最後の晩餐にはまだ早い


東麻布「ローブ」(2017年8月)

 前記事に続いての「友、遠方より来たる」は、同じく関西からの客人を迎えての、東麻布のフランス料理「ローブ」でした。私は昨年7月にオープンした直後に初訪問、今年の5月に再訪問を果たし今回が3回目になった、遊郭用語ではこれで「馴染み客」になる(笑)。
 通常営業では夜中心で金曜と隔週土曜日だけのランチ営業だが、8月は特例で平日もランチタイム営業する事を知り、それに乗せてもらう事に。
 麻布十番駅から歩いて到着、隠れ家みたいな階段を上って2階へ、サービス担当の関氏に挨拶しオープンキッチンに近い席に案内される。旧盆中の月曜昼、空いているのでは?と思っていたら、次々と来客があり5卓埋まった、中には知っている顔も居たが(笑)、平日でこれだけ来れば、スタッフもランチ営業する意義があったと安心すると思う。
 平瀬パティシェールと今橋料理長にも挨拶し、始まった昼メニュー、基本だと肉料理は豚だったが、プラス料金で鶉料理に変更してもらい、さらにプラスしてデセールを2品にしてもらう事に、この店へ来てデセール1品だけで帰るのはあまりにも勿体ない(笑)。

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・ウェルカムジュース(葡萄)

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・フレッシュハーブのアイスクリーム

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・この日夏風邪のため体調イマイチで、味わいが好きな福島県奥会津金山の天然炭酸水を

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・塩味のフィナンシェ

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・スペルト小麦とトリッパのクロケット

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・マグロ、生ハムとフェンネル

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・長野産夏茸、ソースサヴァイヨン、上にイタリア産サマートリュフを削って

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・アオリイカ、ケールの葉、粉末とピュレ、ストックフィッシュ(干魚)のソース

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・ウズラのファルシ、無花果の葉の包み焼、無花果とコンフィチュール

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・ババ、ピニャコラーダ、パスティスのクレーム

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・桃のコンポート、バラ花のアイスクリーム

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・宝石箱をイメージした自家製ホワイトチョコ、中はアイスクリーム

 今回の今橋料理からイメージしたのは「夏」、それも湿気の多い日本の夏ではなく、抜けるような青空の南仏での夏、思わず「ああ、太陽がいっぱいだ」と呟きたくなる(笑)。
 ウェルカムジュースからコロッケまでのアミューズは、どれも一口サイズながら印象を残す、特にコロッケはお替りしたい位に好みのツボだった(笑)。
 前菜の鮪の皿は見た目も麗しい一品、オープンキッチンなので製作過程が見えるが、最後のドレッセ(仕上げ)を平瀬さんが担当、だから余計に美しく感じる(笑)。仏サン=ティティエンヌ近郊に在って、現在はリヨン市内に移転した「Le Neuvieme Art」の料理を思い出す、あの料理長もパティシェ出身だった。
 続く茸料理は素材の勝利と云う印象、もちろんそれを生かす技術があってこそだが、ブイヨン等は使わず、炒めただけの茸からこれだけ旨味を感じさせるのは、料理はまず素材ありだなと思う。
 アオリイカ料理も今橋氏らしいと思った皿、日本で烏賊をメイン食材にする料理人は少ない、私の記憶では三田「コートドール」のカルトにあった位で、なかなか難しい材料だと思うが、珍しいケールと干魚のソースと合わせる事により、十分ガストロ料理になっていた。ウズラも今橋氏が得意な、葉を使った包み焼きをする事により、肉の旨味を閉じ込め葉の香りを加えている。黒イチジクとコンフィチュールがいい相性だった。
 今橋氏の料理からはフランス料理の基本「素材の足し算」を感じる。Aと云う要素があって、其処へ別のBの要素を加える、計算結果はAでもBでもなく、Cと云う新たな味になる。彼と同じく「南」を感じさせる料理人に、札幌「プロヴァンサル・キムラ」の木村料理長が居るが、年齢が十歳以上離れている事もあり料理の構成は違う、日本で南仏を感じたい人は、出来れば両方の店へ行って確認して欲しいと思う(笑)。
 そして今回も楽しみにしていた平瀬パティシェールのデセール2品、毎回だが彼女の「作品」に余計な解説を加えるのは野暮な事と思ってしまう(笑)、未体験の人には「一度行ってみて、そして感じて下さい」としか云えない。今橋料理と同じく多くの要素を使っているのだが、根底にあるのは「調和(harmonie)」、マッチョな男性料理人がゴツゴツとした手で作るデセールとは根底から違う、リキュール類を使っても尖らずに他と融合し、マリー・ローランサンやいわさきちひろが描く絵みたいに、全体が母性的に優しく、いつまでも此処に留まっていたいと思わせる安心感と温かさがある、全ての男性にとっての憧れ、聖母子像みたいな印象(笑)。

 食後、席に挨拶に来た今橋料理長に、料理の感想と共に「フランス料理って、儲からないですね」と思わず話してしまった(笑)、まず設備投資にお金がかかるし、機械類が故障した時の予備費も用意しないといけない、「包丁一本、晒に巻いて」では通用しない(笑)。高原価な食材を使っても競合同業種の多さから、余程の有名店でもなければ突出した客単価は取れない。今橋氏も同意して「儲けを考えたら出来ないですね、一種の文化還元的活動と思わないと続かない。」との言葉だった、客側としては嬉しいが、作る側はある意味自虐的だ(笑)。
 3回目のローブだったが、来る毎に進化していると思った、作り手が2人居るからエンジンが2つある、スタートからの加速も早いと感じる(笑)、次回も楽しみだ。
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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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