最後の晩餐にはまだ早い


芦屋「オステリア・オ・ジラソーレ」(2017関西食べ続け⑥)

 関西3日目の午後は大阪から西へ向かい、一旦JR灘駅まで出向き、兵庫県立美術館で開催されていた「アドルフ・ヴェルフリ-二萬五千頁の王国」展を観る、ヴェルフリはスイス出身のアール・ブリュット(生の芸術)の作家で、精神病院に収容されながら描き続けた「物語」は圧巻、「妄想の大伽藍」との説明があったが、妄想だけで此処まで描けるのは天才としか云い様がない、絵画だけでなく作曲も手掛けた、残念ながら会期は終わってしまったが、興味のある人は「アドルフ・ヴェルフリ」をWEB検索してみてください、独自の世界を知る事が出来る。
 その後芦屋まで戻り、駅前のショッピングセンターで夕方まで時間を繋ぐ、東京人の私は「芦屋」と聞くとまず高級住宅地を連想し、そのため東京と鎌倉位の位置関係なのかな?と漠然と思っていたが、実際には大阪からは何と云う事もなく近かった(笑)。

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 周りが暗くなり冷えて来た頃に駅から南へ向かい、住宅街にあるイタリア料理「オステリア・オ・ジラソーレ」を目指す、今回初訪問をとても楽しみにしていた店だ。関西に在って東京で名前が知られているのは、南側の県にあるイタリア料理店だが、交流がある関西の食仲間達が高く評価しているのはこちらの店だったからだ。
 人の多い大阪から来ると、歩いている人が少なく夜は寂しい雰囲気も感じる道沿いに店はある、ファサードの青い照明が独特の雰囲気、南イタリア料理の店だが、これだけ見るとNYのイタリアンみたいな印象(笑)。
 ドアを開けると其処はバールの造りになっていて、レストランはその奥、こうした店の仕様はスペインのバル&レストランでも見たので、おそらくイタリアにも在り、それを取り入れたのだと思う。奥の内装はシックで落ち着いた雰囲気、壁の絵等所々に忍ばせたイタリアのテイストが心憎い。店名に‘Girasole’を使うイタリア料理店は東京にもあるが向日葵の事、そうソフィア・ローレンの「ひまわり」(笑)、「オ」を入れるのが正しい使い方か。
 この店の近くに住み、常連になっている食友人とのディナー(伊語ではcena)なので、店側も相当本気になっている筈だ。まずは料理全品について紹介したい、 

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・オリーブとビスコッティ

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・お米とキャベツの煮込みと牡蠣を包んだモルタデッラハム

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・自家製酵母から起こすと聞いた自家製パン(美味しい)

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・この日グラス提供可な白ワイン4種

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・ミル貝のカルパッチョ、フリアリエッリとカリフラワーのクレマ

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・イイダコと蕪、里芋のフリット、ブラッドオレンジヴィネガーで

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・マナガツオの炭火焼、赤ワインと玉ねぎのソース

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・手打ちのパッケリ、潮の香のソース

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・鳩の炭火焼、ニラとレバーのソース

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・フォンダンショコラと栗のスープ、マスカルポーネの雪見仕立て

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・カンノーロ
・エスプレッソ

 前菜4種と秀逸な自家製パンを食べ、この料理人は何を表現したいのか、客に何を感じ取って欲しいのか理解出来たと思った、魚介はどれも近海物みたいで、複雑な味付けや余計な調理より、素材の本来持っている力を生かす方向で提供する。
 ミル貝料理は同じカリフラワーを使った「オテル・ド・ヨシノ」の、「甲殻類のジュレ、カリフラワーのクリーム」を連想したが、繊細さではあちらだが、ストレートで鮮烈な旨さはこちらだなと思った。
 パスタはこの日最も印象に残った料理、パッケリとは極太の筒状パスタで、魚介の旨味を凝縮したソースは辛味を忍ばせて癖になる美味しさだった。「レバニラ炒め」を連想させる鳩料理は面白い、炭火焼は美味だがニラの量はもう少し抑えた方が鳩の肉味を生かすかも知れない。
 ドルチェも良かった、伊語では「パスティッチェーラ」と呼ぶそうだが、料理兼務の女性が作った品は、見かけは地味だが味に関しては今回の食旅行では最上のデザートだった。このパスティッチェーラは若く眼の輝きがいい、これからもっと伸びると思う。

 漁師の親父が捕った魚や貝を奥さんが料理する、やがてそのマンマが作る料理が近所で評判になり皆が集まって来る、客の「マンマ、お店出したら?」の言葉から始まった店が繁盛し、家族も手伝い口コミで有名になり遠くからも客がやって来る。こんな南イタリアでのリストランテ誕生物語を連想させる、この日の料理だった。
 料理長は杉原一禎氏で1974年兵庫生れ、名門調理師学校卒業後国内イタリアンを経て渡伊、おもにナポリ中心の南イタリアで働く、2002年に帰国し地元で独立開業、2007年に現在地へ移転した。
 食後に話をさせてもらったが、「きょうの料理」に出演しているアンドレア・ポンピリオ氏(日伊ハーフ)に少し似ている(笑)、上背があり体格がいいのでコックコートが似合うし、たぶんスーツ姿もピッタリだと思う、この日隣席の男女客と何故か映画「ゴッドファーザー」話で盛り上がったが、帽子を被って葉巻を銜えたら、あちらの世界でも通用しそうな雰囲気がある(笑)。
 「関西一のイタリアン」なのかどうかは、料理を評価する人次第だが、「関西一イタリア人的な料理人」ならトップ争い間違いないと思う(笑)。

 この夜は風が冷たく寒かったが、南イタリアの陽光と青い海を感じさせてくれる骨太な料理で、帰り道の寒さも忘れる楽しくて美味しい夜になりました。料理長とスタッフの皆さんありがとうございました。
 また関西でリピートしたい店が増えてしまった、これは困った事だ(笑)。


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麻布十番「リストランテ・ジャニコロ・ジョウキ」(2016年11月)

 今年8月下旬に麻布十番にオープンした、イタリア料理「ジャニコロ・ジョウキ」、オープニングレセプションに参加して以来、「近いうちに行こう」と思いながら3ヶ月経ってしまった、会う人毎に「今度、麻布十番に出来たイタリアンはいいよ」と薦めながら、自分が行かないのは駄目だなと反省(笑)、ようやく重い腰を上げランチタイムに伺う事が出来た。
 土日なら人が頻繁に行き交う商店街も平日は静かだが、この日は某大国のトップを決める選挙経過で、スマホ歩きの人達が何処か落ち着かない印象の白昼だった。
 店は駅を出て商店街を上り、ダイエー近くにあるビルの9階、そのまま歩くとフランス料理の「グリグリ」が入ったビルがある。 
 エレベーターを出ると、其処はもう店内と云う珍しい造りは前回経験済みだが、人が多かったレセプション時と違い、いきなり異空間にワープする感覚で、このエレベーターの扉は「どこでもドア」みたいだ(笑)。

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 サービスの男性と内野料理長に挨拶し、窓際の絶景席に座らせてもらう、視線の先には六本木ヒルズ、まるで自分がセレブの一員になった錯覚を覚える、云わば「シンデレラになれる店」で「これが夢ならずっと醒めないで欲しい」(笑)。
 この日のランチメニューは以下のとおり、

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・薫製した生ハムと甘麹のエスプーマ

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・カツオのカルパッチョと青リンゴのピュレ

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・イノシシと山ぶどうの煮込みのリガトーニ、牡蠣のコンフィを添えて

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・氷室豚の炭火焼き(焼き上り)

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・カット後、上はドライほうれん草

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・パンチェッタと京芋の自家製タリオリーニ

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・洋梨のコンポートとワサビ

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・黒糖のパンナコッタと柿のキャラメリゼ、黒胡麻のチュイエル

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・さつま芋のソルベ(画像なし)とポテトチップ
・洋梨のハーブティー

 一品目は甘麹の甘味が特徴的、続く鰹は赤身に青リンゴ味を被せる意外感だが、これが不思議に合っている。
 続くパスタはコッテリとした印象だが葡萄の酸味で中和させる、肉料理の「氷室豚」とは群馬県で生産される「氷温熟成豚肉」の事で、今回はシンプルな炭火焼きだが、脂の旨味が独特、柚子胡椒に似たレモンハーブペーストを付け食べる、これは肉味も噛み応えも良く美味な豚だった。締め?のパスタはあっさり目で自家製麺の良さを感じさせた。
 料理長が得意とするドルチェも安定の美味しさだった、洋梨に本山葵を合わせるのは大胆技だと思う(笑)。
 一品一品丁寧な作りで、意外な食材組合せの美味しさは「フロリレージュ」にも通じる。少し気になった点を挙げると、猪ラグーのパスタ~氷室豚~パンチェッタのパスタと続いた構成が、食べている時はあまり気にならないが、食後感が少々重かった、この辺りは今後修正して行くだろうと思う。
 内野氏は7月まで近くにある姉妹店の、「ピッツェリア・ロマーナ・ジャニコロ」で料理長だった、今迄は「ピッツェリアなのに、こんな本格的な料理が出る」と云うサプライズ感があったが、今度は本格的なリストランテだ、客の期待値もより高くなる、色々と試行錯誤しているのは感じ取れるので、より良い方向へ進む事を期待している。

 食器は料理長が選んだ和食器が中心、カトラリーは「イタリアのクルストフル」とも云われる「サンボネ」の使い込んだ品、閉店したイタリア料理店から譲り受けた物との事だが、上質な重量感で和食器とも意外にマッチする。
 店内は改装されたばかりで新しく綺麗、インパクトのあるゴールデンイエロー色の椅子やナプキン、オーナーのセンスで集めた抽象画が明るい空間に映えている。前述のとおり9階から眺める景色は抜群、ランチは1,800円からあるので、一階店舗で1,500円の高級ハンバーガー食べる事思えば、非日常感も含めお得だと思う(笑)。

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 退店時には「ガチャガチャ」まで登場した(笑)、これが何であるかは是非店へ行って体験して欲しい(一部ランチを除く)ので詳しく書かないが、店名の「Giochi/ジョウキ」=(伊語で)「遊び心」と「常軌」=「常に行うべき道」を上手く表現していると思う。
 これからが期待出来る素敵なリストランテ、今年のノエル(イタリアだから「ナターレ」か)に素敵な人と過ごす場所を探しているなら穴場だと思う、今ならまだ間に合うかも知れない(笑)。
 

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麻布十番「リストランテ・ジャニコロ・ジョウキ」(オープニングレセプション)

 中野新橋「タクティー」を出て向かったのは麻布十番で、過去数回利用させてもらった、ローマピッツァとイタリア料理の店「ピッツェリア ロマーナ ジャニコロ」が、第二店として本格的なリストランテを開業し、オープニングレセプションの招待をいただいたので伺う事にした、「今更遅い」と云われそうだが(笑)、簡単なレポートを挙げておきたいと思う。

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 店の場所は第一店と同じく麻布十番、商店街を上り切った辺りの9階建てのビルの9階で、店名は「リストランテ・ジャニコロ・ジョウキ(Ristrante Gianicolo giochi)」になる、イタリア語の‘giochi’は英語の「ゲーム」にあたり遊ぶ事を表す、つまりこの場所で、やって来た皆が心の底から楽しんで欲しいと云う、店側の気持ちの表れだ。
 料理長は前店でピッツェリアとは思えない位に、斬新で美味な料理を提供していた内野拓料理長が、そのまま異動して就任する事になった。
 9階なのでエレベーターがアクセス手段になるが、扉が開くともう其処がすぐ店内、いきなり遊びの空間にワープする感覚だ(笑)。
 オーナーの渡邉氏が居たので、挨拶して空いていた席に座らせてもらう、明るい店内は18席前後と、それ程広くはないが、レストランに来たと云うより、高級ペントハウスに招かれたみたいな感覚、残念ながらそんな金持ちの知人友人は一人も居ないので、店にいる間だけのセレブ気分に浸るしかない(笑)。

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 店内にはオーナーが収集した現代絵画が数点、一応ギャラリー勤務経験がある私に言わせてもらえば、お金を使って有名作家の絵を集めたのではなく、無名でも選んだ人のセンスの良さが感じられるいい絵、この空間に似合っていると思う。

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 高層ビルと違ってベランダがあり、外へ出て外気を感じられる、此処からは六本木ヒルズ、六本木ミッドタウン、虎ノ門ヒルズと云った東京の有名高層ビルが近くに見え、東京タワーも遠くない、これは夜景も素晴らしいだろうなと思う、「今日こそ決めてやる」みたいな勝負デートの場所を探しているなら、まさに最適だと思った(笑)。

 以下に当日提供された料理の一部を紹介するが、あくまでもレセプション向けの料理な事を理解した上で見て欲しいと思う、

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・とうもろこしのフリット

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・スパゲッティアマトリーチャ

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・プロシュート、レフォール?のエスプーマ

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・豚肩肉のロースト、ローズマリー風味

 オーナーの気前いい振る舞いで、各種アルコール類が提供されていたが、私は訳あって水ばかり飲んで居た(笑)。
 たまたま隣に座った、私より年配と思しき男性がとても粋な人で、高級そうなジャケットにボルサリーノのパナマ帽、オーナーとはサバティーニ青山時代からの旧知の間柄みたいで、グルメな会話の内容が濃い(笑)。私が若い頃はレストランでこうした振る舞いが出来る大人達に憧れたものだ、濃い客の相手をしていたのが、現「フルヤオーガストロノーム」非常勤支配人?の秋葉さんみたいな人だから、お互いに丁々発止の会話が続く、それは濃厚な時間だったと思う(笑)、最近高級店にあまり行かなくなったのもあるが、レストラン空間でこうした素敵な大人達を見かけなくなった、今は楽しむために来たのか批評をするために来たのか、判別不能な客が増えた、昔を知る人間には寂しい事でもある。
 ただ自分も年齢を重ねて、かつて憧れたこうした大人に成れたかと云うと、自己採点では残念な答えしか出ないが(笑)。

 次々と客がやってくる、料理雑誌やWEB上で見かけた顔もあって、それだけ新店への期待度が大きいと云う事だろう。個人的にも内野料理長の料理には以前から注目していたので、彼が料理に専任出来、本領を発揮する場が新たに出来たのは嬉しい事だ(笑)。
 なお、渡邉オーナーはピッツェリアの方に専任し、新店ではサバティーニ青山出身のサービス担当が就くとの事、スタッフは当面男性ばかりになるみたいだが、麻布十番の天空レストランで、内野料理長のリードによってどんなハーモニーを響かすか、期待したいと思う。

 9月以降少し落ち着いた頃に訪れ、また改めて記事にしたいと思っている、渡邊オーナー&内野料理長、ご招待ありがとうございました(笑)。

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中野新橋「タクティー(Tucktty)」※2017年4月で閉店しました。

 2011年に始めたFacebook、最近は色々な意味で面倒にもなっているが(笑)、続けていて良かったなと思う事は、現役料理人やパティシェと知り合える事で、彼・彼女達がどんな考えで仕事に取り組んでいるのか、幾らかでも判ると「この人の料理やスイーツを食べてみたい」と思う時がある。
 今回訪れる中野新橋のイタリア料理店「タクティー(Tucktty)」も、Facebookで知り合った松井昭憲氏が料理長を務める店だ。我家からは遠いので、なかなか行く機会がなかったが、この日夕方に麻布十番まで行く用事があり、「その前に松井さんの料理が食べたい」と直にお願いし、訪問が実現した(笑)。
 中野新橋は30年位前に仕事で一度来た事あるが、勿論当時とは駅も街も大きく変わっている、微かに駅の名前になった神田川に架かる「新橋」辺りの風景には記憶があった、街の看板的存在だった相撲部屋も移転し、真夏の白昼な事もあり、人通りは少なく感じてしまった。

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 店の場所は駅から続く道で新橋を渡ればすぐ左手、道路に面しているので判り易い、開業は2007年だが2014年にリニューアルしているそうで、見かけは新しい印象を受けた。店内に入ると年配の女性が居たので名前を告げるが、後でこの方が店のオーナーだと知った、昼の繁忙時間が過ぎてから訪れたのだが、先客が2組食事中だった。
 席に着くと、もう一人サービスを担当する綺麗な女性が、今日のランチメニューについて簡単に説明してくれる、通常のランチメニューは1,500円だが、今日はあらかじめ遠くから行くのでと、松井料理長に無理を言い、スペシャル内容にしてもらった(笑)。

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・鎌倉のメカブ、栃木県ココファームワイナリーのベルジュ、オリーブオイル

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・鎌倉のトマトが美味しいカプレーゼ

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・8月・鎌倉野菜のサラダ

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・佐島の真ダコ、鎌倉の万願寺唐辛子とピーマンのアラビアータ、ストロッツァプレーティ

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・山形豚、肩ロースのワラ焼き、鎌倉のナスとパブリカ、ハラペーニョ

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・急遽、追加で出してくれたカマス料理

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・焼いた鎌倉トマト、ズッキーニ、ミントのソルベ

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・ヘーゼルナッツの香るチョコ“ジャンドゥイヤ”のタルトと鎌倉のビーツ
・イタリア産コーヒー“オペラ・プリマ”

 まずは野菜の味が鮮烈だ、料理長は鎌倉在住で、地元の生産農家から無農薬野菜を直接購入、店までぶら下げて来るそうだが、それだけの価値はある、例えば北海道の野菜に比べると、力強さより味の奥行きや洗練度を感じる、苦味の中に甘味があり、辛味の中に旨味がある。勿論それを生かす調理技術があってこそだが、改めてイタリア料理は「始めに素材ありき、素材は料理なり」なのだなと理解した(笑)。
 パスタ料理の「ストロッツァプレーティ」とは、「坊さん(神父)の首を絞める」と云う物騒な意味の手打ちパスタ(笑)、麺を両掌で捻って成形するのでこの名が付いたそうだ、ソースと絡んで美味、やはりイタリア料理店では生パスタを食べたくなる。
 台風の影響で鮮魚が入らなかったと事前に説明あったが、「今、魚が届きました」と急遽出してくれたのがカマス料理、魚介も鎌倉の漁師と直接取引し、店まで車で運んでもらっているそうだ、生産者(漁師)⇒店⇒消費者(客)が最短ルートで構成されるので、これは美味しくない筈がない(笑)。
 野菜を使ったドルチェも良かったし、予想の上を行く上質なランチだった、そして支払いは、都心のスタイリッシュ系イタリアンと較べたら申し訳ない位に安い。

 また「古い」と云われそうだが、松井料理長は「ヒデとロザンナ」のヒデさんに少し似ている(笑)、「グラナダ」「サバティーニ青山」等の名門イタリアン出身で、サバティーニ時代は、現「ジャニコロ・ジョウキ」の内野料理長と同じ厨房で働いたそうだ、喋り方は穏やかだが、生産者を盛り上げようとする熱い気持ちに満ちている。
 この料理長を信頼して、全て任せている女性オーナーも立派だと思った、採算や利益追求以上に、何とか地元を盛り上げたい気持ちがあるからだと思う。
 そしてサービスを担当する女性が優秀、私がレストランオーナーならスカウトしたい位(笑)、接客、喋り、間の取り方等、高級店でも通用しそうな対応で、「この人のサービスなら、もう一度来てみたい」と思ってしまう、「最近、女性ばかり褒めていないか?」と勘繰られそうだが、慢性人材不足のこの業界で、一生懸命働いている彼女達はとても素敵だと思う(笑)。

 正直に言うと、訪れた後に「一回行っておけば十分」と思う店はある、料理だけでなくサービスも含めて「これ以上は進歩しないな」と感じた店、片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんが言う「ときめかない」店がそれで、この店はもっと進歩しそうだし「ときめく」店だった、また何か用事を作って、いや他に用事が無くても行きたいなと思った(笑)。
 爽やかで美味しい午後になりました、スタッフの皆さんありがとうございました、気分の良くなった私はこのまま麻布十番へ向かう事に。


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麻布十番「ピッツェリア・ロマーナ・ジャニコロ」(2016年5月)

 3月まで同じ職場だった仲間から連絡があり、「退職の慰労会をやりたい、ついては何処か場所(店)を探してくれ」との依頼だった、「普通はそちらで手配するのではないの?」とブツブツ言いながら、それでも店を探してしまうのは、これ一種の「業」みたいなものだ(笑)。
 でも連絡があったのは開催予定日の10日前で、しかも金曜夜で人数は5名との事、これは厳しいぞと思いながら候補店を考えた。旧職場から一番行き易いのは飯田橋・神楽坂だが、予算幾らでもいいと云う訳ではなく、何とか一人福澤諭吉さん1枚には納めたい、でも安いだけでは駄目で料理も良く、それなりに雰囲気いい店となると難しい。一店心当りの店へ電話したが、案の定満席で「さて困ったぞ」と暫し悩んだ。
 こうした時に役立つのが自分のブログで(笑)、過去行った中で条件の合いそうな店を見ていたら、麻布十番の「ピッツェリア・ロマーナ・ジャニコロ」に気づいた、「無理かも知れないが」と電話してみたら、幸運にも席が取れて一安心、旧職場からは少し離れるが、この店なら満足してもらえるだろうとの確信あった(笑)。

 予約時に予算とメンバー構成を伝え、料理内容は内野料理長に全ておまかせにした、過去2回の利用はランチタイムなので夜利用は初めて、どんな料理が出るのか私も楽しみだった。
 店到着後、渡邉オーナーと内野料理長に挨拶、始まったお任せメニューの内容は以下のとおり、

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・アサリとパンの詰め物をした花ズッキーニのフリット

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・皮付きヤングコーンのロースト

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・マグロの頬肉のコンフィ・ローマ風アーティチョーク・グリンピース

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・ジャニコロ風ピッツァ・マルゲリータ

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・千葉県産、豚のロースト、ういきょうとアメリカンチェリー

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・ボローニャ風スパゲッティ

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・マンゴーとオリーブオイルのジェラート

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・キャラメルナッツを纏ったジャニコロ風ティラミス

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・米と梅
・コーヒー

 料理自体の印象はランチ時とそう大きく変わらない、私以外の参加者は初利用だったので、それを考え店のスペシャリテである、マルゲリータとパスタを両方入れたと思う。
 先ずはイカ墨を使った大胆なデザインのズッキーニ料理で、皆のハートをひと掴み(笑)。次のコーンの上に載るのは上質なラルド(豚脂)で、これを使う事によりコーンの味が一段UPしている。
 マグロ頬肉はこれから本番の夏料理、頬肉の脂分にイタリア産グリーンピースの風味が加わると、鮮烈な印象になる。
 ローマピッツァは安定の美味しさで、それに続くのが本日主役の豚ロースト、今回は低温長時間調理バージョンで、まるで「フロリレージュ」の「分かち合う」塊肉みたいだ(笑)、各皿に盛りつけた肉は餅の様な食感が見事、ういきょう&アメリカンチェリーと合わせたセンスもいい。
 締め?のパスタの後は、内野料理長の得意分野でもあるドルチェ2品、味構成・デザイン共に秀逸で親しみ易く何処か懐かしい味、甘党女子&男子は「やられたな」と思う(笑)。ミニャルディーズ代わりの「米と梅」は、お粥の上澄みと青梅のコンポートを合わせ「オニギリ」をイメージしたそうだ、このセンスに座布団一枚(笑)。

 内野氏が作る料理は皿から飛躍している。以前に読んだ或る料理人夫妻をモデルにした小説で、主役料理人の作る料理を「皿からはみ出している」、そう見える位に力強いと表現していたが、それに近い感じがした。最近日本のフランス料理店では、皿の片隅で蹲っている様な、チマチマとした料理に出会う事もあるが、それとは一線を画している(笑)。予算からそう高い食材は使えないが、優れた感覚と技術によって完成度の高い料理になっていた。
 今の東京でも最も乗っている若手料理人の一人だと思う、これは店側が公表しているので、ブログに書いても大丈夫だと思うが、今夏には同じ麻布十番に第2店を開く予定との事、現在の店はピッツェリアとして残し、今度は本格的なリストランテになるらしい、内野氏はそちらに行く予定との事で、どんな店になるのか今から楽しみだ。
 店内は何時の間にか満席に、渡邉オーナーが勧めてくれたイタリアワインも料理に合って美味しく、この日の参加者は充分満足していたと思う、ありがとうございました。

 今年になって東京で訪れた店は、神楽坂「bisous」(1982)、御茶ノ水「ビストロ・ヌー」(1981)、新橋「スブリム」(1982)、稲荷町「キエチュード」(1981)、カッコ内は料理人の生年で「ジャニコロ」内野氏は1980年。
 私が東京で本格的なレストランに初めて行ったのが1978年頃なので、それ以降に生まれた世代が東京食舞台の主役になりつつある、どうやら「君たちの時代がやって来た」みたいだ(笑)。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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