最後の晩餐にはまだ早い


藤ノ木土平「斑唐津湯呑」

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 住んでいる区役所の納税課から封書が来たので、「何事か」と恐る恐る封を開けたら、「住民税を納め過ぎていた事が判明したため、相当分を還付します」との通知で、ランチ1回分位の金額が返ってくる事になった、これは嬉しいと思ったが消費するだけでは勿体なく、何か後に残る物を買いたいと思ってネットオークションを見る事に、結局は一番興味がある「陶磁器」に辿り着き色々探していたら、私の好きな作家である、唐津の藤ノ木土平氏の「湯呑」が出品されていて、出品価格が還付される額と大体同じだった事もあり、「これだ」と思い入札したら競合相手も現れず運良く落札出来た、数日後送られて来たのが画像の「斑唐津湯呑」だ。

 作者の藤ノ木土平は1949年新潟県生れ、最初は画家志望だったが、その後陶器の製作を開始、唐津焼、美濃焼の技術を学び、1981年から佐賀県唐津市に登り窯を築き独立、以降は桃山時代の唐津焼の再現を目指して作品を作り続けている。
 唐津焼とは安土・桃山時代に現在の佐賀県及び長崎県の一部で生産が始まった陶器の総称で、朝鮮から渡って来た陶工達により技術が伝わったとされている。初期の桃山時代に作られた物は「古唐津(こがらつ)」と呼ばれ、その希少性から骨董マニア垂涎のアイテムになっていて高額で取引されている。特徴は荒い陶土による豪快な造形で、萩焼などと比べると男性的な印象が強い。
 藤ノ木氏は自身のWEBページでも語っているが、この古唐津時代の作品を現代に甦らせる事を目指している。
http://doheigama.hananusubito.net/

 ただ、古作と寸部違わぬ物を作ってもそれは「模倣」でしかない、彼の作品には更にそれを超えようとする「新しさ」も感じられる。

 この湯呑で使われている「斑唐津(まだらからつ)」とは、唐津焼の技法の一種で、釉薬に藁灰を使って焼成し、その途中粘土中の鉄分が溶け出し表面に黒や青の班点が現れた物を呼ぶ、古くから抹茶椀などに使われていた。
 この湯呑は釉薬の下は唐津独特のザラっとした肌触りの土で、底を持ちあげる高台も無く、全体的には小振りな作りもあって、湯呑と云うより大き目の「ぐい呑み」の様な趣がある。見かけは荒々しい豪快さがありながら、持ち上げるとしっとりと掌に馴染む柔らかさも感じる、熱い茶を入れると温かみがじんわりと伝わって来る。昔から「一楽、二萩、三唐津」と、理想の国産抹茶椀三選に茶人達から選ばれ使われていたが、その理由も頷ける、荒い多孔質の粘土と厚い釉薬が生んだ「奇跡の焼物」と言えそうだ。

 これは飾って眺めてもいいが、やはり毎日の食卓で使いたい物だ、一番似合うのは熱い焙じ茶だろうか、ブラックコーヒーもいいかも知れない、「日常の贅沢」に、こういう本物をさりげなく使える大人でありたいものだ(笑)。 

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Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
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