最後の晩餐にはまだ早い


和歌山「オテル・ド・ヨシノ」(2017関西食べ続け③)

 毎年この時期恒例の「和歌山詣で」だが、今年は少し様相が違って、何と総勢7名のランチツアーを組むになった。
 発端は去年秋に札幌の或る料理人から、「オテル・ド・ヨシノの手島シェフの料理を食べてみたい」との話を聞き、「それなら私は来年2月に行くから、日程合えばご一緒にどうぞ」と誘ったのが始まり、そこから話が徐々に広がって人数が増えて行き、直前になって「謎の小田原組」(笑)も乱入、他にも青森や大阪から集まった有志が揃う事になった。それだけ今「オテル・ド・ヨシノ」と手島料理長の料理が、全国から注目を集めている事でもある。
 手島氏からは「トータル7名様ですね?タフな仕事になりますが大丈夫です。」との頼もしい返事をもらっていたが、呼びかけた側としても無事に食ツアーが終わるまで、満足してもらえるか等を考え緊張してしまう。

 絶好のフレンチ日和?になり、JR和歌山駅からは線路沿いを歩いて向かう、隣のビッグホエールではアイドルユニットのコンサートが夜にあり、グッズを買う若い人達で賑わっていた。
 予約時間に12階のレストランに到着、平日昼ながら既に店内は8割の入り、メートレスの案内で我々は厨房に近い最上席に案内されるが、どうやら他の客から隔離されたみたいだ(笑)、「遅刻厳禁」だがさすが食の専門家達なので定刻までに全員集合、メンバーが揃うと体格いい男子ばかり、体育会系的集まりに見えてしまう(笑)。
 まずは当日の料理から紹介したい、なお「オテル・ド・ヨシノ」は初体験の私以外の6名には、スペシャリテである「ジビエのトゥルト」を中心としたメニュー、過去体験している私には面倒な事に別メニューを用意してくれた。
 後で手島料理長が幾つかの料理について説明してくれたので要約して記したい、『』内が手島氏の言葉。

・グジェール

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・ジビエのコンソメ(画像ぶれています)

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・甲殻類のジュレ、カリフラワーのクリーム

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・ベキャスのビスク

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・ジビエのパテアンクルート
『ファルスに地鶏、鳩、鹿、猪、ジビエのアバ、豚、フォワグラを使い、ガルニチュール(大きな肉の事をパテアンクルートの時はこう呼ぶ)はフォワグラ、鹿、コルヴェール、地鶏、猪の胸腺肉を使っています。』

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・舌平目のパテショー(焼き上がり)
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・同 切って皿に盛ったもの
『形は違いますが構成はほぼ「ヴィヴァロア」※のままです。本家に基づきソールはドーバー産を使いました。ただパナードは使いませんでした。(パナード:小麦粉、バター、牛乳で作るつなぎで、昔のルセットを見ると魚系のムースには必ず入っていて、入れると独特の食感を得られるが反面重くなる)このルセットの一番の特徴は、魚のムースにアンチョビが入いる事です。ソースはソールのガラを使って作ったヴァン・ブランです。』

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・和歌山県産イノシシのバロティーヌ
『入荷した猪バラの脂がとても美味しそうに見えたので作りました。赤ポルト酒をふんだんに使っています。』

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・他の参加者に出た「ジビエのトゥルト」圧巻の3台6人分

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・プレデセール:シャリュトリーズのグラニテ、和歌山藏光農園のデコポン、ピスタッシュのムース

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・キャラメルのムースと金柑のコンポート、ヘーゼルナッツとキャラメルのアイス

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・ミニャルディーズ

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・和歌山のハーブを使ったアンフュージョン
※「ヴィヴァロワ」・・パリ16区にあった三ツ星(一時期)レストラン、「舌平目のパテショー」は此の店のスペシャリテ。

 手島料理の特徴は、まず強固な土台を造り、その上に石や煉瓦を積み上げていく西洋伝統建築の手法だと感じる、音楽で云えばモーツァルトよりワーグナーの楽劇、「構築」と云う言葉が適した、手間も時間もかかるやり方で、当節の流行には背を向けている(笑)。
 料理長に「舌平目のパテショー」が食べてみたいと話したのは数年前だが、おそらくその時からクロード・ペロー(「ヴィヴァロワ」料理長)のルセット(レシピ)を調べ、試作してカット&トライを続けたと思う、料理は完成度高く、現代でも充分通用する予想外の軽さがあった。
 ワーグナー楽劇上演の聖地バイロイトでも、常に斬新な演出を取り入れる事により、現代に合った「伝統」を作り出している、「優れた古典は前衛になり得る」とも云える。
 今回の印象を一言で云えば、7人客同席でもブレを感じさせない安定感、起承転結があり料理のデザインも以前より洗練された印象を持った。

 過去多人数での食事会には何回が参加したが、この日は何時になく特別な雰囲気、参加者からは「何かを得て帰ろう」みたいな真剣な熱気が伝わって来る。メンバーも濃かったが、話の内容も専門的且つ濃い。今日の料理を「わんこそば」並のスピードで食べる人も居れば、夜にこの店を更に上回る濃厚古典フレンチへ行くと云う人も居て、どの世界にも上には上が、更にその上が必ず居るものだ(笑)。
 メンバー中の料理人も、やがて自分の料理で日本中いや世界から客を呼べる存在になって欲しいものだ、問題は自分がそれ迄外食出来る身体で居られるかどうかだが、期待しています(笑)。
 素敵な場と時間を提供してくれたサービスとキッチンスタッフの皆さん、そして既に存在は「重鎮」の領域へ行き、「若頭」とは呼べなくなった手島料理長、長時間ありがとうございました。

 この手島料理を東京で体験出来ると云う、滅多にないイベントがある。
http://ryori-masters.jp/chefs_kitchen/pdf/chefskitchen_vol20.pdf 
 和歌山までの往復交通費を考えたら、決して高くなく安いと思う、この記事を読んで興味を持ったら検討してみてください、現在まだ残席はあるそうです。
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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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