最後の晩餐にはまだ早い


麻布十番「ビストロ コティディアン」(2018年6月)

 先日、フランス料理好きの食仲間と話をしていた時、麻布十番「ビストロ コティディアン」の話題になり、「そう云えば、暫く行っていない」とブログを調べたら、去年5月以来ご無沙汰していた、私の年齢になると1年が早過ぎる、光陰は矢ではなくミサイルの速さで飛んで行く(笑)。
 そこで思い立ってランチ訪問をする事に、前日予約だったが平日昼だったのもあり、電話に出た須藤料理長からOKの返事あり。
 6月前半ながら暑い日差しで、同じくご無沙汰している麻布十番の他の料理人に見付らない様、駅からそっと店へ向かう(笑)。最近フレンチ外食は晴天に恵まれるが、日本の蒸し暑い夏はフランス料理に向いている訳ではない。歩きながら「この暑さでは、スペシャリテのカスレは無理か、そうするとシュークルートかな?」と考えていた、料理の選べる店はこの考える時間も楽しい(笑)。12時半の約束だったが、逸る気持ちが早足になったのか、12時少し過ぎに店へ着いてしまい、一番乗りになった(笑)。

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 須藤夫妻に挨拶して奥のベンチシートに着席、ランチメニューを見る。昨年末から夜昼共にメニュー構成を少し変え、夜はアラカルト中心、昼はスープ+2皿+デセールの2,800円からになった。13ヶ月ぶりに来たので、前菜を増やしてもらい合計3皿+デザートでお願いする事に、悩んだ肉料理は今迄この店では食べていなかったブーダンブラン(自家製の白いソーセージ)を選んだ。料理は以下のとおり、

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・ニンジンの冷製ポタージュ

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・長崎産カンパチのカルパッチョ サラダ仕立て

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・麻布十番「ポワンタージュ」のバゲット

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・マダムセレクションの仏ラングドック産白

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・岩中豚のリエットと鶏白レバーのムース

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・ブーダンブランのポワレ

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・アメリカンチェリーのタルト プラリネアイス添え

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・マカロン

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・エスプレッソ

 人参ポタージュの甘さに驚き「これ、普通の人参ですか?」とマダムに訊いてしまったが、オーブンで3時間火を通した後に裏漉したそうで、まるでコックニー訛りの花売り娘が上流レディになったみたい(笑)、家庭では出来ない技法だ。
 カルパッチョは須藤料理らしい盛付、カンパチの厚い身の旨味が印象的。続くリエット&レバームースはコティディアンのスペシャリテ、これとバゲットがあれば幾らでも食べ続けられそうな気がする(笑)、ガルニの野菜エチュベ&赤キャベツの酸味の効かせ方もジャストに決まっている、この店へ来たら味わって欲しい一品。
 ブーダンブランは北フランスのアルデンヌ地方の郷土料理で、ノエル(Xmas)に家庭で作られていた物だそうだ。たしかに黒いブーダンやソシッソン(ソーセージ)が男の料理なら、ブーダンブランは母の料理みたいな優しさを感じる、そして日本の夏に向いていると思う。この店では以前から使っている岩中豚と鶏肉を詰物にしているとの事、仕上げに両面をポワレし焼き目を付け、日焼けした女性の太もも的な色気がある(笑)、下に敷いたポム・ド・ピュレが、これぞフランス料理と云いたい絶妙な味だった。
 デセールがいいのもこの店の魅力、季節の果物を使ったタルトは爽やかで軽やか、微かに苦味のあるプラリネアイスと絡まると、素敵なマリアージュだ。

 久し振りのコティディアンだったが、やはり美味しいなと素直に思った。須藤氏の風貌からマッチョでガッツリした料理を連想するが、実際に食べてみると何処かホッとする優しさがある、日本人が美味しいと思うフランス料理だなと感じる。
 現在フランスで活躍する日本人料理人、その後日本に帰って来た料理人は沢山いる、もう「フランス帰り」を吹聴する時代でなくなった、「向こうでシェフ、スーシェフを任されていました」では、「それがどうした?」位に今の東京フランス料理のレベルは高くなった、それだけに生き残るのは大変だ。
 東京で続けるなら、まず日本人を「旨い」と唸らせる料理を作って欲しい、専門誌等で特に若い世代の料理人の、インスタ映え狙いとしか思えない料理を見るに付け残念に思う、「店へ行って食べないと判らないだろう」と云われても、その食べに行く気が起きない(笑)。

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 食後、須藤料理長と色々と話をさせてもらった、店は去年夏から秋へかけ長期休みをしていたが、人的な問題もあったみたいだ、なかなか従業員が定着しない中で、今日みたいに安定した料理が出せるのが、料理人の実力なのだと思う。
 店名の「コティディアン‘Quotidien’」はフランス語で「日常の~」を表すが、この店が提供するのは「極上の日常」と云える、飛行機に13時間乗らなくても体験出来るのだから、こんな嬉しい事はない(笑)、素敵な午後の時間を過ごせた。


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恵比寿「フラウクルム(FRAU KRUMM)」

 食の最前線で働いているプロから得る情報は大事だ、料理愛好家とは違う視点で「食」を見ているから、あてにならない事も多いネット情報より、得られるものは多いと思っている。
4月に代官山のフランス料理店「レクテ」を利用した際、サービス担当の辻氏に教えてもらったのが、恵比寿にあるベーカリー「フラウクルム(FRAU KRUMM)」で、その時は「何時か行ってみよう」位にしか思っていなかったが、その「何時か」が意外に早く来た。
 前々記事にした恵比寿のフランス料理「ラ メゾン フィニステール」の場所を調べていて、「そう云えば、教えてもらった店はたしかこの近くでは?」と地図を見たら近かった、それなら食事前に行ってみようと思い、少し早めに家を出て店へ向かう事に。
 2016年8月の開業、知っている人居ると思うが、此処はプロテニスプレーヤーの伊達公子さんがプロデュースした店だ。
 http://www.fraukrumm.com/ 
 実際にどれだけ経営に関与しているのかは不明だが、運営会社はあると思う。店名の「FRAU」は雑誌名にもなったが、仏語なら「Madame」にあたり、独語で「クルム夫人」を表す。伊達さんは一昨年開業直後に、ドイツ人レーサーのクルム氏と離婚しているので、この店名で続けていいのかなと?俗な人間はつい余計な心配をしてしまう。勿論店へ行っても伊達さんは居ないし、ポスターやサイン等も貼っていない(笑)。

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 店の場所を説明するのが難しいのだが、恵比寿駅から渋谷橋交差点へ向かって北へ進み、渋谷川手前の道を右に入る、「AFURI」と云うラーメン店の前を進むと小さい公園があり、道に沿って広尾方面へ5分位歩き左側、近くに渋谷川に架かる恵比寿橋がある。

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 ガラス扉を開けると、そう大きくない店内だがお洒落でモダンな都会的空間、下町人間には似合わない(笑)、目の前にパンやカップサラダ等が並ぶ、対面販売方式。

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 メイン商品はドイツパンだが、コーヒーやハーブティー、トートバッグまで販売している、因みに画像のミニトートバッグは税込1,500円。

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 店の看板商品であるブレッツェル等が並ぶ。

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 ハード系食事用パンは客から見て右側。

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 3卓だけだがカフェスペースもある、この日も綺麗なお嬢さん二人がブランチ?中だった。
 販売担当も綺麗なお嬢さん(笑)、後ろが作業場になっていて、男性2人がパンの成形をしていた。
 店員に「ドイツパンらしいものは?」と聞き選んだのは以下のとおり、食べた印象と共に紹介したい。

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・シリアルブレッド1/2 350円(税込)
 鞄の中で少し凹んでしまった、「シリアル(オーツ麦、ひまわりの種、白ゴマ、麻仁)をたっぷり混ぜ込んだ、もっちり柔らかい食パンです。」との説明書きがあった。従来のドイツパンのイメージとは少し違う柔らかめのパン、シリアルが沢山入っていて食べていると歯に挟まった(笑)、トーストして食べると香ばしくなり、自然で身体にいいパンと云う印象。

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・ブレッツェル 240円
 店のロゴマークにもなっている看板商品で人気№1との事、「プレッツェル」ではなく独語では「Brezel」なので、「ブレッツェル」または「ブレーツェル」と呼ぶのが正しいそうだ、ドイツ発祥のパン。本場に近い作り方らしく固く焼き上げ素朴な塩味で、パンと云うよりスナック的な印象、非常食の乾パンに味が似ている(笑)。ドイツでは食事時よりビールと共に味わう事が多いと聞く、仏ブルゴーニュ地方のグジェールみたいなものか。

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・クルムブロート1/2 900円
 店の名前を冠した食事用パン、家で測ったら直系約20cmで重さ495gだった、「これぞドイツパン」と云う印象で重量感あり、食感、粉の香り、酸味等申し分ない、これはまた買いに行きたいパンだ。

 ドイツパンではこのブログで、湯島の「ベッケライ テューリンガー ヴァルト」と広尾「東京フロインドリーブ」を紹介したが、その2店に比べると店造りも含めて新しい感覚のパンだと思った。
 値段は高めで家から遠いのが難だが、ポイントカードも貰ったし(笑)、「レクテ」や「フィニステール」へ行く時は寄ってみたい店だ、駅は広尾だが此処からそう離れていない「Ode」もまだ行けていない、財布は薄いのに課題店は増すばかりだ(笑)。
(店内撮影の許可は得ています)

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亀有「レストラン クリマ」

 JR常磐線亀有駅南口を出るとすぐの場所にあるのが、「リリオ」と云う大型商業施設で、南口駅前の大規模再開発に伴い1996年に誕生した。飲食店が幾つか入店しているが、現在何処も客入りに苦戦している。2006年少し離れた場所に「アリオ亀有」と云う、更なる大型商業施設が誕生し、人の流れが変わってしまったのが大きい。
 駅から一番近い建物は、当初西武百貨店が入居予定だったが、紆余曲折を経てイトーヨーカ堂に変わり、その後売り場面積が縮小されて、現在はニトリやダイソーと云った、格安系のショップが入っている。
 建物7階には葛飾区の区民事務所や図書館があるが、同フロアにラーメン店とファミレスが並んでいた、それが両方とも撤退した後に大規模な内装工事をしていたので、「何が出来るのだろう?」と思っていたら、代わって登場したのが洋食系のレストランだった。調べてみたら運営は愛媛県松山市に本社がある㈱ブシドで、ラーメン店からスタートし、現在は多業種多店舗展開をしている外食企業だった。
 今年4月2日にオープン、一度見に行ったのだが、店入口に精米機を設置する等、只の洋食店ではなさそうな雰囲気があり、後日あらためてランチ訪問する事に。

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 相当お金をかけたであろう、亀有らしくない(笑)洒落たデザインの店舗エントランス。店名の「クリマ(Clima)」は、イタリア&スペイン語で天気・天候の事らしい。
 
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 目立つ場所に置いてある店のロゴ入り精米機、米は岩手産とあるが、たぶんコシヒカリ系だと思う。

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 結構広い店内で60席以上はありそうだ、壁を2面使ったベンチシート席に、個室的なテーブル席、店中央には大テーブルを置き、更に座敷風スペースがあり、掘り炬燵みたいなテーブルを作って小さい子供連れにも対応している、天井が高くて落ち着く空間、壁にはアンリ・ルソー風な大きな絵、内装も相当お金かけている(笑)。

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 ランチメニューで「料理+ドリンク+デザート」「料理+ドリンクorデザート」「料理のみ」と3種類のセットチョイスで、それぞれ値段が明記されているのは分かり易い。
 店の看板メニューはハンバーグと聞いたので、「黄金比の超粗挽きハンバーグ」を3種選べる中から「鬼おろしポン酢ソース」で、コーヒー&デザートも付けて注文した。
 従業員はオープンキッチンには男女混合で5人位、店内サービスは女性が3人で、混雑時にはキッチン内の女性も店内を手伝っている、案内してくれた若い女性は話し方から外国人みたいだが何処の国?中国系ではなさそうだが可愛い子だった(笑)。飲食人材難の中でこれだけ人を集められるのは凄い、先日も牛丼チェーンに入って感じた事だが、今飲食業では、「綺麗で清潔な職場環境」「賃金や勤務時間等条件の明確な仕事内容」「同年代の仲間が居てパワハラ一切なし」等を完備しないと人は来ない、「フランスで〇年働いた、シェフの料理が学べます」みたいな、観念に訴える時代ではなくなった。

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・最初に来た野菜ポタージュとグリーンサラダ
 スープは塩分、脂分を抑えた自然で優しい味、サラダもファミレスで使うカット野菜ではなく自店で誂えたものだと思う、ドレッシングも良かった。

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・黄金比の超粗挽きハンバーグ、鬼おろしポン酢ソース
 ソースは卓上でかけてくれる、肉はたぶん牛豚で200g位か?たしかに「超粗挽き」だ、個人的にはもう少し細かい挽きの方が好みだが、これはこれで美味しかった。ポテトフライの量は嬉しいが味は普通(笑)。

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・自家精米ごはん
 さすがに美味しい、家庭では一度に炊く量が限られるので、このムラのない綺麗な炊き上がりにならない。

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・海老フライとメンチカツ
 同行者が注文した日替わりメインだが美味しそうだった、ちゃんとソースが盛ってあるのは好印象。

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・チョコレートムースケーキ
 これは普通に美味しい、自店で作っているものだと思う。

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・コーヒー

 料理もサービスもファミレスの少し上と云うコンセプトに感じた、値段も「ロイヤルホスト」あたりに近い。味も飛び抜けて美味しい訳ではないが、どれも安定して外れなく、それなりに満足出来る。店内の居心地もいいので、特に長居する傾向の女性客は安心して利用出来る、この日も老若女子が多かった。駅至近、10時から20時までの通し営業で年中無休、一人でも子供連れでも利用可能な自在性があるので、利用価値は高いと思う。
 こうした店へ来ると、飲食業はもう個人で営む時代では無くなりつつあるのかな?と思ってしまう、好立地に出店出来る資金力、人材を集められる組織力、適正価格で料理とサービスを提供出来る運営力など、個人ではとても企業に敵わない。
 個人店を応援したい気持ちに変わりないが、難しい時代になった事は間違いない、個人店主には頑張って欲しい(笑)。



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恵比寿「ラ メゾン フィニステール」

 私はモダン料理が嫌いな訳ではない、北欧系は無理でも現代スペイン料理位までは何とか付いていけた(笑)。それでも一応古典好きと思われているので、「○○〇はきっと好きな料理だよ」と教えてもらうのは、クラシック系料理を出す店が多い。
 今回も食の先輩から誘われた店で、昨年10月恵比寿にオープンしたフランス料理店。名前は「ラ メゾン フィニステール(La maison finistère)」、「フィニステール」とはフランス・ブルターニュ地方の行政県の名前、言葉の意味は「地の果て」になる、ブルターニュ半島の最西端の地。あえてこれを店名にしている事に興味を覚えた、料理人の目指す方向が何となく見えるし、WEB上に公開されている料理画像も古典的だ。
 料理人は沖知充氏、WEBページによると1976年福岡生れ、大阪の名門調理師学校~同フランス校卒業後、銀座「レザンジュ」等勤務し渡仏、ブルターニュ地方やアルボワ「ジャン・ポール・ジュネ」、ヴィシー「ジャック・デコレ」等で働く、帰国後六本木「マクシヴァン」で料理長就任、昨年独立開業を果たした。

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 店の場所は恵比寿~広尾間と云う、東京ではフレンチ最激戦区の一つ、恵比寿駅から恵比寿通りを広尾方面へ向かい、渋谷恵比寿郵便局前の建物になる。

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 一見、1階だと思うが此処は和食で別店舗、2階が店で脇の階段を上がる。予約時間の12時に入店、店内はカウンター&テーブル席で合計14、厨房一人、サービス一人の最小体制だった。

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 基本土曜日だけのランチメニューは3,800、5,800円の2種類、事前に後者をお願いしていた、料理は以下のとおり。

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・イタリア産仔うさぎとキャロットラペ、フォワグラのジュレ寄せテリーヌ、ハニーマスタードソース

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・自家製パン

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・鮎のリエットとほんのりミントの香るクレム・ド・コンコンブル

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・稚鮎のフリットとパン・ド・カンパーニュ

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・白身魚とオマールのクネル

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・ブルターニュ産ウズラ、茸のリゾットのファルス、アスペルジュソバージュ

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・島ソムリエセレクションの白&赤、ロワール産ピノグリ、ドイツ産シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)

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・トロピカルフルーツとババ、バナナアイスクリームとシャンティ添え、ダークラム

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・3種類のネスプレッソから選んだのは、ミディアムボディの「ルンゴフォルテ」

 料理全体の印象は、事前情報どおりクラシック料理を基本にして、各皿の作りが細部まで丁寧、盛付けも変に凝らず正攻法、さすが名門校出身でいいメソッドを受けていると感じた。
 まず前菜のテリーヌがそれを端的に表している、ラプロー(仔兎)、フォアグラ、人参と食感も味も違う3種の材料を、切り方・調理を変え一つの料理に上手く纏めたセンスは見事、見映えもいい。続く季節物の鮎もリエットにして相性のいい胡瓜と合わせ、フランス料理らしさを出している。
 魚料理のクネルはこの日最も印象に残った一品、クネルと云えばフランス・リヨンの名物料理だが、今は現地でも中身のクネルは専門店の物を使い、原型から作る店は少なくなっていると聞く、沖氏の料理は勿論クネル種から起こし、濃厚なオマール出汁と絡んで、「ああ、これフランスだ」と呟きたくなった、もっと量があってもいい(笑)。
 ウズラは王道のファルス(詰め物)料理で安定の美味しさ、スースはジュ・ド・カイユがベースだろう、酒類も相当使っている筈だ、フランス料理はこれでないといけない(笑)。
 デセールもフランス伝統のもの、沖氏は料理人ながらソムリエ資格も有しているそうで、そのためか料理・デセールへのリキュール使いが巧いと感じた。
 食後感は書道で云えば「楷書」の料理だと思った、基本に忠実で正統派、今では古典とされるが、元を辿れば1950~1970年代のフランスで確立した、当時では「新しい料理」が根底にあると感じた。ただ店の場所がフレンチ密集地域なので、これからリピート客を増やすには、あと少し個性と云うか崩しや遊び、「草書」的なものがあればいいと思う。

 サービスを担当するのが島氏で、沖氏とは前店からのコンビとの事、若いながら柔らかな客対応で、代官山「レクテ」のサービス、辻氏と同じ雰囲気を持っている(笑)。
 食後、客席に挨拶に来た沖料理長、専門学校時代から現在に至るまで、色々と話をしてくれた。特に彼が働いていたヴィシーの「ジャック・デコレ」は、私が2009年に訪れているので懐かしかった、当時サービスの男性が「ウチは代々日本人の優秀な料理人が居て、今も2人働いて居る」と、自慢するように話したのを思い出す、沖氏も「優秀な日本人」の一人なのは間違いない(笑)。
 東京では「古屋オーガストロノム」「レクテ」、関西では「オテル・ド・ヨシノ」「コーイン」と、私の好きな古典派料理人は皆20年選手だ、それだけまともなクラシックを作るのは時間がかかるもの、文献を調べては料理を作り、作ってはまた調べる地味な作業の繰り返しで、クリックすれば答えが一瞬で出るものではない、若い人達がやりたがらないのも無理はない(笑)。
 東京では貴重な古典を志向する料理人、それも若手代表として今後に期待したい店だ。


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梅島「角萬 梅田店」

 ラーメン好きなら知っていると思うが「ジロリアン」と云う言葉がある。慶応大学三田校舎近くにある「ラーメン二郎」及びその系列店のラーメンに惹かれ、中毒のように食べる人達をこう呼ぶ、彼等が残した名言に「二郎はラーメンではない、二郎と云う食べ物なのだ」がある(笑)。
 ラーメン界における二郎と似た日本蕎麦店を知ったのはWEB情報からで、その名は「角萬(かどまん)」、私の世代では「角萬」と聞くと「=大塚」と連想するのだが、あれは今なき結婚式場で蕎麦店ではない(笑)。
 「~庵」や「~蕎麦」を名乗る店が多い中で珍しい店名だが、この系列店で出す蕎麦がユニークで固定ファンが居る事で知られる、「カドマニア」または「カドマニスト」と呼ばれるそうだ、「角萬は蕎麦ではない、角萬と云う食べ物なのだ」とのパクリ言葉もある(笑)。その角萬系の1店が足立区内にある事を知り、何とか自転車で行けそうな距離なので、天気のいい日に行ってみた。
 場所を説明するのが難しいのだが、一番近い駅は東武鉄道の梅島駅、歩いたら15分はかかると思う。駅から南へ向かい、第九中学校に沿って荒川岸へ進むと、通称「赤不動」と呼ばれる真言宗の神社明王院があるが、その近くでアクセスはよくない。

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 事前に調べたら開店時間は10時半から13時半で昼営業だけ、不定休で月2、3日休むらしい、此処まで来て店が休みだったら代替の店は周りに無い(笑)。

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 車で来る人が多いみたいだが駐車場はなく、近くのコインパーキングを案内している、道路が狭いので路上駐車禁だが、この日も停めている車があり一騒動あった(店の客ではなかったが)。

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 入店は11時位だがほぼ満席、殆どが男性客でガテン系な作業服姿も数人、店の女性に相席でも構わないかと訊かれて、無問題なので奥のテーブル席に座る。
 席に着く前に「ご注文は?」と訊かれたのだが、厨房一人、店内一人でやっているので人手が足りないのだろう、事前に決めていた「冷し肉なんばん」(税込1,000円)と「海老天」(450円)を注文する、値段は足立区内の蕎麦店に比べたら高いと思う、趣味系高級蕎麦店の価格だ。

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 店内はテーブル席と奥の座敷席で30名位入れる、この靴の並べ方は見事、一人で配膳しながら、こうした気遣いは立派(笑)。なお店内は禁煙ではない。
 客の注文を聞いていると面白い、店の名物は「冷し肉なんばん」で、注文の7割はこれだが、常連は「ヒヤニク」と注文する、100円増しの大盛りは「ヒヤニクダイ」、さらに「別盛り」云うのがあって、つけ麺みたいに蕎麦とツユを分ける盛り方。「注文は?」と訊かれて、「ヒヤニクダイベツモリ」と即座に応えられるには、少し経験が必要だ(笑)。

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 壁に掲げてあるのは先代の写真だろうか?現在の厨房には割と若い男性、店内の配膳は奥様と思われる女性が担当している、彼女の動きがとてもテキパキとしていて、客の男性達を上手く捌いている、下町の飲食店はこれが必要だ。写真のある壁面の後ろがトイレで、なかなか絶妙な位置に作っている。

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 暫く待って運ばれて来たのが「冷し肉なんばん」+「海老天」、ラーメン二郎程ではないが見た目のインパクトはある、太い平打ちの蕎麦、その上に豚肉と長葱を煮たもの、濃い目のかけヅユがかかっている、丼の縁に乗ったのが大きな海老天、真っすぐ綺麗に揚げている。葱を沢山使っているが別盛りで薬味葱も付く。

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 何と云ってもこの麺、いや蕎麦が独特、自家製麺だが蕎麦粉の割合は低そうで5割位か、味も食感も他にないこの店独自のもの、蕎麦自体は見た目より柔らかく、音を立てて啜る食べ方は無理、「ワシワシと食べる」感じだ(笑)。

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 海老天は昔蕎麦屋で食べた天丼の海老だ、衣が厚くこれもワシワシ食べる感覚、注文時に「海老天、衣を薄くして」と頼んでいる客が居たが、若い人は「何だ、この衣の厚い天ぷらは?」と思う人は居ると思う、私は嫌いではないが。

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 肉は甘辛く煮ている、濃い目のかけヅユと絡んで、見た目辛そうだが、食べるとそれ程ではなかった、ただ帰ってから喉は乾いたが(笑)。

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 ヤカンに入れた蕎麦湯をもらい、残ったツユを薄めて飲む、甘辛さが立って独特の食後感だった。
 
 最初は合計1,450円で高いかな?と思ったが、実際に食べてみると、この蕎麦は個性とソウルフード的懐かしさ、そして中毒性がある、画像を見ているとまた食べに行きたくなった。再訪してみたいし、また直系の「角萬御三家」と呼ばれる、他の2店(竜泉・向島)でも味の違いを確認したいと思った。更に本郷店を加えて「四天王」説もあるそうだ。
 角萬へ行った人は、こうして「カドマニスト」になるのだろう(笑)。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
店の点数評価等はしません、「食と人」を描きたいと思っています。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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