最後の晩餐にはまだ早い


麻布十番「L'inédit(リネディ)」(2020年3月)

 関西食べ続けの最終訪問店の記事を書く予定だったが、事情があって暫く延期したいと思う、今回から東京それも下町地区が多く登場する、いつもの食記録に戻る事に。
 まずは関西から帰り最初に行ったフランス料理店が、麻布十番狸穴坂入口に在る「L'inédit(リネディ)」。パティシェ出身の料理人が主に料理を作り、パティシェールのパートナーがデセールを作る二人三脚の店で、前回は日曜限定のブランチに訪れ、提供されたヴェノワズリーの技術の高さに惹かれ、次は必ずディネに来たいと思っていた。その機会が意外に早く訪れた。
 麻布十番駅から狸穴坂までの道は、夜は昼とは違う雰囲気になり、遠くには照明に浮かぶ東京タワーが見える、内藤多仲設計の赤い電波塔は私と同年代生まれなので、スカイツリーより親しみがあり、均整がとれたデザインはあらためて名作だなと思う。高い場所はあまり得意ではないが、今度何十年ぶりかで展望台へ昇ってみたいと思った(笑)。
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 人通り少なく暗く静かな住宅地に在る店の灯りは、道行く人を何処か惹き付ける。入店してサービスを担当する北原さんに挨拶し、前回と同じ壁際席に座った。
 夜は税別5,000円のお任せメニューのみ、静かに始まった全12品を以下に紹介する、

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・アミューズ:鯖の燻製、ルバーブのコンポート

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・サバラン オ レギューム

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・鹿のパテ(アレッタ、洋梨のコンフィチュール)

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・穴子 カーボロネロ

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・鴨 ローズ イチゴ(ワサビの花)

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・ワインペアリング(あともう一杯あり通常3,800円、量が飲めないので少なくしてもらった)

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・自家製パン2種

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・ルバーブ

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・イチゴ

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・ショコラ
以下メニュー外で
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・レモンのタルト

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・カボチャのアイスクリーム

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・チョコバナナ
・ハーブティー
 
 アミューズの鯖を食べ、この料理人が只者でない事は判った、続く「サバラン オ レギューム」と題された料理は、根菜を使った「おでん」みたいな印象、そこへ小さなブリオッシュを加えスープを吸わせるのでサバラン、これはパティシェ出身の料理人ならではの発想と思った。
 パテ&テリーヌ類は料理人の実力を反映するが、鹿肉に豚首肉を加えたと聞くパテも問題なく旨い。続く穴子の皮目を強く焼いた料理は、ソースは省き穴子の旨味を強調していて、衣のない天ぷらと云う印象、黒キャベツの苦みも効いている。
 「鴨のオレンジソース」に代表されるが、飼育の鴨肉に果物や甘味を合わせるのは定番、それを苺とバラの香りで表現したのは心憎いやり方、鴨の火入れも文句なしだった。
 デセールになると担当が替わり、今迄サービスだった北原さんが主に作り、料理人の石毛氏がサービスをする。一品一品の量は少なくそう強い印象ではないが、序奏・展開部・終結と持っていき方がいい。
 ミャルディーズ、食事中のパンも全て自家製で、どれもレベルは高いと感じた。
 
 食後のボワゾン含めて5,000円(税別)は、内容を考えたら随分と思い切った価格設定だ、それでいてどの皿もバランスが取れ、全体にライトな印象ながらも最後まで到達すると満足感がやって来る、そしてパティシェ出身の料理人に共通するデザインの良さを感じた。
 思わず石毛氏に「これで利益出るのですか?」と訊いてしまったが、彼は「食材料の仕入などを工夫しているので、正直に云っても利益はちゃんと出ています」との答え、人を雇っていなくて家賃と光熱水費だけ、何とかなるのかも知れないが、「これで利益出るのなら、他の店は何?」と、つい余計な事を考えてしまう(笑)。
 前回と違いコックコート姿の石毛氏は、彼と同じくフランスに長く滞在した藤田嗣治みたいな髪型だが、いい料理人の顔をしていると思った。「古屋オーガストロノーム」の古屋、「レクテ」佐々木の各料理長に共通する、欧州戦線の第一線で戦ってきた顔とでも云うか、喋り方も肝が据わっていて、おそらく戦国武将もこんな雰囲気だったのではないかと思わせる(笑)。
 とてもいい店だが、今の東京ではこの内容でこの値段で勝負しないといけないなら、余計なお世話かも知れないが、新規フレンチ出店は正直儲からないから、考え直した方がいいのでは?と思ってしまう。
 その場での満足感も大事だが、帰り道に「また来たい、次は何時にしよう」と思わせるのが良い店だと常々考えているが、此の店はまさにそれだった。あまり教えたくない気持ちもあるが、私にとって「今年一番の発見店」になりそうな予感がする(笑)。
※店情報は:https://www.eatpia.com/restaurant/Linedit-AzabuJuban-French


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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