最後の晩餐にはまだ早い


大阪・玉出「びすとろぽたじぇ」(2017関西食べ続け②)

 このブログでも数回取り上げた事がある「びすとろぽたじぇ」は、大阪本町にあったフレンチビストロ、有名調理師学校の西洋料理主任教授を経た料理長が家族で営んでいたが、諸事情により2015年12月に一旦閉店した。
 「大阪へ行っても、もうあの味を体験する事が出来ない」と寂しい思いをしていたのだが、その店が場所を変えて復活するとの話を聞いたのが去年の春で、行きたいと思いながらも叶わず、今回食べ続け行の初日にやっと訪れる事が出来た。
 神戸の食業界で働いている友人も参加を表明、親父ビストロに親父二人で訪れる事になった(笑)。

 店の場所は南大阪の西成区玉出、西成区は有名な「あいりん地区」も在り、大阪市内でもかなりディープゾーン、東京なら山谷がある台東区や隣接する荒川区辺りの感じだろうか?ただ駅から店まで歩いた印象では、いたって普通の安全な街。店舗は2階にあってこれは前店舗と同じ、階下はピッツェリアみたいだが、この日は定休日だった。
 入店後、肥田料理長に久しぶりの挨拶、店スタッフは他に男女1名ずつで、カウンターとテーブルの14席を担当する、現店舗は以前より広い印象で、テラス席もあり今は喫煙スペースにしているが夏場は食事も可能みたいだ。
 料理は前店同様のプリフィクスムニュ(税別6,000円、ドリンク別)の他、アラカルト注文も可能、「ぽたじぇ」料理は久しぶりなのでムニュからお願いする事にした。

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・黒板メニュー‘Plat du Jour’

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・野菜のポタージュ、リエットとバゲット

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・前菜盛合せ(手前から時計回り:サーモンとトマトソルベ、パテ・ド・カンパーニュ、自家製ハム、根セロリのマリネ、キャロットラペ、フォアグラのテリーヌ、ラタトゥイユ)

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・ゲヴェルツラミネール(生産者聞くのを忘れ)

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・カワハギのポシェ、紫蘇バターソース

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・仔羊のクレピネット(背肉を香草入り鶏のすり身包み)※黒板外の定番メニューから

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・シャリオデセール(好きなだけ選べる)

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・選んだもの(右から:パンプディング、パイナップルのタルト、ガトーショコラ、コーヒー風味のブランマンジェ、ぶどう&みかんのソルベ)

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・別テーブルに出る「スズキのパイ包み焼き」を隠し撮り?(笑)

 まずは懐かしい「ぽたじぇのポタージュ」からで「掴みはOK」(笑)、次の前菜盛り合わせも本町時代からの定番が並ぶ、フォアグラは肥田料理長が修行したアルザスの名店「オーベルジュ・ド・リル」直伝の壺入、ネットリとした食感はまるで熟女の誘惑(^^;)。根セロリも人参もラタトゥイユも本当に何気ないものだが、同じに作ろうとしても同じにならない。
 カワハギはタップリとしたバターソースが黄金時代のフランスを想起させる、通常使うバジルを紫蘇に変えたのが料理長のアイディアみたいだ、お皿舐めたい位(笑)。
 肉料理はかつてのミュンヘン三ツ星「タントリス」の料理長ハインツ・ヴィンクラーのスペシャリテ、日本人向けに軽く仕上げてあり、ソースはイタリア的なトマトソースだった、ガルニの野菜と共に「優しく柔らかい」味、思わず「親父さん、とっても旨いよ」と呟いて涙腺が緩くなりそう、「シェフ、トレビアン」ではない(笑)。
 テーブル上に並べた前店と違い、文字どおりに「シャリオデセール」になったが、製菓クラス出身の女性スタッフが作ったとの事、この女性がサービスも兼務するが、なかなか優秀な人材で、もう一人の男性スタッフと共に人手不足の業界にあって羨ましくなる。
 勿論デセールはどれも美味でした、気持ちとしては全種類行きたかったが、翌日以降を考えて自制した(笑)。

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・磨き込まれたオープンキッチン

 肥田氏は私より年長なので、本来なら悠々自適の年金生活も可能な筈だが、あえて場所を変え再開したのは、「生涯一料理人」で居たかったのと、自分の持っている技術や料理に対する姿勢を、こうして若い世代に伝える場にしたかったのかな?と勝手に想像した。
 東京や大阪の料理界の話題等で、遅くまで盛り上がりました。客としてはこの温かい店が何時までも続いて欲しいが、作る側もそして食べる側も人間は老いていくもの、私自身最近何かにつけ衰えを感じるので、「あまり無理しないで、でも出来るだけ長く続けてください」とエールを送りたい(笑)。
 また「大阪の我家」が復活したのは嬉しかった、美味しい料理と心休まる対応、ありがとうございました。


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北千住「ブラッスリー ロノマトペ」(2017年1月)

 この日は身内の用事で千住の病院に行った帰り、時計は12時を少し回った処で、昼飯を食べようと思い千住警察の前を通り、ブログ記事で取り上げた「鶴亀飯店」に行こうとしたのだが、直前に友人から「これから○○○(東京以外の高級フレンチで、あえて名前は秘す(笑))です」と、誇らしげなメールが来ていた事が気になり、「よし、それならこちらもフレンチへ」と、近くにある此処もブログ記事にした「ブラッスリー・ロノマトペ‘brasserie l'onomatopee’」まで行ってしまった(笑)。
 前回利用時は平日ながら満席だったので、今日も混んでいるかな?と窓から店内を覗くと空席が見えたので、そのままドアを開け入店する事に。

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 前回は居なかった多分料理人だと思う、サービス担当の若い男性に一人である事を告げ、奥のベンチシートに座らせてもらう、この日は何故か空いていて私の他に2組、「客入りは水物」と云うが、あらかじめ食材料を揃えないといけない飲食店は、これが難しい処だ。

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 店前の黒板にもあったが、紙に書かれた本日のメニューは3種類、
a. poulet rôti a la morocco モロッコ風ローストチキン(税込1,450円)
b. gratin endive クレープとハムで巻いたアンディーブのグラタン(1,350円)
c. poisson de jour(本日の魚料理) 北海道産真鱈のムニエル アサリとスペルト小麦のリゾット添え(1,450円)
 下町北千住でもメニューが仏語併記なのは、やはり嬉しくなる(笑)、「a」に決めて、追加で「金柑のタルト」(350円)もお願いした。

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 店内装飾はフランスの1950~60年代位をイメージし、壁面には古い映画のポスターやアナログレコードジャケットが随所に掲げられていて、前回より増えた気がする、あまりやり過ぎると野暮ったくなるが、天井が高く飾り方に工夫があるので雰囲気は悪くない。

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・トレビスとサニーレタスのサラダ

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・パン袋に入ったパン

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・モロッコ風ローストチキン

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・金柑のタルト

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・コーヒー

 何気ないサラダだが、ビネグレットの質も良く少量ながら新鮮で食欲が刺激される、パンは業務用販売の冷凍種ではないか?これも普通に美味しい。
 そしてメインのプーレロティだが半身で骨付き、鳥類は骨付調理するのが一番旨いと思うが、時間の限られるランチには難しいので、通常は骨なし肉のソテー等が多くなる、オーダー数も読めないので、これどうしているのだろう?考えられるのは8割位焼いておいて、仕上げだけするやり方だが、残った物を夜まで保管するのも面倒、それでもこうした出し方をするのは、「一番美味しいから」との考えからだろう、客側としては嬉しい事だ。「モロッコ風」とは各種スパイスで事前にマリネして焼き、マスタード代わりにマグレブの調味料アリッサを使うからだと思うが、全体にエキゾチックな味わいを感じさせて美味、骨まで愛して(しゃぶって)しまった(笑)。
 「本日の小さなデザート」とメニューにあった「金柑のタルト」だが、決して小さくはない(笑)、パン・ド・カンパーニュ等も同じだが、こうしたタルト類は小さいサイズで焼くより大きく焼いてから切った方が間違いなく美味しい、上に乗せたバニラアイスとのバランスも良く、これで税込350円は破格だと思う(笑)。

 料理∔サラダ+パン+コーヒーで税込1,450円、デザート加えても1,800円ポッキリ、約15ユーロだ、立ち食いステーキランチと変わらないので、どちらを選ぶかは人それぞれだと思うが、私なら店の雰囲気と手をかけた料理の出来で、断然この店を推したい(笑)。
 店スタッフが変わり、店内は前述の若い男性、厨房内も前回居た男性とは違うと思う、スーシェフなのかな?でも料理のレベルは変わっていないと感じた。
 「高級フレンチの1万円ランチにも負けない」そう思いたい充実した午後でした(笑)。

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 前回ブログ記事の画像で、壁に書かれた店名の最後の「E」が足りないのでは?と思っていたのだが、よく見たらちゃんと書いてあり下に落ちていた、洒落です(笑)。機会があれば夜にも来たいと思う、いい店でした。

※次回のブログ更新は2月26日(日)の予定です。

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麻布十番「グリグリ」(2017年2月) 

 「あなたの店選びは変わっている、何が基準なの?」こう云われる事があるが、私自身はそう深くは考えていない(笑)。訪問のメインにしているフランス料理店にしても、アクセスの良さや、料理マスコミ注目度の低さ(「高さ」ではない(笑))で選ぶ事が殆どだ、ただ年齢や経験を重ねて、以前と変わったなと思うのは、料理人一人で厨房を回している店を選ぶ事が多くなった、前記事の「MAMA」や、人に勧めることの多い「古屋オーガストロノム」「ビズ」「ビストロ・ヌー」や札幌の「プロヴァンサル・キムラ」「リアン」等、厨房一人サービス一人の最小布陣店、「理由は?」と訊かれたら、「料理人の考えがよく理解出来るから」と答えると思う。
 調理スタッフが増えればそれだけ仕事は精密になり、見栄えを含め料理一皿の完成度は高くなる、だがそれを味わった時に、何か料理全体の繋がりに不自然さを感じてしまう時があるのだ、極端な例えだが、4楽章の交響曲を1楽章ずつ違う指揮者とオーケストラが演奏した印象と云えば、音楽好きな人なら判ってもらえるかも知れない。
 まあこれは私が変わっているからで、多くの人はそんな事考えないだろう、厨房もサービスも人数が多ければ、より快適な時間を過ごせる筈、まずはそうした店を選んでください(笑)。
 在関西のフレンチ好きの食友人が東京に来る事になり、私が推薦したのは、やはり料理人一人の夫婦で営む店で、このブログでも数回取り上げた麻布十番の「グリグリ」、賛同してくれたので麻布十番の夜に合流する事になった。

 フレンチディナーは今年初だ、最後まで眠らないで居られるか不安だが(笑)、週末で賑わう麻布十番商店街を抜け、店が入ったビルに辿り着くが、階下のテナントが美容室に変わっていた、次来る時まで続くのかなと、余計な心配をしてしまう(笑)。
 テーブル席で始まったディナー、まずは全品をお見せしたい、

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・アミューズ(ブリオッシュの上に桜の葉のバターと桜の花の塩漬け、カマンベールと青リンゴのイカ墨タルト)

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・卵黄とブイヤベース、パルミジャーノとミガスパウダー

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・北海道産毛蟹、身と味噌、パパイヤ、アーモンドのソース

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・帆立のスープ仕立、百合根、レモングラスとバイマックルー風味

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・北海道産鱈、緑豆、イカ、ミントのソース

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・金目鯛のポワレ、牛蒡チップ、トリュフとトランペット茸のピュレ

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・ブレス産仔鳩、胸肉と春菊、しし唐

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・同 モモ肉をスパイス唐揚げに

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・同 内臓を使ったスープ

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・ピマンエスプレットのソルベ

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・ショコラと栗、上に金箔

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・ガレットブルトンヌ

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・ベトナム産チョコレートを使った自家製板チョコ
・アンフィージョン

 伊藤憲料理長の料理を一言で表現すると「抽斗の多さ」だろうか、同世代の「オテル・ド・ヨシノ」手島料理長が一つの料理を時間かけて精緻なものにするなら、伊藤氏は過去の料理に固執せず、新しいアプローチを常に試している印象。今回特に感じたのはスパイスの多用で、帆立スープに加えた「トムヤムクン」風な香り、あらかじめソミュールに浸けたと聞く鱈の味わい、金目鯛に添えられたピュレの複雑な味、鳩モモ唐揚げの多彩スパイス、プレデセールのピマンエスプレッド味等、積極的に攻めている印象を受けた。
 同行者が「フランス人料理人が『アジア』を取り入れた料理が一時流行したが、それを思わせる、日本人料理人がやると単なるフランスの『物真似』になりがちだが、そうではなくフランス的俯瞰からの料理になっていると感じた」と語っていたが、なかなか鋭い指摘だと思う(笑)。
 以前この店でディナーに鳩が出て栃木産だったが、食肉として飼育された歴史の長いブレス産はそれとは違う、優劣ではなく脂や肉味の存在として違っているので、当然調理法も変わって来る、その辺りはフランスで長く働いた伊藤氏は熟知していて、今回の3種調理は最近では出色の鳩料理だった。
 全体的には、フランス料理経験値の高い客向け構成だなと感じる、随所に刺激があるので眠くならなかった(笑)。あえて言うならメインデセールが、飾りの金箔は要らないと思うので、もう少しチョコレートの質を高めれば更に良くなると感じた事か。

 伊藤マダムとも話をしたのだが、今東京フレンチは質、量共に凄い事になっているが客の数が追い付いていない、全体数が決まっていて、新しい店が話題になると皆は其処へ向かうので、その分何処かの店から客が減ってしまう(笑)。業界全体が発展するにはインバウンド客招致も必要だが、国内需要、特に若い層の客を呼ぶのが課題になる、そのためには何が必要なのかを、これから店も客側も考えないといけないと思う。「グリグリ」みたいに、他店とは少し違う独自なコンセプトの料理方向は、個性表現としていいと思った、あとは客とどう折り合いを付けるかだ。
 食べる側としても考える事の多い、なかなか刺激をもらえる料理で楽しい夜になりました、伊藤夫妻ありがとうございました(笑)。


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御茶ノ水「ビストロ・ヌー」(2017年1月) 

 2017年のフレンチ訪問第2弾は、私の「第二の故郷」である秋葉原至近の「ビストロ・ヌー」でした。
 十代の頃からオーディオショップ巡りやレコード&CD漁りをしていた懐かしの場所は、此処十年ですっかり様変わりしてしまったが、「夢は今もめぐりて 忘れがたき故郷」である事に変わりない(笑)。
 その秋葉原の外れ神田明神下に、2011年3月店主の母親が営業していた喫茶店を改装し開業したこの店も間もなく6年を迎える。私の初訪問は2013年1月だが、以降ランチライムが殆どながら、半年に一度位利用している、我家からのアクセスがいいのも大きいが、何より秋葉原へ寄るついでに行けるのが魅力だ。

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 この日も平日のランチタイム、磯貝料理長には事前に行く旨連絡はしていたが、11時半の開店直後だったので、いつもどおり開店一番乗り客になった。
 磯貝料理長とモデルみたいにスタイルがいいサービス担当の彩さんに挨拶、この二人結構人並み以上に食べるそうだが、全く太らないのは、食べた分だけ身重になる我身には羨ましい限りだ(笑)。

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 いつものカウンター席に座り、黒板メニューを眺める、前菜+メイン+コーヒーが標準仕様でプラス料金の料理もあり、デザートも追加注文可能。更に2種類の「おまかせ」メニューがあって、私はいつもの2,700円(税別)の方を選んで、メインは目にして真っ先に惹かれた「エゾ鹿のカイエット」(∔1,000円)でお願いする事にした。
 料理は以下のとおり。

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・ジャガイモと白子のポタージュ

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・近くにある「三井製パン舗」のカンパーニュ

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・大山地鶏のバロティーヌ

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・コルシカ産Francois Labet Pinot Noir2013(グラス880円)

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・サーモンのマリネ、カリフラワーのクレーム、ビーツ

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・北海道産エゾ鹿のカイエット

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・ホワイトチョコレートのムース、キャラメルのグラス、ショコラマカロン
・コーヒー

 白子の風味が感じられる冬のポタージュの後は鶏のバロティーヌ、中のフォアグラの扱いを含めいい仕上がりで提供温度も的確、パテ、テリーヌ、バロティーヌ系料理は一番料理人のセンスが問われる物だ。
 サーモンマリネは次の料理を考慮してか軽めの仕上がり、生のビーツと合わせるのは面白いと思った。
 そしてこの日の主役がカイエット、フランスの郷土料理で元は豚肉を使うが、羊や他の肉類でも作られる一種のハンバーグ、表面を豚の網脂で包むのが特徴、磯貝氏の話では今回、鹿の端肉、豚首肉、牛脂が主な構成との事だ。しっかりした大きさと強めの味付けで、かなり食べ応えのある料理になっている、過去他店で肉団子みたいな小さなカイエットもあったが(笑)、練肉の旨味を感じるにはこの位の大きさは欲しい、ガルニの扱いも良かったし、これは「ヌー」スペシャリテとして残したい料理だ。
 食肉一頭中の一番良い部位を客に提供するのもフランス料理なら、言葉は適当かどうかだが「廃物利用」的料理で、素材の積み重ねにより味の構成を高め、お金の取れる一品にするのもフランス料理の一面、こうした料理がちゃんと作れるなら本物だ。
 デセールもこの店へ来始めた頃に比べて格段に良くなっている、その場で回すパコジェットで作ったキャラメルグラスが特に秀逸だった。

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 この店がフランス料理のあまり似合わない街で続いて来たのは、同業他店に比べリーズナブルだと感じるのもあるが、それ以上に質の高い料理を提供して来たからだと思う、秋葉原は安いだけの飲食店なら他にも沢山ある。同じ場所で続けていると料理がマンネリ化し、常連客以外には魅力を感じない店になる事もありがちだが、1981年生れの料理長の若い感覚により、料理には古臭さや停滞感がない。
 バーテンダー出身と云う珍しい経歴を持つ磯貝氏、「私の料理学校は三省堂」と話す、つまり三省堂本店で買った料理本で料理を学んだと云う意味で、だからと云って料理本を読めば皆が料理人になれるわけではない(笑)、学習努力と実践が実っているのだろう。

 内外装にお金をかけたスタイリッシュな店内、真っ白なテーブルクロスとナプキン、黒服を着た男女の慇懃なサービス、お子様サイズの上品料理を味わうのが良いレストランと思う人にはお勧めしないが、普段着で行けるカジュアルな雰囲気、旨いフランス料理を財布の中身をあまり気にしないで食べたい人には、今上り坂にある料理人が居るので注目していい店だと思う。
 特に秋葉原に買物に行った時にはランチに寄ってみてください、場所的にも穴場です(笑)。 


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青山「ラチュレ」

 今年のフランス料理店訪問は、青山学院大学近くに昨年8月にオーポンした「ラチュレ(LATURE)」からスタートする事になった。
 料理長は1982年生れの室田拓人氏、「タテル・ヨシノ」を経て渋谷「deco」料理長に就任、同店閉店後に昨年独立開業した。狩猟免許を取得し自ら食材狩猟に努める等、ジビエ料理を最も得意としている。
 「タテル・ヨシノ」出身者なら、和歌山「オテル・ド・ヨシノ」の手島料理長の同門後輩にあたり、新橋「スブリム」の加藤料理長とは年齢も同じだ。「deco」時代から評判は聞いていたが、店の場所が家や職場から遠く、なかなか行く機会がなかった。現在は平日昼に動けるので、今回友人からの誘いもあり、新年開業一日目のランチタイムに初訪問する事が出来た。

 店の場所は青山学院敷地に沿った道にある、同じ通りには老舗の「ラ・ブランシュ」や「ポンテ・ベッキオ」、近くには「モノリス」もあるグルメストリート。一昔前は「大学の近くにはいいフレンチ&イタリアンがある」とも云われた、学生は無理だが教職員や卒業生が利用しやすいのが大きかったと思うが、今はどうなのだろう?
 店は地下一階、「スブリム」より深く掘ってある店舗(笑)。大きな木のドアを開けるとすぐ店内になるが、そんなに大きな店ではない、テーブルとカウンターで20席位、この日は平日昼ながらほぼ満席の盛況で、オープンキッチン前のカウンターに座らせてもらった。
 ランチメニューは、税別2,200円と4,800円の2種類で、あらかじめ後者をお願いしていた、当日の料理は以下のとおり、

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・鹿のブーダンノワールのマカロン、下に敷いたのは鹿の毛皮

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・キジバトのムース、下にブールノワゼットの板

・鯖と柿のマリネ、柿のヴィネグレット、イタリアンパセリソース(画像失敗しました)

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・雉のバロティーヌ、イチジクのコンフィチュール、黒ドライイチジク

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・バゲット、鳥の形の木製バターナイフ

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・蝦夷鹿のグランヴヌール、牛蒡、蓮根

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・鹿に合わせ選んでもらった赤は、仏南西部のマディラン‘DOMAINE CAPMARTIN2011’

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・オペラ、ミントのグラス

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・エスプレッソ

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・フィナンシェ

 まず料理全体の印象は、細部まで注意を払い楷書的で分かり易く、いい素材を使った丁寧な料理だなと思った。
 料理人は自分の本分はジビエも含めた肉料理である事を自覚しているのだろう、雉のバロティーヌの後は魚かな?と思ったが、小さな魚切り身のポワレ等を出す事なく、鹿肉が大き目のポーションで出て来た、このやり方は賛成、その鹿肉の状態がとても良かった。新年開業一日目でこの状態にするのは、年末に仕入れて寝かせていたか、業者からいい状態の物が前日入荷したかのどちらかだが、いずれにしても仕入業者との良好なパイプがあるのだと思う、勿論それを的確に調理する感覚があるからだが、古典的ソースは現代的に軽くなり古臭さが全然ない。
 美人パティシェール作のデセールも、見かけ綺麗で感覚も現代的だ、これから経験を積めばさらに良くなって行くと思う。
 あえて細かい事を云ってしまうと、鯖マリネの皿が前後の繋がりから味も盛付も少し異質に感じたのと、雉のバロティーヌが冷やし過ぎで肉の旨味がよく判らなかったのは、少し残念だったか。
 料理長以下スタッフは皆若い、約20席に対しこの日はサービス兼任も含めて6名、人材不足の東京では手厚い体制だし、数だけでなく技量も向上心もあるチーム力を感じた、これから時間を経て、良い方向へ進化して行くだろう事は予想出来る。

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 最後に室田料理長と話す事が出来たが、料理そのままで、誠実で真面目さが感じられ実直な好青年と云う印象。意外だがフランス等海外での勤務経験はないとの事だ、それでもこれだけ本格的な料理を作るのは、日本の調理教育のメソッドが優秀なのに加え、実体験でもいい指導を受けて来たのだろう、勿論本人のやる気が何より重要だが。
 今は角を立てた綺麗な楷書だが、これから経験を積んで、上手く崩れて洒脱な行書、草書をどう書いて行くか期待が持てると思う、最初から少し崩れ気味の「スブリム」加藤料理長とは好対照で、いいライヴァルだと思った(笑)。
 こうして正攻法な古典をベースにした料理で勝負する若者が出て来たのは、クラシックファンには心強い(笑)、彼の本領はオートクチュールな狩猟したジビエ料理だと思うので、それを体験するために夜にまた訪れたい店だ。
 2017年フレンチ行脚もいいスタートになったと思う(笑)。
 

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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