最後の晩餐にはまだ早い


稲荷町「キエチュード」(2018年1月)

 年末年始で珈琲豆ストックがなくなり、安い専門店のあるアメ横に買いに行く事に。折角電車賃を払うからと、ついでに何処か近辺でランチと思ったのだが、この日は1月5日、築地を含め公設市場が年初開場する日なので、レストランは夜から営業開始する店が多かった。お馴染みのインド料理かラーメンかな?と思っていたら、「そうだ、たしかキエチュードが1月2日から開いていると、FBで周知していた」と閃いた、店のWEBページでもそう説明があったので、前日に予約をして向かった、2日から開いている理由は行って理解した。
 地下鉄の上野駅から歩いて行ったのだが、浅草通りを直進し下谷神社の大鳥居のある場所で右折すると、目の前が下谷神社で参拝客が並んでいる、「善男善女」と云うが、日本人は正月だけは信心深く、改まった気持ちになる(笑)。そして参拝後に至近距離のキエチュードへ来るのだ、あらかじめ予約している客、予約なしの飛び込みで来る人もいる。「神社の近くには(飲食の)名店がある」と聞いた事あるが、こんな理由もあった(笑)。

        ‪180111-1
 店の扉にはリースみたいな正月飾りが(笑)。

     180111-2.jpg
 ランチ一番乗りになったが、参拝客から店内が見えないようカーテンが引かれていた、店内が明るいので画像の写り映えを気にするブロガーには嬉しい(笑)。荒木料理長に挨拶し、カウンター席に座らせてもらう。開店して2年半経つが、木部を多用した店内は清掃・手入れが行き届いて、華美ではないが落ち着いた空間になっている、この後満席になった。
 ランチメニューは1,500円と3,000円の2種(税別)、予約時に後者の方でお願いしていた。

        180111-3.jpg
・Domaine Chêne – Mâcon-La Roche Vineuse Blanc 2016(グラス1,000円)

     180111-4.jpg
・カリフラワーのポタージュ、アニスの香りと炒ったパン粉

        180111-5.jpg
・バゲット(スタイルブレッドだと思う)

     180111-6.jpg
・生ハムと鎌倉野菜のサラダ、下にビーツのピュレ

        180111-7.jpg
・淡路産尾長鯛、黄人参のピュレ、浅利出汁のエミルジョン、柚子の香り

     180111-8.jpg
・ハンガリー産鴨胸肉のロースト、ごぼうのトマト煮込み、ソースドゥミグラス、北アフリカのスパイス

     180111-9.jpg
・チョコレートフォンダン(右 は割った後)、ラズベリーソース、ピスタチオのムース

        180111-10.jpg
・コーヒー

 1月5日なので使える食材は限られるが、それでもこの値段で上手くまとめているなと感心する。今野菜の値段が高いので、多く使ってもコストダウンにはならないが(笑)、以前から仕入れている鎌倉野菜を多用し、印象残る料理にしている。
 寒い季節に温かいポタージュは嬉しい、サラダは何気ないものだが、素材の良さが伝わって来る。
 尾長鯛は別名浜鯛とも呼び、和食では高級食材だが、日本料理店では扱わない小さいサイズの物を使うみたいで、蒸し焼きにした上品な上身に、黄色人参の甘味と香りがいいマッチをしていた。
 鴨ローストは安定の美味しさ、コスト面で現在ハンガリー産を使っているそうだが、不健康な柔らかさでなく(笑)、適度な歯応えがあり肉の旨味もある、ソースに最近他店では殆ど使わなくなったドゥミグラスを使っているが、手間をかけたソースなのは分かった。
 荒木氏はお酒も好きだが甘味も大好きだそうで、デセールは安定して美味しい、この日のフォンダンも秀逸だった。

 2015年5月に昼1,500&3,000円、夜でも5,000円と云う、結構思い切った価格帯でオープンしたこの店だが、食材料が値上がりする中で、今迄一度も値上げしていないのは立派、これで利益を上げ従業員(現在4人と聞く)に賃金を払う訳だから、メニューを組むのは結構難しい筈だが、料理に「ギリギリでやっています」みたいな悲壮感は漂わない(笑)、荒木氏は満席になってもいつもどおり淡々と店を纏めて進行している。
 料理長は高級店の厨房にも居たので、今の東京フレンチ高級店のスタンダードである、昼6,000円、夜12,000円前後のメニューも問題なく作れる筈だが、上野稲荷町と云う地域性を考えこの値段で続けている、下町人間の私としては賛成したく嬉しい事でもある。此処とか御茶ノ水の「ビストロ・ヌー」(此処も神田明神近く)、神楽坂「ビズ」(八幡神社&赤城神社あり)のランチなら、年金生活になっても通えそうだ(笑)。
 前回は荒木氏が店内サービスも兼務していたが、スタッフが替わり荒木氏は厨房メインに戻った、若い女性がサービスを担当するようになって、店の雰囲気が柔らかくなったと感じた。男性のサービスが柔らかい雰囲気を出すのは難しく時間がかかるが、女性は多くの場合持って生まれたもので柔らかさが出せるから有利だ(笑)、人材不足に苦しむ東京の飲食業界だが、救いは女性達だと思う。
 ワインの酔いもあり気持ち良くなって、帰りに下谷神社を参拝する予定をすっかり忘れたが(笑)、新年早々でも、この値段でレベルの高い料理が味わえたのは、今年が良い年である吉兆だと思いたい。
 この後新年のアメ横へ向かったが、色々と面白かったので次回の記事にするつもりでいる。
 

  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

代官山「レクテ(Recte)」(2017年12月)

 私の好みは相当偏っているので、あまり参考にはならないし、それよりまず訊かれないと思うが、もし「ジャンルを問わず、今年初めて行った店の中から一つだけ選べ」と云われたら、代官山と恵比寿の中間にあるフランス料理「レクテ」と答えると思う。
 旧「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」を約一年かけて改装、店名も変更しリニューアルオープンしたこの店だが、前回利用時に佐々木料理長の豊富な経験を感じさせる、安定感ある料理に瞠目、「近いうちにまた行きたい」と思っていた処に、関西から食通友人がやって来る事になり、私が書いた記事でこの店に興味を持ったらしく、意見が合って昼に再訪問する事になった。
 「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」は、現「ア・ニュ・ルトゥルヴェ・ヴー」の下野氏、「ル・スプートニク」の高橋氏が歴代の料理長、更にこの場所はそれ以前には「オ・コション・ローズ」として、井上料理長が名を馳せた由緒ある場所、友人はその3人の料理を体験しているので、どんな感想を云うのかその楽しみもあった(笑)。
 JR恵比寿駅で友人夫妻と待ち合せ、西口のケンタッキーフライドチキンの角から、雑多な飲食店街を抜け代官山方面へ向かう、日曜昼のこの界隈は「夢破れて山河あり」みたいな雰囲気も漂っている(笑)。
 店が入っているのは建物の2階、階段を上がると店名表示の一切ない大きな扉、開けるとすぐ客席になる、齊藤支配人とサービス&ソムリエの辻氏に挨拶すると、予想どおり前回同様奥の個室に案内される(笑)。

     171224-1.jpg
 外は冷たい風が吹いていたが、個室内は明るい光が差し込み、サンルームみたいな穏やかさ、支配人が注いでくれたシャンパーニュで乾杯し昼餉が始まる。

        171224-2.jpg
・三野農園牛蒡のスープ(中に今治産ワタリガニの身)

     171224-3.jpg
・蝦夷鹿のパテ

        171224-4.jpg
・音更町庄司農園はるきらりとライ麦の一品(パン)

     171224-5.jpg
・松島産牡蠣とポワローを様々な火入れで

        171224-6.jpg
・函館産平目と山内人参

     171224-7.jpg
・白糠産蝦夷鹿のシンタマ

        171224-8.jpg
・コーヒー、紅茶、ハーブティーのメニュー

     171224-9.jpg
・スフレショコラとプラリネアイス

        171224-10.jpg
・コーヒー(ニカラグア エル・リモンシージョ農園 パカマラナチュラル)

     171224-11.jpg
・ミニャルディーズ(カヌレ、フィナンシェ、黒糖のショコラきな粉)

        171224-12.jpg
・辻ソムリエ考案のドリンクペアリング(良かったです、あとは「フロリレージュ」みたいに、プレゼンに工夫があるともっといい。)

 まずアミューズがスープで始まるのは、「手で摘まんで」のフィンガーフードよりホッとする、「それが古い」と云われそうだが、私は旧世代なのだろう(笑)。
 蝦夷鹿のパテは量がしっかりあり、味も割と食べ易くしてあった、添えてあるマルメロのコンフィチュールが効いている。牡蠣料理はポワロー葱を多彩な調理法で添えてあり面白い、クラシックな様でいて何処かにPARISのエスプリを感じさせる、佐々木料理ならでは。
 前回の魚料理も旨いと思ったが、今回も秀逸で次の肉料理のために味わいを抑えているが、それでいて印象に残るもの、秋田産山内(さんない)人参の味がいい。
 肉料理は蝦夷鹿の内モモ肉で火入れが抜群、最近では「ル・スプートニク」と双璧か。佐々木氏は洞爺湖の高級ホテルで働いていたので、今でも北海道の生産者や猟師と繋がりがあるそうで、この鹿も銃痕、血抜きの状態と保管が申し分ない個体との事。
 洞爺湖時代から一緒に働いているパティシェールが作ったデセールとミニャルディーズもよかった、チョコレート、バター等原価の高い素材を沢山使っている(笑)。選べる食後ドリンクのアイデアも評価したい。
 これだけ充実した内容なのに、後で支払い額を見ると申し訳ない位に安い、思わず「星なんて付かないで良かった」と口走りそうになるが、スタッフ達には勿論云えない(笑)。客人夫妻もきっと満足された事と思う。
 1973年生れの佐々木氏、同年生まれの「古屋オーガストロノム」の古屋氏と、どうしても比較したくなるのだが、重厚でいながら柔らかさもあり、根底にはレジオン(地方)の骨太さを感じる古屋料理に対して、軽快でいながら芯の強さがあり、国産食材を使いながらPARISの味も感じさせる佐々木料理。古屋氏がベートーヴェンなら佐々木氏はモーツァルト、古屋氏が宮本武蔵なら、佐々木氏は名前のとおり佐々木小次郎(笑)、何かそんな違いを感じる、共通しているのはどの料理も安定していて、不出来な皿が無い事。欧州戦線の最前線で戦って来た二人の料理には、静かな凄みとブレない普遍性がある。

 食後、席に挨拶に来た佐々木氏、3年間料理長だったPARIS時代の話、日本へ帰って来た動機、食材の話などで盛り上がってしまい、友人夫妻を交え気が付いたら、3時を過ぎ4時近くになっていて、スタッフの休憩時間まで浸食してしまったみたいで、すいませんでした(笑)。
 色々面白い話も聞けたが、此処に書くと差し障りありそうなので、興味のある人は是非一度訪ねて聞いてください。料理は間違いないレベル、スタッフ達の動きや表情も前回より硬さが取れ、居心地が良くなったと思う。
 佐々木料理長、齊藤支配人、辻セルヴール、遅くまでありがとうございました。
 
 年内の単独店記事は今回で最後になり、次回・次々回は年末恒例の「今年印象に残った店」を記事にします。 


  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

御徒町「L'ambiance douce」

 「L'ambiance douce」、仏語をカタカナにするのは難しく、先に言ったもの勝ちみたいな処があるが、「ランビエンス・ドゥース」で「心地よい雰囲気」とでも訳すべきか?
 今年11月に御徒町の昭和通り近くにオープンしたこの店、知ったのはFB友達のウォールからで、その中にあった「料理人はビストロ・アバ出身」の言葉に反応してしまった。
 地下鉄本郷三丁目駅とJR水道橋駅の中間程の場所にある「ビストロ・アバ」は、私が長く勤務地だった場所から近く、昼に数回訪れた。予約を取らないランチは1,000~1,200円位で、特にスペシャリテの「豚肩肉のロースト」は、半端でない量で食べる人間を圧倒した(笑)。
 そのアバが主人の体調不良により閉店したと聞いたのは、今年初めだったと思う、もうあのキャリテプリなランチを味わえないと寂しく思っていたが、最近になって夜だけ営業再開したとの情報を得た、いずれランチも再開をと期待していたが、働いて居た人が店を出しランチもやっているなら、これは行ってみようと思った、場所も御徒町なら私の活動エリアだ(笑)。
 地下鉄日比谷線仲御徒町駅3番出口を出ると、目の前が有名ディスカウントストアの「多慶屋」だが、そこから上野駅方面へ昭和通りを進むと、右側に「上野イーストタワー」と云う新しく出来たビルがある、その角を右折するとすぐの場所、赤い塗装のファサードが目立つので「たぶんあれだろう」と思ったが、やはりそうだった(笑)。

        171218-1.jpg
 開店時間(11時半)少し前に着いたので、店前で待って居たら、中から若い男性が出てきて「OPEN」の札を出したので入店する、厨房正面のカウンター席に座った、確認はしてないが、おそらく「アバ」同様にランチは予約不可だろう。

        171218-2.jpg
 ランチメニューは5種類で全て税込1,000円、サラダと自家製パンが付く、キッシュはパンではなくポタージュとの事。やはり注文は「豚肩ロースのグリエ ジャガイモのピューレ添え」で行こうと即決した(笑)、オープン当初はコーヒーとデザートが別料金であったみたいだが、今はランチタイムでの提供はなくなった、客回転を早くしたいのだと思う。

     171218-3.jpg
 カウンター席頭上には黒板が掲げてあり、夜のカルトが並べて書いてある、これは「アバ」と同じだ。

        171218-4.jpg
 水ではなく冷茶なのがフランス料理店では珍しい、微かにジャスミン茶みたいな香りがする。

     171218-5.jpg
 まずはサラダ、サニーレタス、トマト、キャロットラペにヴィネグレットの標準的なもの。

     171218-6.jpg
 自家製パン、容れ物も含めて「アバ」で出していたパンに似ている。

        171218-7.jpg
 カトラリー、ナイフはブラジル製のTRAMONTINA。

     171218-8.jpg
 そしてオーバル皿に乗って来たのが「豚肩ロースのグリエ」、「アバ」程は暴力的な量でないが十分大きい、カウンターから見えたが、あらかじめ塊で豚肉をローストしてあり、注文に応じて切り分けグリルパンで温めている、やり方はアバと同じだと思う。
 あっさりしたトマトソースも似ている、ジャガイモピューレはこちらの店の方が好み。

        171218-9.jpg
 肉の断面、ロゼ色に綺麗に火が入っている。焼き上りに無造作に振ったように見えた塩の加減もジャストだった。「美味しさはスピードだ」との言葉があるが、これだけの肉塊は早く食べないと脂が冷えて美味しくなくなる、アクセルを踏んで一気喰いしてしまった(笑)。
 これで千円ポッキリは格安、本郷と御徒町では客層は違うが、この店も昼は満席空き待ちになると思う、狙うなら開店時間直後だ(笑)。
 店内は若いイケメン系男性二人、WEB情報ではオーナー料理人は、大卒後証券会社に就職しながらも、料理人になりたいと転職。六本木「ブラッセリー・ヴァトゥ」、丸ノ内「レゾナンス」を経て、本郷「アバ」でシャルキュトリー(食肉加工品)の技術を習得とあり、なかなか変わり種だが面白いと思う。
 アメ横や多慶屋にはよく来るので、このランチならリピート確実、何時か夜にも来てみたいものだ。

     171218-10.jpg
 食後はコーヒーが飲みたくなったので、昭和通りを渡ったドトールでコーヒーとカボチャタルトを注文してしまった、タルトは予想以上に良かったが、明らかに食べ過ぎでした(笑)。この日も2店合計で1,520円、東京のランチは本当に安いと思う、約11ユーロだがPARISで11ユーロ払っても、これだけ充実したランチはまずない(笑)。


  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

外苑前「AIX:S(エックス)」

 10月に札幌のフランス料理「プロヴァンサル・キムラ」へ行った時、木村料理長から「僕のフランス時代の同僚だった山下君が東京で店をオープンしたので、今度行ってみて下さい」と云われていた、山下氏と云えば半蔵門の「ARGO」で長く料理長を務めていた料理人、私はかなり前に訪れた事あるが、緑深い皇居を望める窓外の眺望と、ピエール・ガニェール譲りのセンスある料理が印象的だった。今年独立したのは知っていて、何時か行くつもりではいたが、木村氏の推しなら真っ先に実行しようと、友人を誘って平日ランチタイムに訪れる事にした。

        171207-1.jpg
 店の名前は「AIX:S(エックス)」、南仏のエクス・アン・プロヴァンスから付けたと聞く、木村・山下両氏が同じ店で働いた街だ。場所は外苑前で、地下鉄外苑前駅からラグビー場や神宮球場へ向かう道を進み、左側の酒屋の角で左折すると、「フロリレージュ」のある熊野神社方面へ出るが、左折しないで直進してすぐのビル地下になる。
 店内は予想以上に広い空間で、ドライエリアからの採光もあり、天井が高いので地下店舗にありがちな圧迫感はない。入口近くはバーカウンターみたいな席になっていて食事も可能、一番奥が厨房でその間に椅子席が並ぶ、カウンター含めて60席あるそうで、ウェディング等のバンケットも想定している。
 ランチメニューは3,700円(税別、昼はサービス料無)と昼夜共通の5,800円、他にビジネスランチで1,200円もあるが、これは席予約時だと不可みたいだ。メニュー内容を見て、せっかく遠路?を来た事もあり、5,800円の方でお願いする事にした。

     171207-2.jpg
・アミューズ3種(右から:トマトのサブレ、グジェール、ラタトゥイユ)

        171207-3.jpg
・ブランダードのクロケット

     171207-4.jpg
・サーモンの燻製・モンブラン仕立て

     171207-5.jpg
・人参のスープと抹茶パスタ(中に沈んでいる)

        171207-6.jpg
・真鱈のポワレ・ソースモルネー 半熟卵と共に

     171207-7.jpg
・鴨のロティ・ポムパイアソン添え 粒マスタードソース

        171207-8.jpg
・茸とトリュフのリゾット

    171207-9.jpg
・自家製パン3種

        171207-10.jpg
・フルムーン AIX:S風(アールグレーのゼリー、シナモンパウダー)

     171207-11.jpg
・蕎麦とマロンのコンポジション

        171207-12.jpg
・トミオ・フクダ・ドライオンツリー(コーヒー)

 料理はやはり南仏を感じさせる、まず色合いが鮮やかだ、特に前菜のサーモンは店のスペシャリテで、ソーモンフュメの上に紫芋のピュレ、見かけでドキリとさせるが、味はバランスが取れていて美味しい。南仏を代表する料理「ブランタード」をコロッケにしたのは面白く、食べても美味だった。
 真鱈はこの日一番印象に残った料理、見た目は地味だが何処か懐かしい味で美味しい、ソースを最後まで舐めたくなった(笑)、鴨の調理は手慣れたもので、下に敷いたジャガイモのパイアソンの作りと味が「ああ、これフランスだ」と、呟きたくなる(笑)。フランス料理店でリゾットを出すのは全国的に流行だが、外国人客に「日本」をアピールする意味もあると思う、山下氏はガルニにするのではなく、和食みたいに締めの料理として独立させている、味わいも良く日本人で嫌いな人はいないと思う(笑)。
 デセールもいい、一品目の「フルムーン」とは、高齢介護施設?と料理長が共同で作ったものとの事で、「わらびもち」みたいな食感、歯が悪くても食べられる(笑)。二品目のモンブランも秀逸だった、食事中の自家製パン3種も美味しい。
 コーヒーはブラジルで日本人が栽培している、樹上で実に成ったまま熟成乾燥させた珈琲豆を使う、まろやかで軽い味わいながら奥が深い、茶なら玉露みたいな感じだ。
 全体的には、高級食材は使わずとも随所にフランスを感じさせて、上手く手堅くまとめていると云う印象、店のWEBページでも、
「高級フレンチレストランの味を、若い人たちにもぜひ味わって欲しい。その想いから、この店をつくりました。(中略)フレンチはハードルが高いと思わずに、どうぞ、お気軽にご来店ください。」とあり、少ない客席でギリギリのガストロノミーを狙うのではなく、カップルやグループ、一人でも団体対応も可能、色々な場面で使えそうなフレキシビリティがある。
 トイレブースが男女別な事もあり、特に女子会等には最適だと思った、女性は男性の使用後や、自分が使った後に男性が個室を使うのを気にする人は居る。
 サービス専任はいなくて、料理人が5人で客席も兼務する、かしこまらずカジュアルだが、気持ちいい対応だった。

 食後、挨拶に来た山下敦司料理長、1970年生れとの事だが、実際の年齢より若いと感じる、フランスで働いたのは「クロ・ド・ラ・ヴィオレット」「ディヴェレック」オーベルジュ・ド・レリダン」「トロワグロ」「ピエール・ガニェール(PARIS時代)」と、錚々たる名店ばかり、帰国後は料理学校の「ル・コルドン・ブルー東京」で講師も務めた。
 料理の話から、フランスの料理人とフランス人女性の話題で盛り上がったが、後者は実践が伴わないので、適当に話を合わせただけです(笑)。
 外苑前から北参道駅へかけての北青山は、ここ数年来飲食店のオープンが続いている、私が近くに勤めていたら、ボーナス時には「フロリレージュ」、月一回の集まりには「AIX:S」、そんな使い方をしたいと思う筈だ(笑)、またいい店が出来た。


  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

御茶ノ水「ビストロ・ヌー」(2017年11月) 

 秋葉原への買い物ついでに、ランチタイムに寄ったのは、今年6月以来の「ビストロ・ヌー」、磯貝氏が夫妻で店を回すようになってから2回目だ。
 11時半の開店直後に入店、カウンターの端席に座るのはいつもと同じ(笑)。サービスを担当する奥様が、前回より幾らかふっくらした様子で、訊いたら来年5月に第2子誕生予定との事、少子高齢化時代に多子育児に挑もうとするのは、この国の将来を考えるといい事だが、奥様産休中の代替労働力は大丈夫?と、つい余計な心配をしてしまう、まあ過去にも磯貝氏一人で営業した日もあったので、たぶん何とかするのでしょう(笑)。

        171204-1.jpg
・この日の黒板メニュー
 前回と変わらずプリフィクスのランチメニューは、前菜+メイン+パン+コーヒーで1,250円(税別)、料理によってはプラス料金がある、近隣のサラリーマン&OLさん向けに、昼休み1時間で終わって帰れるのを考慮している。私も長くサラリーマンだったので分かるが、ランチは時間との戦いだ(笑)、特に高層ビルで働いていると、エレベーターに乗っている時間も計算しないといけない。
 今の私みたいに時間のある人向けに、2,500円(メイン1皿)と3,500円(メイン2皿)の昼コースがあり、私はいつも前者をお願いしている。選べるメイン料理は5種類、仔羊(+1,000円)か蝦夷鹿(同)か、どちらにしようか?と迷っていたら、磯貝料理長が「他にフランス産の鶉も+1,000円で出来ます、あと青首(鴨)もあります+1,750円ですが」と、夜のカルトからの料理も提案してくれた。
 鴨にも惹かれたが値段(財布)も考え(笑)、フランスから鳥類輸入解禁され、入荷したばかりと聞く、ブルターニュ産鶉でお願いする事にした。

     171204-2.jpg
・自家製パン

        171204-3.jpg
・解禁になったばかりの今年のボジョレーヌーボー、PHILIPPE PACALET(グラス950円)、過去飲んだヌーボーの中では一位か二位に美味しかった、ヌーボーらしくない深い味わい(笑)。

     171204-4.jpg
・スープ・ド・ポワソン

     171204-5.jpg
・ホウボウのカルパッチョ、ビーツとカリフラワー

        171204-6.jpg
・季節茸のフリカッセ、発酵マッシュルームの出汁、温度玉子

     171204-7.jpg
・ブルターニュ産ウズラのロティ、彩り野菜のソテー

        171204-8.jpg
・「ビストロ・ヌー」風タルトタタン、マスカルポーネのアイスクリーム

        171204-9.jpg
・ショコラマカロン

 スープ・ド・ポワソンは以前にもこの店で体験したが、品が落ちる一歩手前で踏み止まった野趣ある味わい、元々漁師料理だから、あまり上品に作ると凡庸なものになりがちで、磯貝氏はその辺りは理解している、攻めていると思った(笑)。
 続くカルパッチョは魚の質は良いが、野菜が少し堅かったか。次の茸料理は秀逸な一品、珍しい物ではなく、スーパーでも売っている身近な茸類を使いながら、プロの料理になっている、アイディアの勝利だと思った(笑)。
 仏産カイユ(鶉)はやはり美味だ、胸からモモ肉と食べ続けると、味が淡から濃へ、噛み応えが柔から堅へ変化していく、食味が単調にならず複雑なので最後まで飽きない、食べ終わると「もう一度始めから食べたい」と思わせる(笑)、さすがは食肉生産の歴史の違いだなと感じる、調理も申し分ない。ソースはジュ・ド・カイユではなくフォン・ド・ヴォーベースだそうだが、野菜のソテーと合わせる事で重くならない工夫をしている。
 選んだデセールも良かった、大きく焼いたタルトではなく、一人前の形態になっていて見栄えはこちらの方がいい(笑)、現在バニラビーンズが高騰により入荷が殆ど途絶えていて、マスカルポーネを加えたアイスを添えたが、パコジェットで回した直後のもので、軽やかな美味しさだった。

     171204-10.jpg
 2011年3月、東日本大震災の直後に、母親がやっていた喫茶店を改装して始めた店は、6周年が過ぎ7年目に入った、私が初めて訪れたのは2013年の1月だが、当時独身だった磯貝氏も結婚して子供が生まれ、夫婦で店を切り盛りするようになった。秋葉原の外れと云う、あまりフレンチが似合わない場所でこれだけ続いたのは、何より料理が支持されて来たからだろう、清新な料理の印象は初訪問当時と変わっていない。
 これから先、ガストロノミー系へ向かい値段を上げ店のレベルもUPさせるのか、それとも今のまま地域密着系のビストロで続けるのか、何方を目指すのかは磯貝氏の考え方次第だが、これから少額年金生活者になる一ファンとしては、今みたいに普段着で昼間一人ブラっと行ける店であって欲しいなと、勝手に願ってしまう(笑)。
 支払いも財布に優しく、それでいて料理は本格的、秋葉原・御茶ノ水方面に出かけた時には、お勧めしたい店だ。心配なのは前述のように、これから人手が足りなくなるので、もうランチ営業は止めたとならない事、そう思わせない様にランチタイムに出かけて皆でお金を使いましょう(笑)。
 奥様が産休に入る前にもう一度来ますと、約束?をして店を出た後、平日ながら人で賑わう電気街へ、人混みは元来苦手だが、不思議と秋葉原だけは落ち着く、此処はオーディオ少年だった私にとって、第二の故郷だから(笑)。


  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

<<NEW ENTRY  | BLOG TOP |  OLD ENTRY>>


プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
店の点数評価等はしません、「食と人」を描きたいと思っています。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

訪問者

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2018 02  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 - - -