最後の晩餐にはまだ早い


稲荷町「キエチュード」(2017年5月)

 東京は数年来変わらずにフレンチやイタリアンの新店開業が続いているが、オープンは話題になっても、閉店はまず話題にならない、皆は気が付かないフリをしている(笑)。東京全体でレストランの数は増えても、レストランへ行く客の総数は増えていないと感じている、つまり大きさの決まったパイを取り合いしているのだ、これから東京で出店を考えている人に「店を出すな」とは云わないが、開店したからには維持するには何をすべきかを、戦略として考えてないといけない、「開ければ客は来る」と考えるのは間違いだと思う。
 稲荷町のフランス料理「キエチュード」でランチを体験後、そんな事を考えてしまった。

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 此の店を利用するのは6回目でランチは3回目、ランチ時はいずれも平日ながら毎回満席、2回転する席もあった。客だけでなくスタッフ集めにも苦労する店が多い中で、この好調さは何が理由なのだろう?マスコミに頻繁に紹介されている訳でもなく、例の赤い本にもスルーされていながらである。
 理由は後で考える事にして、まずは当日のランチメニュー(3,000円)を紹介したい。

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・スペシャリテ パテ・ド・カンパーニュ

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・スペイン・リオハの白‘Ramon Bilbao’

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・バゲット(冷凍種のものだと思う)

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・小海老 マカロニ 鎌倉野菜

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・本日の鮮魚(甘鯛)フェンネル アメリケーヌ

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・チキンコルドンブルー デミグラソース

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・チョコレートタルト(ノエリー酒風味) ラズベリー チェリー カボス・カルダモン・ジンジャーのアイス

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・コーヒー

 パテはミニサイズだが練肉の旨味が伝わって来る、猪9:鶏1位の割合との事。小海老を使った前菜は簡単に云えば「マカロニサラダ」だが(笑)、上質な野菜との相性でレストラン料理になっている、鎌倉野菜を使う料理人は増えているが、良質さとブランド力は魅力だ。
 甘鯛は皮付きで調理する事が多いが、あえて皮を外しソースと合わせる事で「ブイヤベース」風味にした、これは印象に残る皿だった。
 本来仔牛で作る「コルドンブルー」は、食べ易さやコスト面から鶏胸肉を使う、この料理にレストランで出会う事が少なかっただけに、何処か懐かしく優しい味で笑顔になる。
 荒木料理長が「自信作です」と云って皿出ししたデセールは、言葉に違わず美味(笑)、ショコラのタルトもいいが、カルダモンを使ったアイスが面白くアクセントになっていた。

 キエチュードでは2年前の開店以来サービスに就いていた男性が退店したので、「どうなるかな?」と心配もあったが、スタッフ4人のうち荒木料理長が率先して店内に立ち、キッチンは主に別の2人が作業進行している。フルオープンキッチンなので連携に問題はなく、客は料理長から直に料理説明を受けるので、今迄とは違う新鮮さがある、荒木氏の柔らかな物腰もあってサービスに違和感はない(笑)。「夜は客入りにムラがあります」との事だが、それでも昼にこれだけ賑わえば、スタッフのモチベーションもUPする筈だ。

 前置きに戻るが、この店が人気店になった理由を考えると、
・上野でも浅草でもない、稲荷町と云うフレンチ空白地帯だった立地。
・プリフィクスではなく、昼は1,500、3,000円、夜は5,000円の固定メニューにした事。
・固定メニューにした事により食材ロスが減る、クロスも省略し維持費を削減、それを客に還元する事によりキャリテプリ感が高い。
・店内は外光を取り入れ昼は店前の下谷神社の緑が見られる、神社に来た時に此の店を見ると「入ってみようかな」と云う気にさせる。夜は人通りが少ないので、料理や会話に集中出来、昼と夜で雰囲気が変わる。
・料理は分かりやすく、フレンチ初心者や高齢者でも違和感なく味わえる。
・直前予約あるいは予約なしでも、席の空きさえあれば受け入れ可能なフレキシビリティ、特にカウンター席があるのは大きい。
・スタッフ全員がイケメン(笑)。
 最後は偶然かも知れないが、何よりこの客単価でスタッフ3人雇えるのが凄いと思う。荒木料理長は「料理界の東大」とも云われる名門調理師学校卒業、そこでは料理だけでなく、ビジネスとしてのレストラン経営まで教育する、1kg2,000円で仕入れた牛肉を使うなら、ガルニ(付合せ)も含め一皿幾らで提供すべきか迄教えると聞く、それを実践し成功している優秀な卒業生なのだと思う。
 「客が来ない、スタッフが集まらない」と嘆くレストラン経営者は、一度この店に来た方がいいかも知れない。

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 やがて私も年金生活者になるが、我家からのアクセスもいいし、自分の財布の中身を考えると、値段を上げるとか料理を変な方向に難しくしないでと勝手に願ってしまう(笑)、星は無くても下町の良心として輝いている店だ。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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