最後の晩餐にはまだ早い


大阪・上本町「レストラン・コーイン」(2017関西食べ続け⑧)

 食旅行2日目に「オテル・ド・ヨシノ」に集まった、古典フレンチ好きの重量級選手達との会話で名前が挙がり話題になり、去年私が最も回数行ったレストランの料理人も「一番行ってみたい店」と話していたのが、これから訪れる事になる、大阪上本町の「レストラン・コーイン」だった、向かう方向が同じだと、結果辿り着くのも同じ場所になるみたいだ。「君達が気付くもっと前から行っているぞ」と、思わず自慢したくなるが、そこは笑って「そうですか」と相槌を打つ事にしている(笑)。
 去年は食旅行1日目に訪れたため、その後の訪問店の印象が薄れてしまった、それがあったので今年は日程最終夜に予定を組む事に、在関西の料理人で、やはりこの店に関心を持っていた友人と相席、1年ぶりに「上本町の巨匠」またの名を「無冠の帝王」が棲む館の扉を開く。 
 去年と店内のレイアウトが少し変わり、店奥が円卓から長卓になったが、この席に座らせてもらう、サービスを担当するのが、以前にもこの店で働いていた若い女性、有名調理学校の専門課程卒業生との事で、最近まで渡仏していたそうだ、料理の質問をしても「シェフに訊いてきます」みたいな事はなく、的確に答えるのはさすが。彼女もそうだが、今回の食旅行ではどの店も女性の活躍が印象に残った、今関西の食は女性達が支えている(笑)。

 湯浅料理長に挨拶し始まった濃厚な饗宴、まずは料理を紹介したい、なお後で湯浅氏より料理について説明があり、全部を載せると長くなるので、ブログ公開には適当でないと思われる部分(笑)等は要約し記す事にしたい、『』内がその説明。
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・アミューズ(赤ピーマンのババロア、カニ身、コンソメジュレ、カニみそ)
『カニは鳥取産活ズワイ蟹、熊野牛のコンソメジュレです。』

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・トリュフサンド(手前)とトリュフバター
『「フィセル」(ブランジェリー)のパンドゥミに自家製バターを塗り、オニオンソテーとトリュフスライスを挟みオーブンで焼いています。』(トリュフサンド)
『自家製バターにトリュフアッシェ、コニャック、ポルト酒、藻塩を練りました。レーズンバターのトリュフバージョン。』(トリュフバター)

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・ベレオロール‘Belle aurore’※
『(ファルスは)鴨、鳩、子牛、プーレ、フォアグラ、リードヴォー、猪、鹿、トリュフ、ピスタチオ等です。』

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・鳥取県産ミンククジラのタルタル仕立て、自家菜園の野菜添え
『今はなかなか手に入らない生ミンククジラの赤身。仕入先の鮮魚店が一頭買いしています、(入荷は)2ヶ月に1回位で今回は1トン物です。塩を打ち6時間後常温燻製1時間かけ、上のキャビアも燻製かけています。卵黄は土佐ジロー。』

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・コンソメクリュスタッセ
『オマール、赤座、足赤の頭でフォンをとり地鶏のササミのミンチでクラリッフェ。SPゲストの予約が入っている時だけ時間を逆算してそのまま(鍋ごと)プレゼンします。』

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・スッポンとアワビの赤ワイン煮
『スッポンは赤ワインと牛のフォンで1時間ほど煮る。縁ペラ部分を使いゼラチン質とコクを楽しんでもらいます。仕上げに軽くアワビを煮込み煮汁を煮詰めてソースにしています。通常なら魚のポアレやブレゼにブールブランやソースヴァンブラン等を合せた皿を提供するのですが、他(店)で沢山食べて来ると予想してこの料理にしました。』

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・ブレス産ピジョンのファルシー

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・同腿肉を使ったトリュフのリゾット
『ピジョンは綺麗に皮を残して、ささ身、フォアグラなどのファルスを中に詰込み全体を皮で覆い焼く、通常でしたらクレピーヌを使いたいところですが、ピジョンの皮でのみで覆うのがポイント、軽く仕上げたいためにそうしました。ソースはジュドピジョンに少しレモンを加えたもの。ガルニチュールはトリュフと保存していた米とピジョンの腿、内臓をフォンドピジョンとトリュフ、ジュドトリュフでブレゼしました。』

・フランボワーズのソルベ(画像なし)

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・ブリュレ
『トリュフと共に保存していた土佐ジローの卵黄でブリュレを作っています。飴のスフレと食べると(食感が通常の)ブリュレとなるようにしました。グラスもトリュフと土佐ジロー卵です。』

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・ミニャルディーズ

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・フレッシュアンフィージョン

※筆者注:料理中の「ベレオロールBelle aurore」とは、リヨンを中心に作られているパテ・アンクルートの一種で、型に入れないで焼く、その形から使っていた枕を連想し、子供時代の想い出から、母の名で呼んだのが料理名となったと伝えられる。

 全部について語ると長くなるので、特に印象に残った料理を挙げると、まずは鯨のタルタル、私の世代は「鯨=給食の竜田揚げ」のイメージがあり、あまり美味しいと云う認識ではなかったが、このタルタルには度肝を抜かれた(笑)、過去食べたどの牛タルタルより美味、これは「知ってしまった不幸」で、もうこれから牛肉では満足出来なくなりそう。友人も「金属バットで殴られたみたいに旨い」と云っていた(笑)。
 次のコンソメも脳髄に突き刺さる味と香り、時間とお金をかけたその一番いい状態を提供する、鍋全部飲みたい位だが、次を考えて一杯で止めておいた。スッポンと鮑で作る魚料理も圧巻、和の食材を使いながらも、王道真中直球のフランス料理にするのは、この料理人ならではの資質だ。
 そして「もう食べられないかな?」と思いながらも完食した、意外にも軽やかな鳩料理に加え、それに添えられたトリュフリゾットが異次元の旨さだった、満腹で少量しか食べられなかったのが心残り、誰も見ていなければ入れ物抱えて帰りたかった(笑)。
 デセールのトリュフブリュレは昨年版よりモダンになっていた、料理人は「私はモダンも作れるのです」との事(笑)。

 何回か通った店は「次はこんな料理が出るのでは?」と、行く前にある程度予想する、多くの店でそれが大きく外れる事はなくなったが、此の店はこちらの想像の斜め上を行く料理が出て来る(笑)。
 料理人の説明を読んでわかると思うが、料理はオートクチュール、食べる側の経験値や体調を考えて調理を変える、料理力に加えて推理力や洞察力も駆使するのでIQも高そう、過去私に何の料理を出したのかも概ね記憶(記録ではない)していると思う、アミューズ以外は殆ど料理がカブっていない。
 自分が海原雄山に料理ともてなしについて説教される山岡士郎になった気がした(笑)、今回の対決?も完敗に終わった。そして何より感心したのが、これだけ食べても翌朝胃が重くなく、ホテルの朝飯を普通に食べられた、これは特筆すべき事。
 記事を読んで此の店に興味を持ったら、ランチよりディナーへ行くべき、更に電話予約時に何故行きたいか理由を伝える事を勧めたい、「このブログを見た」でも構わない(笑)、客側が本気ならそれ以上の本気で応える料理人だから。
 濃い大阪夜の締めくくりに相応しい濃厚なトリュフ料理に酔い、何故か古い歌「アカシアの雨がやむとき」を口ずさんで帰り道を歩いていた(笑)。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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