最後の晩餐にはまだ早い


札幌・西18丁目「プロヴァンサル・キムラ」(2016年札幌食べ続け②)

 札幌二日目は、北海道立近代美術館で開催中の「ゴジラ展 特撮映画のヴィジョンとデザイン」を観に行く、これがとても面白かった(笑)。「ゴジラスーツ」と呼ばれる着ぐるみを始め、1954年制作の初代「ゴジラ」からの貴重な資料が展示され、ゴジラファンや映画ファンには胸躍る企画で、子供ではなく大人が楽しめる内容だった。でもこれを見ていると、昭和の特撮映画界のマンパワーは凄かったなと思う、今は何でもCG制作になってしまったのが少々残念。

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 昼の時間が近づき歩いて向かったのは、美術館から至近のフランス料理「プロヴァンサル・キムラ」、この店は数年来札幌食べ続けの定番になっている、今回は札幌在住の友人夫妻との食事で、「ブイヤベースを食べる」とのテーマを決めていた。
 此処の料理が好きな理由は、私が毎年の様にフランスを訪れていた1990年後半から2000年代前半位の、フランスの料理を思い出せるからで、料理を一口食べただけで「旨い」と唸らせる、頭で理解するよりも感覚へ訴える美味しさがある。あの時代の名料理人達は皆、水戸黄門の印籠的な「これが見えないか、食ってから文句云え」的なスペシャリテがあった(笑)、それを食べるために客は遠路を厭わず訪れたものだ、今は料理よりも店が提供するイメージを体験する方が優先されている気がする。
 天気はプロヴァンスの青空みたいな快晴(笑)、ファサードに塗られた店のイメージカラー、プロヴァンサルジョーヌが映えている、ドアを開け迎えてくれるのは木村マダムだ。
 入店後厨房近くの席に座らせてもらい、シャンパーニュとペリエで乾杯して始まったブイヤベースを中心にしたメニュー、内容は以下のとおり。

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・秋刀魚のピサラディエール(3人分)

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・自家製スモークサーモンのマリネ、キアヌ、ビーツ

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・道産帆立貝のグリエ、コリンキーかぼちゃ、黒トリュフ

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・スープ・ド・ポワソン、ルイユとグリュエールチーズ

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・ブイヤベース(鮟鱇、縞ソイ、アナゴ、ホウボウ、ムール、ジャガイモ)

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・プレデセール(トマトのコンポート、大葉のグラニテ)

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・旭川産木苺のバシュラン

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・ミニャルディーズ(マカロン、イチジクのロールケーキ、ショコラ)

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・デトックスティー

 今年は秋刀魚が不漁だが、あえて東京から来た人間のために出してくれたピサラディエールは、根気よく炒めた玉ねぎが味のベース、これがあの時代の基本だ(笑)。
 臭みの全くない自家製サーモンはねっとり舌に残る美味、クリスピーなキアヌが面白い食感、地産の採れ立て帆立貝はシンプルだが美味しくない訳がない(笑)。
 そして次の「スープ・ド・ポワソン」を一口飲んで、「旨い」と唸って息が止まりそうになる(笑)、このために往復の飛行機代払って惜しくないと思った。此の店のブイヤベースは2回目だが、以前より味の濃縮度が増している、有無を言わせない美味しさとはこれ、添えられたルイユも絶妙。
 続くブイヤベース本体もいいが、やはりスープの強烈な印象の後では少し感動が薄れる、この料理はスープが7割、本体が3割位の重要度かも知れない(笑)。
 デザートも味、見た目共に良かったし、ミニャルディーズまで手を抜かないのは職人気質な木村料理長ならでは。

 木村浩料理長は1968年生まれ、ユーロ統合前のフランスで働いていて、当時のフランス料理を知っているが、これが財産になっていると思う、あの時代は客が最初の一口でガツンと頭を殴られるみたいな、強烈な印象の料理が多かった、そのために一皿に込められた材料と手間は相当なものだった。当時の南仏のブイヤベースを知っているし、日本人が好む味も知っている、北海道の魚介を使って日本人が食べる事を想定した、完成度の高い料理になっていると感じた。
 絵師長谷川等伯の生涯を書いた、安部龍太郎「等伯」の中で、等伯のライバルだった狩野永徳が初めて等伯の絵を見て、思わず「古い」と漏らす場面がある、これには羨望の意味が含まれていて、「この表現では自分は敵わない、新しい表現を求められる狩野派の総師として、自分は違うやり方で描くしかない」と悟ったのだ。
 この後に訪れる事になる、札幌の若い料理人達が木村料理を体験すると、おそらく狩野永徳と同じ心境になるのではと想像してしまった(笑)。
 間違いなく云えるのは「旨いと唸らせるブイヤベースが食べたかったら、ニースでもPARISでも東京ではなく、札幌へ行け」(笑)。なおブイヤベースの注文はランチ、ディナー共に可能だが、2人分からなので要注意。

 サービスを担当するマダムの明るさもこの店の財産、名前は南仏プロヴァンスでも店の雰囲気が極北では困ってしまう(笑)。友人達も交えてブログには書けない話も含め、とても楽しい午後になりました、皆様ありがとうございました。
 来年はこの店で何が食べられるか、今から待ち遠しく期待したいと思う(笑)。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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