最後の晩餐にはまだ早い


北千住「博多炉ばた焼やまや 北千住店」

 私の身辺では今、「北千住のやまやのランチ、行きましたか?」が挨拶代わりになっている(笑)。この時「やまやって何処?」と聞く人はもう話題に付いて行けないので、「明太子で有名な」と云うと大抵知っているが、北千住との関連が判らない人には「北千住マルイの中に食事出来る店がオープンして、ランチがお得」と教えてあげる事になる。
 「野菜を売っていて、フードコートもレストランフロアもあるマルイ」として知られる「北千住マルイ」だが、そのレストラン街が4月28日にリニューアルし、四川飯店系「チェンズダイニング」や、プリンで知られる「パステル」のレストランが営業終了、替わって参入した数店の中に、福岡「やまや」の直営店「博多炉ばた焼やまや 北千住店」がある。
 此処のランチがお得なので行くべしとの情報を得て、早速北千住ランチレポートの一環として、平日の開店一番を狙って訪れてみた(笑)。

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 店は北千住駅前のマルイ9階フロア―で、「千寿万彩」と名付けられたレストラン街の一角、以前はたしかパステルが入っていた場所だと思う、全面改装していて「お金かけているな」が第一印象(笑)。なお同じフロアには「うまや」と云う名前の、やはり福岡資本の焼鳥&鍋の店があるので、間違えない様に要注意。

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 店の入口には「やまやのランチ」と記した案内、そこには「やまやの辛子明太子・からし高菜 お好きなだけどうぞ!」と、6種類のランチを並べて記してある、この日の内訳は、
・鶏の唐揚げ明太風味定食
・博多郷土料理 がめ煮定食
・じっくりたれ漬け 豚しょうが焼き定食
・塩さば定食
・牛丸腸の鉄板味噌焼き定食
・華味鳥の親子丼
 値段は全て税込1,000円で、さらに「定食はご飯おかわり自由」「丼はご飯大盛り無料です」と、赤色下線で強調している(笑)。
 開店時間の11時になり「よし、入いるぞ」と思ったら、入口で店員から「先に料理を決め、支払いを済ませて欲しい」との事、この種の店にしては珍しい先払い方式を採っている、真っ先に目が止まった「がめ煮定食」に決めて代金を払う、本当に税込1,000円ポッキリだった(笑)。

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 席に案内されるが、開店直後で空いていた事もあり、カンター席ではなく4人掛のテーブル席だった、新しいから当然だが店内は綺麗だ。

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 このテーブル席は間仕切りを高くして、半個室風になっている居酒屋的感覚、日本人特に会社勤めのサラリーマンは、このスタイルが落ち着くのか、好まれるみたいだ(笑)。

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 席に座ると目の前に色絵の蓋付き鉢、蓋を開けると噂の明太子とからし高菜が入っている。料理が来るまで少しずつ食べてみたが普通に美味しい(笑)、明太子は「切子」と呼ぶ、製造過程で薄皮が破れたりして、完全な製品に出来なかった物だと思う。

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 暫くしてやって来たのが「がめ煮定食」で、奥にがめ煮とひじきの煮付、手前にご飯と味噌汁、「がめ煮」は九州北部の代表的郷土料理で、別名「筑前煮」「炒りどり」とも呼ぶ。ウィキペディアによると秀吉の朝鮮出兵時に、兵士達が現地のスッポン(別名「どぶがめ」)と野菜等を煮込んで食べたのが発祥で、「亀煮」⇒「がめ煮」になったとの説を紹介している。

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 現在では鶏肉を使い、根菜類と炒めてから醤油味で煮る、甘口に仕上げる事が多く、この店のがめ煮も一口食べて「少し甘過ぎるのでは?」と思ったが、食べ進むと気にならなくなった、私の母(長野出身)が作った煮物もこの位甘かったので、何処か懐かしい家庭的な味だ(笑)。

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 そしてご飯が美味しい、産地は不明だがふっくらとしていながら歯応えもある、「美味しいご飯を食べたいなら、炊き立てが出る開店直後が狙い」は私の持論だが、そのとおりだと思った、このご飯に明太子とからし高菜の組合せは、何杯でもいけそうで怖いが、この日は2杯で自制した(笑)。
 隣席に運ばれていた「鶏の唐揚げ明太風味」も美味しそうだったし、此処はまた来てみたいと思った(笑)。

 なお秋葉原にも「博多炉ばた焼やまや 秋葉原店」が4月2日にオープンしている、どうやら東京進出にあたり、宣伝効果も兼ねランチでのサービス展開をしているのだと思う。お茶出しはセルフ、代金前払い式で省人力化しコストカットを図る、まずは店の存在を知らせて客単価の高い夜にも来てもらう、これが狙いなのだろう。
 個人店には強力な競争相手出現だが、ランチ提供価格の参考にするためにも、一度行ってみる事をお勧めしたい。明太子とからし高菜は無くなれば補充してくれるとの事だが、魚卵の食べ過ぎは痛風への近道でもあり、ほどほどに(笑)。


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神楽坂「和しょく えびはら」

 以前はSNSを介して食事会の開催をしていたが、最近はすっかり面倒になってしまった(笑)、こうした事は大抵云い出した人間が幹事役になる、幹事になるとこれが大変で、参加者の招集、店の選択、店との調整、料理の内容、酒の種類を含めて参加費は幾らにするか等、事前に決めなければならない事が多い、更には開催直前に都合悪くなった人がいたりすると、その補充はどうするみたいに、前日まで頭を悩ませ、当日は皆時間どおりに来てくれるのかな?と、幹事は気が休まらなくてあまり料理も楽しめず、終わった時には疲れ切っていたと云う事になりがちだ(笑)。
 それもあって最近はもっぱら他力本願(笑)、誰かが誘って来るのを待つ位だ。あまり使われなくなったが「壁の花」と云う言葉がある、元は舞踏会で踊りに誘われず壁際に立っている女性を差し、そこからパーティー等で、会話の輪から外れている女性全般を呼んだみたいだが、今こんな言葉使うと「性差別」と取られかねないので、使わなくなったのだろう。食事会の誘いをPCやスマホの画面で待っているのは、「画面向こうの花」いやジェンダーフリーだから「花」とは限らないかと、余計な事を考える(笑)。

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 前置きが長くなったが、食関係の友人から誘いがあり、この夜食事会に参加する事になった、開催場所は神楽坂の「和しょく えびはら」で、東京で本格的な和食店へ行くのは久しぶりだ。
 店の場所は都営大江戸線の牛込神楽坂駅を出て、神楽坂上の交差点へ向かってすぐ角の場所、「駅に近い和食店」なら東京一番かも知れない(笑)。私はこの店から近いフランス料理店へ何回か行っており、店の存在は知っていて、以前から一度行ってみたいと思っていたので、今回のお誘いにはすぐ乗ってしまった。
 集合時間の19時少し前に入店、若い料理人夫妻に挨拶していたら、参加メンバーが集まって来た、まずは当日の料理を紹介するが、女将からの説明で、この夜は特別な集まりのための料理で、通常の夜献立とは違えているとの事、それを汲んで読んで欲しい。

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・先付 嶺岡豆腐、菜の花

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・前菜 山形産原木椎茸の炭火焼き

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・造り 鯵、ヒラマサ、墨烏賊、おかわかめ

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・八寸 揚げ薩摩芋白和え、そら豆、蛍烏賊のあられ揚げ、飯蛸の桜煮

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・椀物 鯛、こごみ、餅

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・焼物 甘鯛と筍挟み焼き、唐墨と大根

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・御飯 あさりご飯と赤出汁、香の物

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・果物 
 
 嶺岡豆腐は牛乳を胡麻豆腐状に固めたもの、原木椎茸は香り高く、造りの三浦産墨烏賊は舌に絡みつく食感で美味だった。
 八寸は薩摩芋を白和えにするセンスがいい、季節の飯蛸は旨味が凝縮されていた。椀は吸い地ではなく煮物椀的で、鯛、こごみと餅を揚げ、そこへ濃い目の出汁をかける、続く甘鯛と筍は繊細な焼物で皿上に春がやって来た、加えて自家製唐墨のネットリした舌触りはエロスを感じさせる(笑)。
 あさりご飯は関西ではあまり見ないと思う「深川めし」みたいに、浅利の香りを凝縮させたもの、これは美味しくてお替わりしてしまった(笑)。
 事前情報では、ご主人は京懐石の老舗「柿傳」で修業したと聞いたが、全体的に判り易く、美味しさが直に感じられる料理だと思った。神楽坂の和食は、上は客単価3万円の三ツ星店から、下は一皿300円?の格安居酒屋まで多種多彩で競争も激しい、その中で「この店ならでは」の個性を出し、固定客を掴んで行くのは難しい事が多いと想像するが、今年開店5年目を迎えるこの店、料理人夫妻の人柄が料理や接客に滲み出ていて安心して楽しめる、これからも続いて欲しいと願わずにはいられない。

 久しぶりの異業種間交流食事会は楽しかった、集まったメンバーの顔触れから、コアなグルメ話になるのかなと思っていたら、勿論それもあったが革財布や手造り万年筆の話まで出て、知らなかった業界話を色々聞く事が出来た、いつも同じメンバーばかりで固まっていると知識に進歩がない、年とって好奇心を失うとただの頑迷な老人になってしまう(笑)。
 電車がなくなってしまうので、最後中座させてもらい失礼しました、当夜参加の皆さん、美味しい場を提供していただいた海老原ご夫妻、夜遅くまでありがとうございました、また何処かでお会いしましょう(笑)。


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大阪・高麗橋 「桜花」(2016関西食べ続け④)

 関西二日目は強行軍で、和歌山「オテル・ド・ヨシノ」から大阪のホテルに戻ったのが午後5時過ぎ、ここで胃薬を飲んで、バスタブにお湯を張って足湯に浸かる、消化を早めたい時はこれが一番効くと経験で学んだ。ベッドで横になりたいのを我慢し、休む間なく6時を過ぎたらまた夕食へ出かける、自虐的とも云える「食苦行」だ(笑)。
 向かったのは今回唯一の本格的和食で、これが三年連続になる「高麗橋 桜花」、昨年の利用後に「旬菜 桜花」から改名したが、今大阪の食通からも注目される店になりつつある。

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 地下鉄御堂筋線の淀屋橋駅で下車、5分も歩かずに店に着く、店内に入ると去年と雰囲気が少し違うと感じた、森田料理長を手伝うのが従業員から奥様に替わり、同時に空気感も変わった。
 この日は在関西の友人が参加してくれたので、静かにしているつもりでいたのだが、結局またも料理や器、日本文化等のマニアックで且つ難しい話をしてしまった、一期一会の食事時に迷惑をかけました(笑)。
  
 まずはともかく、当日の料理をご覧ください、昼がフランス食文化の究極形だとしたら、これは日本の食文化の粋、「どちらが優れている」ではなく、これだけ秀逸な食体験が一日で出来るのが、今の日本の凄い処だ、料理名は後で森田料理長から説明があったものをそのまま記しています。

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・前菜
 つぼつぼにするめ烏賊塩辛 辛味大根柚子おろし 八尾若牛蒡の稲荷巻 市田柿にクリームチーズ味噌漬け 牛蒡炭煮

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・煮物椀
 蟹真丈 春子椎茸 蕾菜 香茸醤油煮

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・割鮮
 太刀魚 きうち うるい 白葱けん 金時人参 防風 山葵 鰹 大葉 おかひじき 造り醤油 ぽん酢にかんずりおろし もろみ醤油

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・揚げ物
 さば河豚竜田揚げ ばちこ天麩羅 酢橘 蓮根饅頭おかき揚げ 海老芋芥子の実揚げ 

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・主菜「しもつかれ」
 鮭 粕汁 厚揚げ 金時人参 煎り大豆 からし菜 聖護院大根鬼おろし 煎り唐墨・雲丹散らし

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・能勢米煮えばな

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・酢の物
 公魚 蕪 牛蒡黒胡麻煮 土佐酢 木の芽 氷餅

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・御飯 能勢米 
 おかず味噌 海老佃煮 千枚蕪 昆布佃煮 白菜浅漬け 河内鴨炭火焼き 菜の花胡麻よごし 

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・甘味 ぜんざい 蓮の実 揚げ餅 あんぽ柿団子 くこの実 珈琲

 料理全体の印象では、前回より肩の力が抜けて柔らかくなったと感じた、店名が変わっただけでなく、目指す方向性も「旨いものを提供する場」から、より本格的な懐石料理店を目指している様に受け取った。
 各料理は食べた一口目で唸らせるのではなく、一皿食べ終わった時に頂点が来る仕上がりになっていると思う。器も大阪で使われる事の多い派手目な色絵磁器は使わず、染付磁器や織部等の陶器が中心、これは個人的には好ましく感じた。
 まずは「煮物椀」と称した懐石の花形である椀、鰹出汁は控え目に最上質の真昆布を使った出汁が秀逸で、疲れ始めた胃に浸みて行く(笑)。造りでは「この季節に?」と疑ってしまった鰹が意外な程に美味で、ちょっと驚く。
 「しもつかれ」とは元は栃木県の郷土食で、初午(2月)に神社に奉納する行事料理、鮭頭や節分で使った大豆、野菜を酒粕と煮込む、三寒四温の時期にこれを食べると病気にならないとの謂れもあるそうだ。森田料理では勿論料理屋的にアレンジを加えている、北大路魯山人が家庭料理について書いた文章の冒頭で、「世間の人は、自分の身近にある有価値な、美味いものを利用することに無頓着のようだ。」と語っているが、そうは言っても家庭で作る郷土料理を、店でお金の取れる料理にするのは難しいものだ、食材を少し整理するなど細部を詰めていけば、これから面白い料理になると思う。
 ご飯を炊き込みではなく白飯で提供し、煮えばなと炊き上がりの2回に分けて出すのは賛成、甘味の「ぜんざい」も良かったし、それに添えた珈琲が面白いアイディアだと思った。

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 何時の間にか、厨房内には女優の黒木華さんみたいな美少女が登場、4月から正式採用予定の女性料理人だそうで、現在は調理師学校との兼務、これは男性客に楽しみが増えたか?興味のある人は実際に店へ客として行ってみてください(笑)。
 しっとりとした艶と雰囲気が増した感がある「桜花」、これから更に楽しみな店になりそうだ。森田料理長と女将さん、心温まるおもてなしありがとうございました、家庭と仕事の両立は大変でしょうが、またお会い出来るのを楽しみにしています。


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大阪・高麗橋「旬菜 桜花」(2015関西食べ続け⑧)

 関西最終の夜は土曜日だった事もあり、同行者がいなくなってしまった(笑)。昼は一応ヨコメシなので、中華か和食と思ったのだが、アウェーの地で初訪問の店へ夜一人で行くのも結構勇気がいる(笑)、できたら料理人を知っている店へ行きたいと考え、そうだ去年行って好印象だった、高麗橋の和食「桜花」がある、あそこへ行ってみようと決め、事前に「一人でもいいですか?カウンター席でおとなしくしています」と予約を入れた(笑)。店がある場所はビジネス街なので、土曜夜は割と席は確保しやすいみたいだ。
 店には四ツ橋から30分近く歩いて行き19時に到着、この位歩かないとそれまで食べた物を消化しない(笑)、和食店らしくない入口を通り、大柄な森田料理長に挨拶してカウンター席に座らせてもらった。

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 店内は7割程の入りで、前回は平日夜で勤め帰りのサラリーマン風客が多く、団体利用もあったが、今回は少人数客ばかり、同じカウンター席には私より年齢が上と思しき男性一人客も居て、ちょっと安心した(笑)。
 連日の食べ続けで胃も相当疲れて来て、この日は白ワイン一杯と烏龍茶で勘弁してもらい、出していただいた料理は、前回と同じ6,000円のもの、料理のテーマは昨年同様「立春大吉」だった。

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・前菜―村さんの寒ボラの龍皮昆布巻、芽キャベツ乾酪和え(紙下)、桝に塩蒸し豆たたみ鰯肝醤油挟み

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・小吸椀―天然四万十川のり、花柚子

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・割鮮―河豚の炙り、わけぎ、マイクロアマランサス、酢味噌醤油

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  鰹、鰤、剣烏賊、松葉独活、紅立、山葵、辛子醤油、造り醤油

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・炊き合せー若牛蒡稲荷、田辺大根、牛蒡黒胡麻煮、門真蓮根、金時人参、包大根、粉山椒

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・旬菜―河豚煮凝り、鮟鱇肝ポン酢、大根味噌漬け、寒ボラとそのソロバン炭火焼き、牡蠣オイル煮蕪巻、琵琶湖産子持公魚、スルメ雲丹和え、吹田慈姑、紅白長老喜、蕪寿司

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・主菜―蓮根饅頭、蟹真薯包、鱈白子すり流し、軸法蓮草、水辛子

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・御飯―ごま鯖出汁茶漬け、刻しば漬け、焼海苔、生姜

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・甘味―ぜんさい赤飯団子

 全体の印象から云えば、前回は酒肴が続いた感じも受けたが、今回はしっかり「食事をした」と云う充実感がある、料理の流れに起承転結がハッキリして来たと思った。一例として椀物だが、去年はここで「箸洗い」と称して、「大根のすり流し」が出たが、今回量は少な目ながら、クリアな吸い地の椀物、私みたいな古い人間はどうしても「和食の華は澄まし椀」との発想が抜けないので、此処でこれが出るのは王道だなと感じる、でも美味しくなかったら如何し様もないが、上質な昆布出汁が感じられるいい椀だった。
 続く造りは無難だが、炊き合せが良かった、冬野菜を大阪特有の甘味の多い煮物地で煮含める、質のいい野菜が野菜以上の味になっている。

 「旬菜」は通常なら「八寸」だが、九谷の古皿に盛られた魚と野菜料理、これにかけた手間は相当なものだ。この日は土曜なので夜のみ営業だが、平日は近くのビジネスマン&OL相手に850円のランチも出している、その営業後にこうした夜の料理を仕込むのだから、考えただけで大変だ。京都みたいに4~5,000円でランチをやれば昼夜共通の料理も出せるが、此処は財布の紐が固い大阪のビジネス街なのでそうも行かない、それでも低廉なランチを続けるのは、昼来た客が夜にも来てくれる事を考慮しての事だろう、この旬菜盛合せと続く主菜の蓮根饅頭はとても良かった。
 そして「ごま鯖」を使った出し茶漬けが秀逸、私みたいな非酒飲みは、こうしたものがとても嬉しい(笑)。前回、改善の余地ありと書いてしまった最後の甘味も工夫が感じられた、これが少しあると食後感は結構変わるものだ。

 東京でもお酒の飲めない女性を和食に誘うと、「和食って、酒の肴みたいなものばかり並ぶので、飲まない人間にはつまらない」と云われた事があるが、この日の料理なら下戸でも充分楽しめると思う(笑)。
 手のかかった料理内容は、値段を考慮すれば立派だと思う、京都や東京なら8,000~10,000円は覚悟しないといけない(笑)。
 森田料理長が一人客に気を使い、色々と話しかけてくれる、私は決して喋りが得意な人間ではない?が、料理や器の話になると、俄然熱くなってしまう、この日も九谷や漆器の話から始まり、和食の四次元性?や尾形光琳、湯木貞一や「へうげもの」まで話は尽きず、もう一人の年配男性まで交ぜて話が煮えてしまった、おとなしくしているつもりが、一人喋っていた気がする(笑)。同じカウンターの女性客などは「あの親父達、何か変な話で盛り上がっている」と、きっと訝られた事だろう、失礼しました(笑)。
 向学心旺盛な森田氏、一年後は更に良くなっているだろうとの、これからへの期待も持てる料理人だ、再々訪問してそれを確認したい店だ。


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大阪・北新地「天麩羅 ひらいし」(2015関西食べ続け③)

 関西食べ続け巡礼二日目、和歌山駅から紀州路快速に乗って向かったのは、今回もメインの訪問地大阪。余談だが和歌山から有料特急に乗ると「大阪」駅には着かず、天王寺か新大阪で乗り換えないといけないので要注意、東京人は同じ線路を走っているものと思い込むが、違うのですね(笑)。
 大阪駅を降りて、歩いて向かったのが大阪を代表する飲食街「新地」、東京なら銀座のネオン街だが、雰囲気は少し違う、「ママチャリ通勤のホステスさん」がTVで話題になるが、そうした庶民性があって銀座程はお高くとまっていない(様に見える)、特に昼時は「ランチ650円」なんて看板も出ているし(笑)、夜はムニュ10,000円のフレンチ店が、ランチは1,000円と云う落差が激しいのも大阪ならではだ。

 この日の昼に訪れる「天麩羅ひらいし」は、その新地の真ん中にある雑居ビルの3階、東京より安いとは言え、家賃を聞いたらたぶん心筋梗塞になりそうな場所だ(笑)。此の店を訪れるのは2年ぶりで、大阪では希少な天ぷら専門店、それも昼営業しているのはありがたい。私の年齢になると1日2フレンチは正直キツイ、そんな時に別ジャンルで、フレンチ&イタリアンと同等以上にレベルが高い店があるのは、日本ならではと思う。
 引戸を開け店主の平石氏に挨拶し、掘り炬燵式のカウンターに着席、白ワインをお願いして優雅な天ぷらランチが始まった、

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・八尾牛蒡の煮浸し

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・塩昆布レタス

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・車海老の頭

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・車海老

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・車海老を大葉で巻いて

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・琵琶湖のモロコ

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・たらの芽

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・筍

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・メゴチ

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・蕗の薹

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・白子(トリュフ塩で)

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・行者にんにく

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・白魚

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・白いか

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・さつま芋

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・芝海老かき揚げの天茶

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・フルーツ(苺とマンゴー)

 「こんなに出して、大丈夫なの?」と、こちらが心配する位に次から次へと秀逸な天ぷらが出てきた(笑)。
 季節は早春、生きもの達が活動を始める時期だ、この漲る生命力を衣で包んで凝縮する、それをいただく訳だから、身体に活力が湧いてこないとおかしい(笑)。
 前回も感じた事だが、特に野菜が素晴らしい、たらの芽、筍、蕗の薹などは生のままではまず食べられないが、油をくぐらせる事によって、芳香と美味に劇的に変化する。そして約30分揚げ続けた「さつま芋」、これが絶品だった、甘いだけでなく儚いまでの歯応え、舌に残る繊細な後味、これを平石氏の発案でブランデーを付けながら食べる、長く記憶に残る一品になりそうだ。「もう、お腹一杯」と思っていたが、最後の「天茶」を一口啜ると、その美味しさから瞬時に完食、お代わりしたくなった位(笑)、甘味の熊本産と聞く大ぶりの苺が秀逸、これは変に手を加えたくない。
 
 店主の平石氏は日本料理出身、食べ歩きが大好きでワインへの造詣も深い、修業中に江戸前天麩羅に出会い、「自分の進むべき道はこれだ」と開眼し、大阪では珍しい専門店を独立開業した。今回2年ぶりにお会いして、以前より話術が磨かれた印象を受けた、「関西では、料理人は料理に加えて、客と喋れて一人前」と、これは料理人に聞いた話だが、どうやら海千山千の客達の相手で、鍛えられ進化したみたいだ(笑)、最近では外国人客も増えているそうだ。
 大阪で正統派天ぷらを食べるなら、まずお勧めしたい店だ。

 「フレンチの合間に軽くランチを」と考えていたが、この決して軽くない満腹感(笑)、夜のビストロ訪問が心配になったが、とりあえずはホテルまで歩いて、カロリーを消費する事にした(笑)。
 

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
店の点数評価等はしません、「食と人」を描きたいと思っています。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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