最後の晩餐にはまだ早い


大阪・高麗橋 「桜花」(2017関西食べ続け④)

 和歌山「オテル・ド・ヨシノ」から大阪のホテルに帰ったのが17時過ぎ、このままベッドに入って眠りたかったが、19時からは夜の部が始まる。お腹は空いていないが、とにかく胃薬を飲み(笑)、バスタブに湯を張って足湯に浸かった、これは体内血液を循環させ、少しでも胃内の堆積物を消化させようとする、食べ続け旅行で覚えたやり方、「おまじない」みたいな部分はあるが(笑)。
 夜は此処も毎年訪問している、市営地下鉄淀屋橋駅から近い和食店「高麗橋 桜花」、大阪中心の食材を料理人の現代的感覚で料理、「自分は決して喋りが得意ではない」と云いながら、料理や食材の事になると黙って居られない森田氏と素敵な奥様、調理を補助する美少女料理人和田さん、それぞれの個性が光る店だ。

 淀屋橋駅を出たら小振りの雨が、これ大阪名物の「小ぬか雨」だと思う、駅出口からは歩いて5分もかからないのでありがたい。入店したら同席者が既に待っていてくれた、この日は関西在住の食通男性二人と同席で、昼とはまた違う濃い話になりそうだ(笑)。
 森田夫妻に挨拶し、始まった早春の料理は以下のとおり、主題は「桃の節句」との事。

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・白酒代わり

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・白魚の酒蒸し 菜の花辛し和え 金時人参 大根おろし

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・なんば葱のぬた 蛍烏賊 さるぼう貝 白蒟蒻 雛あられ

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・椀物 桜道明寺蒸し(甘鯛しんじょう、椎茸、手毬麩)

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・造り(金剛山千早川の鱒)

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・造り、その二(あいなめ、ぼら、はり烏賊)造醤油、のばし梅

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・春のちらし寿司

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・焼物(鰆の西京焼き 門真蓮根、赤蕪)

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・強肴(桜鯛 卯の花和え 防風)

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・麺(にゅうめん、あさり、あおさ海苔)

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・香の物(辛子和え、昆布佃煮)

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・甘味(白あずき餡、苺、蕗の薹団子、小豆、バジル)

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・薄茶

 桜花料理の特徴は、高価な材料をふんだんに使って「どうだ、旨いだろう」みたいな力強さより、一品一品は穏やかな仕上げだが、全て食べ終わった時に「今日の料理美味しかったな」と思う安堵感、そして支払いの段階で「こんなに安くていいの?」と驚かされる。
 「はしり」の高価な筍などは使わず、一部の和食店等で取り入れている、強肴に和牛を出す事もない。基本は大阪の野菜と近海の魚介が中心、それでいて「ウチは京都と違う、大阪料理や」と変に力んでいる訳ではない(笑)。
 この料理、京都ならもう少しいい器や店内の設えはあるが、黙って一万だなと思う。他店であまり使わない野菜や魚を探して提供しているのも、価格を抑えて和食の門戸を広げたい店主の意向があると思う。「同じ産地の鯛をこの大きさで十匹揃えてくれ」みたいな注文の仕方が、仕入値段が一番高くつくそうだ、これはバンケット等で、希少な野禽類を一定数揃える時のフランス料理と同じ。数量が揃わず他店で使わない魚、未だ知られていない新品種の野菜、こうした物を使って献立を組むのが価格を抑えるに際し大事だが、料理の組立にセンスがないと、ブランド名に依存しない分、注目されず凡庸なものになり兼ねない、桜花の料理にはその心配は感じられなかった。

 料理中特に印象に残ったのは、まずは和食の華である椀物、春の訪れを感じさせる甘鯛に肉厚の椎茸、上質の昆布出汁の組合せが美味しさを生み出す。意外にも料理の途中で出た「ちらし寿司」も秀逸、料亭の味と云うより何処か家庭的な穏やかさだった。造りでは大阪府内の金剛山麓の鱒が記憶に残る、千早川は名勝地として知られ水も綺麗な地との事、今は養殖でもこれだけ高品質のものが提供出来る時代になった。
 珍しいバジルを添えた甘味の後に出たのが、金沢出身の和田さんが立てた薄茶、森田氏が「僕が淹れるより美味しい」と云っていたが、汚れない綺麗な心を反映しているのかも知れない(笑)。

 昼間の男性陣に比べると、体力は追い付かないかも知れないが、人生経験なら負けていない?親父が三人、森田氏と女将、そして年配男性客に人気があると聞く和田さんも含めて、濃い話になりました、特に和田さんとの話は際どいのもあったが、サラリと受け流すのは見事な親父あしらい、きっと大物料理人になれる器だと思った(笑)。
 森田氏と彼女のやり取りは、昔流行した「サインはV」みたいなスポ根TVドラマの、スパルタコーチとヒロイン的(笑)、「涙は心の汗だ」と森田氏が云えば、「コーチ、私にも出来るのでしょうか?」と和田さんが答える、これを見た親父世代客が彼女に味方する、少し離れた場所から二人を見守るのは、星明子的な優しい視線の女将(笑)。
 店はビジネス街にあるので、昼は格安定食も出しているが、先日料理人一家の家庭事情で一週間休んだ処、「あの店は潰れた」「夜にえらく儲けたのでランチやめた」みたいな変な噂が立ち、再開後客足が途絶えたそうだ、以来「意地でも続けてやる」と森田氏は思っているみたいで、やはりスパルタコーチにもなれる骨のある料理人だ(笑)。
 雨で潤った夜に楽しい宴になりました、次回もこのトリオに会えるのを楽しみにしています。
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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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