最後の晩餐にはまだ早い


青山「ラチュレ」

 今年のフランス料理店訪問は、青山学院大学近くに昨年8月にオーポンした「ラチュレ(LATURE)」からスタートする事になった。
 料理長は1982年生れの室田拓人氏、「タテル・ヨシノ」を経て渋谷「deco」料理長に就任、同店閉店後に昨年独立開業した。狩猟免許を取得し自ら食材狩猟に努める等、ジビエ料理を最も得意としている。
 「タテル・ヨシノ」出身者なら、和歌山「オテル・ド・ヨシノ」の手島料理長の同門後輩にあたり、新橋「スブリム」の加藤料理長とは年齢も同じだ。「deco」時代から評判は聞いていたが、店の場所が家や職場から遠く、なかなか行く機会がなかった。現在は平日昼に動けるので、今回友人からの誘いもあり、新年開業一日目のランチタイムに初訪問する事が出来た。

 店の場所は青山学院敷地に沿った道にある、同じ通りには老舗の「ラ・ブランシュ」や「ポンテ・ベッキオ」、近くには「モノリス」もあるグルメストリート。一昔前は「大学の近くにはいいフレンチ&イタリアンがある」とも云われた、学生は無理だが教職員や卒業生が利用しやすいのが大きかったと思うが、今はどうなのだろう?
 店は地下一階、「スブリム」より深く掘ってある店舗(笑)。大きな木のドアを開けるとすぐ店内になるが、そんなに大きな店ではない、テーブルとカウンターで20席位、この日は平日昼ながらほぼ満席の盛況で、オープンキッチン前のカウンターに座らせてもらった。
 ランチメニューは、税別2,200円と4,800円の2種類で、あらかじめ後者をお願いしていた、当日の料理は以下のとおり、

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・鹿のブーダンノワールのマカロン、下に敷いたのは鹿の毛皮

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・キジバトのムース、下にブールノワゼットの板

・鯖と柿のマリネ、柿のヴィネグレット、イタリアンパセリソース(画像失敗しました)

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・雉のバロティーヌ、イチジクのコンフィチュール、黒ドライイチジク

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・バゲット、鳥の形の木製バターナイフ

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・蝦夷鹿のグランヴヌール、牛蒡、蓮根

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・鹿に合わせ選んでもらった赤は、仏南西部のマディラン‘DOMAINE CAPMARTIN2011’

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・オペラ、ミントのグラス

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・エスプレッソ

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・フィナンシェ

 まず料理全体の印象は、細部まで注意を払い楷書的で分かり易く、いい素材を使った丁寧な料理だなと思った。
 料理人は自分の本分はジビエも含めた肉料理である事を自覚しているのだろう、雉のバロティーヌの後は魚かな?と思ったが、小さな魚切り身のポワレ等を出す事なく、鹿肉が大き目のポーションで出て来た、このやり方は賛成、その鹿肉の状態がとても良かった。新年開業一日目でこの状態にするのは、年末に仕入れて寝かせていたか、業者からいい状態の物が前日入荷したかのどちらかだが、いずれにしても仕入業者との良好なパイプがあるのだと思う、勿論それを的確に調理する感覚があるからだが、古典的ソースは現代的に軽くなり古臭さが全然ない。
 美人パティシェール作のデセールも、見かけ綺麗で感覚も現代的だ、これから経験を積めばさらに良くなって行くと思う。
 あえて細かい事を云ってしまうと、鯖マリネの皿が前後の繋がりから味も盛付も少し異質に感じたのと、雉のバロティーヌが冷やし過ぎで肉の旨味がよく判らなかったのは、少し残念だったか。
 料理長以下スタッフは皆若い、約20席に対しこの日はサービス兼任も含めて6名、人材不足の東京では手厚い体制だし、数だけでなく技量も向上心もあるチーム力を感じた、これから時間を経て、良い方向へ進化して行くだろう事は予想出来る。

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 最後に室田料理長と話す事が出来たが、料理そのままで、誠実で真面目さが感じられ実直な好青年と云う印象。意外だがフランス等海外での勤務経験はないとの事だ、それでもこれだけ本格的な料理を作るのは、日本の調理教育のメソッドが優秀なのに加え、実体験でもいい指導を受けて来たのだろう、勿論本人のやる気が何より重要だが。
 今は角を立てた綺麗な楷書だが、これから経験を積んで、上手く崩れて洒脱な行書、草書をどう書いて行くか期待が持てると思う、最初から少し崩れ気味の「スブリム」加藤料理長とは好対照で、いいライヴァルだと思った(笑)。
 こうして正攻法な古典をベースにした料理で勝負する若者が出て来たのは、クラシックファンには心強い(笑)、彼の本領はオートクチュールな狩猟したジビエ料理だと思うので、それを体験するために夜にまた訪れたい店だ。
 2017年フレンチ行脚もいいスタートになったと思う(笑)。
 

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新富町「ビストロ・シンバ」

 「忘年会をやりましょう、美女も呼びます」、この言葉に乗ってしまった(笑)、場所は銀座1丁目の「ビストロ・シンバ」、去年9月にオープンして以来、瞬く間に人気店になり、今では「予約の取れない店クラブ」に仲間入り、以前から行きたいと思っていたのだが、ランチ営業をしていない事もあり、なかなか訪れる機会がなかった、今回友人からの誘いがあり、念願の初訪問を果たした。
 店は有楽町線の新富町駅が一番近いが、私は日比谷線の八丁堀駅から歩き、夜だった事もあり、予想どおり道に迷ってしまった(笑)、計3人に道を訊きようやく店に辿り着いた。

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 以前は有名イタリアンの居抜き店舗と聞いたが、最近この八丁堀~新富町~築地周辺にフレンチ、イタリアンの新店が続いてオープンしている、銀座にも近くこれから注目されるエリアになると思う。
 ドアを開け店内に入いるが、想像していたのより小体な店内、テーブルが16で、カウンター4の計20席、ここからそう離れていない「メゾン・ミッシェル」より少し広い位か、店名の「Simba」とはスワヒリ語で「ライオン」の意味だったと思う。
 料理長は菊地佑自氏、フランスで約十年働いた実績があり、札幌「プロヴァンサル・キムラ」の木村料理長と同職場だった事や、パリ北駅近くにあるブルターニュ料理の人気店「シェ・ミッシェル」の厨房にも居たと聞く。

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 料理はおまかせメニューもあるが、この日はカルトで行こうと、黒板から選んだのは以下のとおり、ただ結果から云うとこれで4人分は多かった(笑)。

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・セコガニのフラン、セロリと赤蕪のピュレ

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・石川真サバ、根菜サラダ仕立て、甘エビ

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・店から提案があった白ワイン4種、選んだのは右端のスペインリオハで、集まったメンバーに合わせて(笑)、なかなか個性的な味わい。

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・鹿、フォアグラ、洋なしのテリーヌ

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・スミイカ、オーストラリアグリーンアスパラガス

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・北海道白子、季節のキノコ、ゴボウ香草バター

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・山うずらのロースト

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・雷鳥、フォアグラ、ファルシ

 事前情報から「肉ビストロ」みたいなイメージを勝手に抱いていたが、魚介を使ったアミューズ、鯖と海老、スミイカ、白子の料理はどれも秀逸、日本人料理人がフランスで重宝がられるのも、魚介類の取り扱いに秀でているのが大きい、これは先祖から引き継いだ魚食いのDNAが身体にあるからだと思う(笑)。特にスミイカとアスパラ、白子とゴボウを合わせた料理は、火入れ、味付け共に抜群でもう一度食べたい料理。
 鹿肉テリーヌとパテ・ド・カンパーニュは優しい味わい、添えられた野菜のピクルスも美味。ペルドロー(山うずら)はおそらくルージュだと思うが、繊細な中にも力強さを感じる肉質で、この日最も印象に残った料理だった。
 最後の雷鳥の頃になるともうお腹一杯で、味の記憶が薄れてしまい、もう少し平常心で食べれば充分美味しいと思った筈だ(笑)。
 肉食美女が奮闘してくれたおかげで、最後まで辿り着いたが、4人ではもう少し注文を減らした方がいいかも知れない、甘党の私がデセールを食べたいと思わなかった位(笑)。
 これだけ食べて「支払いはこの位では?」と想定した金額より安かった、これなら人気出てしまうのはわかる(笑)。

 「メゾン・ミッシェル」の記事にも書いたが、パリ北駅近くにある「シェ・ミッシェル」で働いた日本人は何人もいる、ただ直系と云うか日本に帰って同傾向の料理を出しているのは、此処と「メゾン・ミッシェル」と京都の「コム・シェ・ミッシェル」の3店だと聞く、たしかに「メゾン・ミッシェル」とは料理に共通点を感じる。あちらはランチ訪問だったので、客層が年齢高目に感じ、料理も少し彼・彼女達に合わせているかなと思ったが、これから両店共に本家を超える店になって欲しいものだ、次は京都も体験しに行かないといけない(笑)。
 約一名体調万全でなかったが、美女達との忘年会は夜遅くまで続き、私も久しぶりに終電乗車になってしまった(笑)。心配していたが途中やはり寝落ちしたみたいで失礼しました、夜はすっかり弱くなりましたが、これに懲りずまたお付き合いください。
 
 年内の単独店記事はこれで終了し、次回・次々回は年末恒例の「今年印象に残った店」を料理編、デザート&スイーツ編に分けて記事にします。


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六本木「トレフ・ミヤモト」(2016年12月)

 一度訪れてブログ記事にした後、「また行ってみたい」と思いながら、それが果たせない店が幾つかある。仕事を辞めてからは、レストラン行は平日ランチが増えたので、平日ランチ営業をしていない店や一人では訪れ難い店等は、どうしても後回しになってしまう。
 約2年半前に訪れた六本木「トレフ・ミヤモト」もその一店で、宮本料理長の王道直球フレンチと、バブル景気以降の東京で生き抜いた?貴重な体験談にも得る処あったので、もう一度行きたいと思いながら叶わないで居た、今回友人からの誘いがあったので、ようやく再訪問する事が出来た。

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 前回は夜だったが今回は昼利用の土曜日、店前にある出雲大社東京分祠をお参りしようと思ったが、階段がキツそうなので、その下で良縁をお願いする事で省略(笑)。
 店はテラス席があるので、フランス式に夏場は此処で食事するのもいいと思う、以前11月に訪れたフランス・リヨンで、ストーブ出したテラス席で、厚いコートを着てステーキ食っているフランス人を見たが、あれ日本人になかなか真似出来ない(笑)。
 ドアを開けると迎えてくれるのはマダム、若々しく2年半前と見かけ全然変わっていない、私もそして後から客席に出て来た料理長もそれなりに年齢を重ねたが、歳を取らないマダムはフランス人に多く、この店はフランスそのままなのかも知れない(笑)。

 友人も到着し、始まった料理は以下のとおり、
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・アミューズ三種(ラタトィユのタルトレット、紅芯大根のマリネ&鶏胸肉の燻製、パテ・ド・カンパーニュ)

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・トウモロコシのクーリ、じゃがいものクレープ、キャビアルージュ、本海老

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・炙った氷見の寒ブリ、青海苔のソース、金沢野菜

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・スペシャリテのクロメスキ(フォアグラとトリュフのソースコロッケ)

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・スズキと白海老のポーピエット、ソースアルモリケーヌ 金時草、かぼちゃのフラン

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・京都産エトフェ鴨のロティ、パースニップ、トランペット茸、マコモダケ、アピオス

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・栗とチョコレートのクレームスフレ

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・ミニャルディーズ(塩キャラメルのマカロン、安納芋のプティガトー、ヌガーブラン、夏みかんの皮のコンフィ)

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・料理合わせて5種類出た、全て自家製(!)のパン

 まずは「手をかけた」アミューズで客の心を掴む。次のじゃがいもクレープの料理はモダンな料理デザインと野菜の旨さが際立つ。旬の寒ブリは青海苔を使い和的な皿だが、食べてみるとやはりこれはフレンチだと納得する。フォアグラとトリュフのコロッケは追加料金だが、この店へ来たらやはりこれを食べないと(笑)。
 続く魚料理も単純に切り身をポワレしたのではなく、相当手をかけていて、蠱惑的なソースが「これがフランス料理だ」と、思わず呟きたくなる(笑)。
 京都の鴨は最近他店でも使い始めているが、鳥インフルエンザにより輸入鳥類が制限される中で貴重な国産二本足、肉の旨味も感じるし、これから楽しみな食材だと思う、この料理もソースが魅力だ。
 そしてデセールはビストロではない、ガストロノミーレストランならでのア・ラ・ミニッツなスフレ、特に冬場はこうした熱いデセールは嬉しい。

 久しぶりに宮本氏の料理を味わってみて、以前に比べ味も盛付も、古典を底に敷きながらも、より現代的な感覚を加えていると感じた。後で本人が語ってくれたが、若い世代の料理人達とも積極的に交流し、お互いに刺激を得ているとの事で、これが料理に表れているのではないかと推測した。
 フランスでも古くから営業している名店では、時に若い料理長を抜擢する事で料理を新しくする工夫をするが、オーナーシェフで料理長を変えられない場合は、自分が変わるしかない(笑)、これは難しい事だが、宮本氏は過去の実績がありながらも、同じやり方を続けるのではなく、時代に合わせて「変容」している様に見えた。
 C・ダーウィンの名言「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない、唯一生き残るのは変化できる者である。」を思い出してしまった。

 店内は宮本夫妻が集めたアンティーク類が随所に飾ってあり、カトラリーやプレートも長く使われて来た物が多く、「今集めたばかりです」みたいな薄手な処がない。「日本料理は空間を買う、フランス料理は時間を買う」との言葉を聞いた事があるが、この店で流れるゆったりした時間はお金を払う価値がある。
 最後に仕事を終えた宮本氏と話したが、同行者のリクエストにより「マサイ族にフランス料理を食べさせて、殺されそうになった話」を、再度聞いてしまった、本人は思い出したくなくても、これ何度聞いても面白い(笑)。
 次回は「勝どきにあった、お化け屋敷的内装のフランス料理店『クラブ・ニュクス』で、本当に出た?幽霊の話」をしてくれるそうで、興味のある方はお知らせ下さい(笑)。
 宮本料理長、マダム、遅い時間まで美味しい料理と楽しい話をありがとうございました、次回はこんなに間をあけずに来たいと思います。


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赤坂「古屋オーガストロノム」(2016年12月)

 赤坂のフランス料理「古屋オーガストロノム」を初めて訪れたのは今年1月だが、12月初めに早くも5回目の訪問をする事になった。この頻度は何事にも飽き易く持続しない私にしては極めて異例(笑)、過去短くはなかった外食人生でもたぶん2店目だと思う。
 「どうしてそんなに通う、綺麗なマダムでも居るの?」と訊かれても(笑)、「古屋料理長の料理と自分の嗜好が合うから」としか答えようがない。不遜な言い方かも知れないが、私が今美味いと思う料理を知りたいのなら、まずはこの店へ行ってみてください(笑)。
 この日は身内の誕生日祝いをやろうとの話になり、ランチ場所を数店考えたのだが、結局この店に行き着いた、古屋氏には幾つか注文を出してしまったが、お手数かけました。
 平日ランチの席の取り易さや、値段のお得さに慣れてしまうと、サラリーマン時代の土日利用客にはもう戻れない(笑)。現在厨房が古屋氏一人、店内が石橋支配人一人の体制なので、席は全部埋めていないみたいだが、年末恒例の出版物「東京最高のレストラン」で「フレンチ注目店」に選ばれたばかりなので、これからが更に楽しみな店だ。

 まずは当日の料理を紹介したい。
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・モン=サンミッシェル産ムール貝を使った前菜三種(マリネ、ポワレ、スープ)

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・かるく火を入れた鳥取県産白イカと根菜のサラダ仕立て、徳島県産すだちのソース、イカスミのアクセント

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・白はスイス産CHÂTEAU LA BÂTIE2014

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・75度で 13分火入れした大分県産地鶏玉子“蘭王” のウッフアンムーレット、マルケ産トリュフ

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・石川産スズキのポワレ、香草のブールブラン、若布風味の手打ヌイユ

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・蝦夷鹿のロティ、レザンとソーテルヌのソース、 シヴェのシューファルシ

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・プレデセール(柿の黒ビールとアニスのコンポート、ペルノーのソルベ添え)

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・パッションフルーツのスフレ、グラススペキュロース

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・それの‘Joyeux anniversaire’バージョン
・エスプレッソ

 アミューズはこれから始まる料理全体の前奏曲の筈だが、どうにも「やっつけ」としか思えない物を出す店もある中、この店のアミューズは毎回本幕への期待を持たせる出来、特にスープが良かった。
 次の白イカ料理は和食的なセンスも感じるが、食べてみると和食ではない(笑)、イカの食感に合わせた酸味あるソースが印象的だ。続く古屋スペシャリテのウッフアンムーレットは鉄板の美味しさ。
 過去この店で魚料理は黄色いソースが多かったが、今回は初めての緑色ソース、スズキは大型の肉食魚で捕食活動も獰猛と聞く、その身は草食系の柔なソースでは合わない、個性ある香草系が冴えている、イタリア的な「パスタ」ではない「ヌイユ」もいい出来だった。
 肉は年末定番の蝦夷鹿、個体としては少し若かったか?端肉や内臓を使ったシューファルシが特徴的、俗な例えだが日本の中濃ソースみたいな(笑)、甘味あるソースは贅沢で深いが重くない、このソースこそ古屋料理の真骨頂だと思った。
 一人厨房の場合、「あらかじめ焼いたものを切って皿に載せる」的なデセールになりがちなのは仕方ないが、あえてスフレを出した処に、この料理人の「仕事力」みたいなものを感じた、焼上がり時間を逆算して材料を撹拌し焼きをセットする、当然他の料理を作りながらだから、一人厨房だと最もやりたくない作業(笑)、それでも文句なしの出来上がりだった。なお「スペキュロース」とは古屋氏が働いていたベルギー名産のクッキーで、仏ブルゴーニュ地方での名産菓子「パン・デピス」を入れたアイスみたいな面白い印象になる。メインデセール後のミニャルディーズ的な物をあえて出さないのも古屋式だ。

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・古屋料理長の「原点」、ベルギー・パリウにあったレストラン‘Au Gastronome’の写真等が置かれている。

 おそらく今年最後の訪問になると思うが、全5回どれも安定して破綻を感じさせない古典王道料理だった、それも昔ながらの油脂でもっさり重くするのではなく(笑)、極力現代に合わせ減らせるものは減らす工夫を感じる。
 今迄こうした料理は関西、それも和歌山か大阪上本町でないと味わえないと思っていただけに、この店を知ったのは今年一番の収穫だった。来年も続けて訪れたいが、今以上に人気が出て、一見客に喜ばれる様な、流行や見た目の新しさだけ追う料理に変わらない事を祈っている、古屋氏の性格ならそれはないと思いたいのだが。
 古屋料理長、前支配人で現在非常勤勤務?の秋葉氏、石橋支配人、一年間ありがとうございました、少々早いですが、良いXmasと実り多い新年を迎えられる事を願っています(笑)。


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稲荷町「キエチュード」(2016年11月)

 月一回位の間隔で御徒町~上野間にあるアメヤ横丁、通称「アメ横」へ出かける、主に珈琲豆を買いに行くためだが、ついでに近隣のランチ巡りをする事が多い、このブログで上野・御徒町のインド・ネパール料理や、とんかつ店が登場するのは、それが理由の一つだ(笑)。
 この日も豆を買いに行こうと思い、ランチは何処か?と考えたのだが、真っ先に頭に浮んだのは、ブログで何回か記事にした東上野の「ハリマ・ケバブ・ビリヤニ」、でもあそこではワンパターンなので(笑)、今回は違う店にしようと思い、其処から歩いてすぐのフランス料理「キエチュード」に決めた、一応事前に予約したのだが、結果ほぼ満席で正解だった。
 一人利用だったので、キッチン前のカウンター席に初めて座る、目の前には荒木料理長が居て作業が全て見える「かぶりつき」席だ(笑)。

 ランチメニューは税別1,500円と3,000円の2種類、事前にお願いすれば夜のメニュー(5,000円)も提供可との事だが、3,000円の方に決める、内容は以下のとおり、

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・猪肉のパテ・ド・カンパーニュ、黒ニンニクとマルムラード

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・白はブルゴーニュ、サン=ブリ

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・(たぶん)スタイルブレッドのバゲット

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・ハマチ、秋野菜、リーフサラダ、バーニャガウダ風

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・えびす鯛、ごぼう、ブロッコリー

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・赤はボルドー・メドックChateau Larose Trintaudon2012

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・オーストラリア産牛サガリのロティ、赤ワインソース、茸ソテー

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・栗とホワイトチョコレートのフォンダン、バニラのグラス、ビスケットのクランブル

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・コーヒー

 パテは一口サイズだが、猪練り肉の旨味が感じられる。サラダは上質な葉野菜にハマチの切り身を加え、ビネグレットにニンニクとアンショワのペーストで味わう、爽やかな一皿。
 七福神の恵比寿神が掲げている様な立派な赤い鯛だから、この名が付いたとされる「えびす鯛」の身の火通しも抜群、牛蒡のピュレと泡立てたバターソースが合っている。
 「サガリ肉」とは牛の横隔膜(ハラミ)からぶら下がっているのでこの名が付いた、米国では「ハンギング・テンダー」と呼ばれる部位、「柔らかい」「優しい」を意味する‘Tender’、噛み応えあるが堅すぎない赤身肉で旨味も感じる、赤ワインソースの酸味もいい。 デザートも良かった、フォンダン部分を割ると栗とチョコレートの香りが立つ、上質なバニラアイスと混ざると、定番の「あったか冷たい(ショーフロワ)」になる。
 ちなみに1,500円ランチの内容は、ハマチ&野菜と牛肉の皿、これにパンor炊込みバターライス、バニラアイス&コーヒーと、3,000円から引いた内容でかなりお得、それを知っているから、店内は年齢高めの女子会で盛り上がっている(笑)。
 4月以降、平日ランチ行脚が多くなったが、混んでいたのは1,000~2,000円のランチメニューの店で、それも「かつての乙女たち」の女子会が殆ど(笑)、店側とすれば利益は少ないが、店内が盛況ならスタッフの意気込みも高くなる、この辺りでどう折り合いをつけるかだろう。

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 「キエチュード」は昨年5月に開業したので、この地で一年半経過した事になる、東京でも本格的な横メシ系店が少ない地域なので、熊本出身の荒木氏は出店に不安もあっただろうと思う、でもこうして地域住人に支持されているのを見るのは嬉しい事だ。例え1,500円ランチでも、客の彼女達は次新しい客を連れて来てくれるかも知れない、そうやって客層が広がって行くのが一番大きいと思う、ガイドブックや口コミサイトを見て一回だけしか来ない客とは違う(笑)。
 現在は厨房にもう1人とサービスに1人の3人態勢みたいだが、見ていて能力高そうなスタッフなので、人材的には恵まれていると思う、今優秀な従業員は店にとって何にも代えがたい財産だ(笑)。
 
 人間は老いていく、体力も消化力もやがて落ちる、私自身で云えば最近夜に重い食事を摂ると、寝つきがあまりよくないし、翌朝にも響く気がする。今後外食は昼中心にと考えているのだが、「キエチュード」みたいに、昼間構えず普段着で訪れる事が出来、あまりマッチョではないライト感覚料理を提供してくれる店は、とてもありがたい。
 急激な少子高齢化が進む日本で、これからフランス料理店も高齢客への対応を本気で考える必要がありそうだ、それが店の生き残りにも繋がると思う。
 大きな窓から明るい陽光が差す店内での素敵なランチ、暫し老後への心配を忘れさせてくれる(笑)、気持ちのいい午後になった。

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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