本木に現れる客は相当な強者揃いだろうが、希少な女性支配人として、後に続く女性達のためにも「ガラスの天井」を打ち破って欲しいと思う(笑)。
 退店時に挨拶に現れた高橋料理長に、この日の料理感想を伝えたら、「(自分は)まだまだ未熟者です」と謙遜していた。仏教で云う「未在(みざい)」は「まだまだ学ぶべき事が在る」と云う意味、同じく自分を未熟と悟れるのなら、この料理人は更なる進化の領域へ進みそうだ(笑)。
 今年指折りの美味で濃厚なディネ体験、高揚した六本木の夜になった、支配人&料理長とスタッフの皆さんに感謝。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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