最後の晩餐にはまだ早い


外苑前「フロリレージュ」(2016年10月)  

 6月以来で今年3回目の「フロリレージュ」、その間に川手料理長はパリ「ES」の本城料理長と日本でフェア、更には韓国でも川手フェアを開催、つい最近はベルギー・ブルージュまで行き、三ツ星店「Hertog Jan(ヘルトン・ヤン)」でフェアを行う等、まさに「破竹の勢い」を感じる。
 私がフランス料理店へ本格的に行き始めた1980年代に、日本人料理人がフランス料理で、欧州でフェアを開催する事など、およそ考えもつかない夢物語の世界だった、長生きはするものだと思うが(笑)、40年近い間に此処へ辿り着く迄に、先人達が重ねた努力は、料理人だけでなくメソッドを作った調理師学校等も含め、改めて凄い事だなと思う。特に現在の日本人料理人、それも1970~80年代生れの若い料理人達の質と数は、世界最高と云ってもいいのでは?と感じている。
 その世代を代表する一人が川手料理長だろう、直近に行った札幌の若手料理人達が、フロリレージュと川手氏へ向けるリスペクトは、話していて特別なものがあると感じた、東京や大阪そしてパリにも同世代の日本人料理人は居るが名前も出なかった(笑)。料理技量だけでなく人間性の面でも何かが違うのは、同業者なら特に感じるのだと思う。
 また前置きが長くなってしまったが、まずはこの夜の料理を紹介したい、

     161031-1.jpg
・投影、さつま芋

        161031-2.jpg
・ヘルトン・ヤン、ボタン海老 バニラ

     161031-3.jpg
・合作、鱧 スフレグラス

        161031-4.jpg
・コントラスト、南瓜

     161031-5.jpg
・サスティナビリティー、牛と牡蠣

        161031-6.jpg
・記憶からのインスピレーション、ブーダン 白子

        161031-7.jpg
・和の風味、甘鯛(食べ始めてから撮ったので少し崩れている)

        161031-8.jpg
・分かち合う

     161031-9.jpg
・北海道白糠町羊まるごと研究所の仔羊、もち米とエゴマ

        161031-10.jpg
・旬、柿

     161031-11.jpg
・栗 新米

        161031-12.jpg
・贈り物、アマゾンカカオ

        161031-13.jpg
・ドリンクペアリングの一部(一見「栄螺の壺焼き」もドリンクです(笑))

 料理個々の説明は簡単に留めるが、二品目の海老とジャガ芋ピュレのバニラ風味は、「ヘルトン・ヤン」のスペシャリテ、面白い味のバランスで美味だった。次の鱧料理は若干「?」の部分も感じたが(笑)、続く南瓜&フォアグラ~経産牛&牡蠣~ブーダン&白子の流れは見事、異種格闘技みたいな組合せもあるが、そこから新しい美味しさを作り出すのが川手料理の真骨頂だ。
 白糠町の酒井氏が育てる仔羊は「ル・スプートニク」でも使っていたが、シンプルなローストが抜群だった同店に対し、自分の得意とする技法で調理した川手料理は対照的で興味深い。
 デセールは見た目シンプルで各素材の特質を生かしたもの、中では最後のペルーの料理人から送られて来ると云う、アマゾン産カカオと赤紫蘇を使った一品が印象的だった。

 キッチンスタッフが数名交替して外国人も2人加わっていた、実はこの前日に12月公開予定の、「ノーマ東京-世界一のレストランが日本にやって来た」の試写会を観ていて、その映像がダブってしまうのだが、協働体制の緻密さや出来上がった料理を見ても、日本人としての贔屓目はあると思うが遜色はそう感じなかった、尚この映画については次回のブログ記事で紹介するつもりだ。
 当夜の客中に外国人夫妻が居て、退店時にレセプションで一緒になったのだが、こちらのメンバーに英語が達者な人間が居たので話しかけたら、オーストラリアから来たとの事、今日の料理印象を尋ねると‘excellent’を連発していた(笑)。何でもオーストラリアで有名な食ジャーナリストがフロリレージュに来店し、その好印象記事を全国紙に書いたそうで、それ以来店と料理長はオーストラリアでは、とても‘famous’になっているとの事、川手氏はオーストラリアへ行けば一稼ぎ出来るかも知れない(笑)。

 川手料理長は以前から被災地復興支援や食品廃棄物削減等、店として「サスティナビリティー(持続可能性)」に取り組んでいる、新店でのテーブルクロス省略もその一環で、製作や洗濯時の環境負荷等を考慮し、コストカットが目的ではない筈。この日肉料理に使った皿は、川手氏自らが欠けた箇所を修繕(金繕い)した物だった、今迄なら廃棄されていた皿でも修理しながら使う、こうした考えは昔の日本では当たり前の事だった。最後に彼が語ったのは、料理人が着るコックコートの省略方針で、製作時には相当量の布地をロスして廃棄されるそうで、見直しを考えているとの事。
 川手氏が同世代料理人から尊敬を受けるのは、料理に限らず、こうした取組でも他店の一歩先を行く姿勢によるものだと思う、今はもう料理だけを作っていればいい時代ではなくなった、料理人も社会を構成する一員として、何が出来るのかが問われている。そして客側も「テーブルクロスや布ナプキンを何故使う?」とか「料理毎にカトラリーを替える必要ある?」等を、今後真剣に考えないといけないと思う、料理人のレベルの高さだけでなく環境面でも、日本のやり方が世界標準になる日が何時か来て欲しいものだ。

 こうして客側にも問題を提起して、刺激を与えるフロリレージュ、考えさせられる事が多いので、この店さえ通っていれば認知症など怖くない気がする(笑)。
 同席を誘って参加いただいた皆様、多忙な中をありがとうございました。
スポンサーサイト

  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0


 管理者にだけ表示を許可する
 


プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

訪問者

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2017 05  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -