最後の晩餐にはまだ早い


札幌芸術の森(2013札幌食べ続け⑥)

 これが最後の札幌ネタになる(笑)。
 札幌食べ続けの間に、唯一「観光」的な事をしたのが、札幌市内南部にある「札幌芸術の森」へ行った事で、此処は以前から訪れてみたかったアートスポットだ。実は去年10月にも行くつもりでいたのだが、当日WEB上でアクセスを調べたら、「熊の出現により休館します」との文字でガッカリしたもの、2年越しでようやく訪れる事が出来た。
 場所は市営地下鉄南北線真駒内駅で降り、駅前から発着するバスで約15分、料金は280円なのだが、地下鉄との「乗り継ぎ割引」で安くなる、ただこのバスは都バスと違い料金は降車時払い、支払時には釣銭が出ない運賃箱なので要注意、私は知らずに料金箱に100円硬貨をそのまま入れてしまい、運転手とちょっとしたトラブルになった(笑)。

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 「芸術の森」内の敷地は広大なので、まずは入口から近い「芸術の森美術館」から観る事にした、現在「高橋コレクション・マインドフルネス」展が開催されている。東京在住の精神科医高橋龍太郎氏の個人コレクション展示で、現代美術のコレクターとして知られる氏のコレクションは壮観の一言、僅か15年ほどの期間に約2,000点を収集したそうで、その資力もさることながら、集めたエネルギー自体大変なものだ、今回はこの一部を公開している、草間彌生、奈良美智、村上隆といった日本人作家中心で、全て名作ばかりと云う訳ではないが、現代美術に興味がある人は見ておくべきだと思う。

 続いて行ったのが「工芸館」で、ここで道内作家の陶芸・金工・木工作品や、2階の工房で制作している織物類の販売をしている、北海道在住の陶芸家工藤和彦の片口鉢に惹かれたのだが、東京まで持って帰る面倒を考え断念、花瓶置きになる小さな織物をお土産に買った。
 この後に階段を昇って行ったのが、観るのを一番楽しみにしていた「野外美術館」で、7.5ヘクタールという広い敷地の自然の中に、国内外の作家64人の野外作品73点を配置し、自然の中で人とアートが触れ合える場にしている、美術関係者から「此処の野外彫刻は見る価値がある」と以前から聞いていたが、その言葉どおりだった、一応全作品を観て回ったが、特に印象に残ったものを上げておく。

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・入口近くで迎えてくれるのは、朝倉響子「ふたり」

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・東京でこれに似た住居を見た?新妻實「目の城 ’季季90」

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・アザラシの親子?(笑)、中井延也「月下」

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・市内から見える宮の森ジャンプ台を連想(笑)、澄川喜一「そりのあるかたち」

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・子供たちに一番人気の、福田繁雄「椅子になって休もう」

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・天使の羽根みたいな、小清水漸「石翔ぶ」

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・己の姿を見ているような(笑)、細川宗英「ユカタンの女」

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・自然の中で異質な世界を表現する、内田晴之「異・空間」

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・韓国出身で世界的に評価されている作家、李 禹煥「関係項」

 野外美術館と云うと、「箱根彫刻の森」や現在は閉館中だがスペイン・サン=セバスチャンの「チリーダ・レク」等を連想するが、見渡しの良い平原に彫刻を置く両所と違い、木立や起伏の中に彫刻を設置しているので、歩いていると市川崑の横溝正史物みたいに突然彫刻が現れる(笑)、この人を驚かせる意外性が面白い。見たい彫刻を捜すと云う楽しみ方も出来るし、大人でも子供でも楽しめる場所だと思う。
 積雪のため11月から4月までは休館、ブロンズや鉄製の彫刻も多いので、その間はビニールシート等で厳重に養生する筈だ、その労力や雪解け後の整備等を考えると、相当費用がかかるだろうし、収入が入場料だけでは収支は赤字だろう、でもこの優れた施設はこれからも続いて欲しいと願う。

 札幌は「食べる」だけではなく、こうして文化の香りも高く、人の心も優しい街だ、訪れる毎にこの街が好きになっていく私は、近い将来は此処で「年金暮らし」をするのも悪くないなと思い始めている(笑)。



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出光美術館「東洋の白いやきものー純なる世界」展

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 8月4日から東京・日比谷の出光美術館で開催中の、「東洋の白いやきものー純なる世界」を観に行った。この企画展は「白いやきもの」である白磁と白釉陶器を、これが誕生した中国、「李朝白磁」で知られる王朝時代の朝鮮、更には日本の焼き物を体系的に並べて、その技術の進歩と系譜を追っている。
 「焼物好きが最後に行き着くのは白磁と青磁」と言われるが、私もこの白磁が大好きで、我家の食器類も半分は白磁、器を買いに行くと色々見ても結局は毎回白い器を買う事になってしまう(笑)。白い器で連想するのは三田のフランス料理の名店「コートドール」、最近では一部柄のある皿も使っているが基本白い皿が中心、他店でガラス器や石皿が流行っても、二十年以上変わらずにこれを使い続けていた、器使いにも料理人としての哲学を感じさせるのは、フランス料理の世界では稀有な存在だ。

 白磁が生まれたのは6世紀中頃の中国で、既に存在していた青磁の釉薬から鉄分を取る事によって生れたとされる、誕生にはこの頃より盛んになった東西交易により、西方のガラス瓶や銀器の輝きを陶磁器で表現したいと考えたのが始まりとも言われている、もしこれが事実なら、17世紀に東洋の白磁に憧れたザクセン公国王が、職工のベトガーに銘じて作らせた「マイセン磁器」との対比で実に興味深い話だ。
 王侯貴族が憧れた様に、白い器は長年人々が手に入れたいと願った貴重な物だ、それ程白い色を出すのは難しかった、磁器が発明される前は陶器の表面に白い化粧土を上掛けして焼成する方法が取られた、日本の志野焼や今回出品されている中国・磁州窯の白釉陶器もこの技法によるもの。その後、鉱物のカオリンの発見と窯の改良により、高温による焼成が可能となり、現在我々にも馴染み深い白磁が誕生する事になるが、製法は長い間各地で秘密とされた。

 展覧会は中国・朝鮮・日本の三部門に別れているが、今回に限っては質・量共に中国の圧勝だった(笑)。特に印象深いのは北宋時代の定窯白磁と北宋~南宋時代の景徳鎮窯、それに前述の磁州窯の白釉陶器を加えて、「中国三大色白美人産地」と呼びたい位(笑)。その中でも定窯は世界的に類品が少なく、残されているのはコレクター垂涎の品、大阪の東洋陶磁美術館にも定窯白磁の世界的名品「蓮花文洗」が所蔵されているが、今回の展示品にもこれに似た形の鉢があった、そして全展示品の中から私が選ぶ究極の色白美女は、「白磁長頸瓶」と名付けられた高さ30センチ程の白磁瓶、あたかも浮世絵の「見返り美人」やフェルメールの「真珠の首飾りの少女」みたいに、儚げで刹那的な美を形に閉じ込めた逸品だ、叶わぬ願いだがこれ欲しい(笑)。

 我が日本の代表は徳川美術館所蔵の「白天目茶碗」、16世紀に美濃で焼かれたとされる白釉陶器だが、織田信長が催した茶会でも使われた記録がある由緒正しき物、天目茶碗の本家中国の物に比べると何処か日本的で、たおやかな姿が印象深い。
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 「食」に関わる人なら一度は見ておきたい展覧会、料理は器があって完成するもの、その料理を惹き立てるのは、白磁、白釉陶に優る物はないと思う。


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曽我蕭白「雲龍図」

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 先日行って来た、東京国立博物館で開催中の「ボストン美術館 日本美術の至宝」展、これを観ていてどうしても気になる作者がいた、その名は曽我蕭白(そがしょうはく)(1730~1781)江戸時代中期に活躍した絵師だ。人物や対象の細密描写と鬼気迫る異様な構図は日本人離れしていて、一度見たら忘れられないもの、名前はもちろん知っていたが、その特異な作風に興味を覚えあらためて調べてみた。

 京都で商人の家に生れたとされるが異説もあり、資料が少なく詳しい事はわからない、伊勢や京都に作品が多く残され、両方の地を中心に活躍していたと推測される、作風は自由奔放で他の流派に属せず、時に奇怪で見る人間を不安にさせる。「狩野派」が描く絵画が正統でアカデミックな、ニーチェが言う「アポロ的」なものとすれば、それとは正反対な創造、陶酔型の「ディオニソス的」な芸術家だった、数々の奇行から同時代人からは特異な人間と見られ、自らも「狂人」と名乗っていた。
 「恐ろしく腕の立つ絵描きだが、変人で絵も不気味、気分が乗れば描いてもらえるが、機嫌が悪いとどんなに金を積んでも描かない奴」
 おそらくはこんな評判が行き渡っていたのだろう、その伝説から生前から蕭白を名乗る「贋者」がいたらしい(笑)、電話もTVもインターネットも無かった時代だ、本人かどうか確認するのは絵を描かせるしかない、それでも気分が乗らないふりをして描かないでいればしばらくはバレなかったし、周りが疑り始めたら逃げ出せば済んだ(笑)。

 蕭白と運命的に対比されるのが伊藤若冲(1716~1800)で、同じく京都の商家に生れる。家業を継ぐも商売を嫌い家督を弟に譲って40歳で隠居、以降細密な花鳥画ばかりを描き続ける、変人ぶりでは蕭白に引けを取らないが、描いた絵はより正統的だ。
 蕭白も若冲も生前は人気作家だったが、その後日本では一時忘れられた存在だったとされる、再評価されるきっかけは、明治の開国以降外国人に人気で、彼等が熱心に収集を始め、やがてコレクションとして公開される様になってからだ。これは現代の日本のアニメが欧米で高く評価されているのに似ている、特に蕭白の絵は「劇画調」なので、外国人にも訴えるものが大きかったと思われる。
 蕭白を知りたければ、現在開催中の展覧会を観る事をお薦めしたい、とくに巨大な「雲龍図」は必見だ。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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