最後の晩餐にはまだ早い


五反野「山雄商店」の厚焼玉子

 ヨコメシ系の記事が続いたので、今回は少し息抜き?のため玉子焼の話をする事に(笑)。
 足立区梅田にある「山雄(やまお)商店」は、今では珍しくなった厚焼玉子を製造販売する専門店だ。店の存在を知ったのは足立区を紹介したムック本、更にはTVの街歩き番組にも登場していたので一度行ってみたかった、それまで知らなかったのだが、此の地で40年続けているそうだ、何とか自転車で行けそうな距離なので、寒くない日を選んで出発。

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 WEB上で大体の場所は調べていたが、一番近い駅は東武スカイツリーラインの五反野駅、そこから国道4号(旧日光街道)を渡って少し歩く場所に「ゆうロード」と云う名の小さな商店街があり、その途中に在る。街歩き番組は「北千住特集」だったが、荒川を渡った更に先なので、北千住地域に入れるには無理がある(笑)。

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  「寿し・料理用 厚焼玉子 山雄商店」の青いテントが特徴的、私が子供の頃の東京下町では、この「し」の上に点が付く字を看板等に使っていたが、最近殆ど目にしなくなった。ついでに云うと、昔の東京寿司屋の玉子焼は、厚焼でなく、海老や白身魚の擂り身と混ぜて焼く、薄いカステラみたいなタイプが主流で、寿司に厚焼を使うのは歴史的には最近だと思う。
 店は遠目には豆腐屋みたいにも見えるが、売っているのは玉子焼のみ。WEB情報によると、自店での販売の他に寿司屋や料理店等向けに、築地等で売られているとの事、そのための容器が天井まで高く積まれている。

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 陳列もシンプルそのもの、販売アイテムは大きさが違う4種類を並べて居るだけ。
 せっかくだから一番大きい物を買おうとして店内を見ると、親父さんが一人で玉子を焼いている、多い時は一度に十個の玉子焼器を並べて使うとの事、動作に無駄がない(笑)。「ちょっと待ってくださいね」と云われて作業の区切りを待つ、基本奥さんと二人らしいが、住居兼店舗みたいで、家事があると主人一人で客対応もする、慣れている様子だが大変そう。「雑誌で見て、自転車30分乗って来ました」と話したら、「それはありがとうございます」と応える、熟練職人にありがちな、不愛想な雰囲気は感じさせない穏やかそうな人だった(笑)。

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 購入した厚焼玉子の大(税込650円)、大きさは実測21.5×10×3cmで約600g、堂々とした質感、築地で製造販売している有名店の物と大きさの比較はしていないが、値段は一割位安い気がする。
 この記事を書くにあたり、玉子焼についてWEB上で調べてみたが、よく「だし(出汁)巻き玉子」と呼ぶが、「玉子焼」と「だし巻き玉子」は別物で、関西では出汁が入っていても砂糖などで甘味を加えた物は「だし巻き」とは呼ばないとあった。
 また玉子焼器の形も関西と関東では違い、関東では正方形の物が使われる事が多く、関西では長方形、この店も見たら「江戸形」とも呼ぶ正方形だった。

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 これは初回に買った物だが、二回目に比べて表面の色が若干薄い、この違いは全て一人でやっているからだと思う、同時に複数個焼けば個体差が出るのは仕方ない事だろう。

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 肝心の味だが、甘味を感じる関東風の焼き方、原材料には「鶏卵・砂糖・みりん風調味料・かつおだしつゆ・塩・穀物酢・調味料(アミノ産等)」と表示がある。尖っていなくて穏やかで優しい味。築地場外市場で玉子焼が有名なのは「大定」と「松露」が双璧だが(最近は「丸武」も入れ「御三家」と呼ぶとも聞くが)、私の味記憶では「大定」の方に近いと思った。
 チラシや握りの寿司や弁当等、何にでも使えそうだが、ご飯のおかずにするより、例えば蕎麦を食べる前にこれと「板わさ」で酒を呑む、みたいに食べるのが粋な江戸風か?(笑)。

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 私は以前からやってみたかったので、この厚焼玉子で実行したのが「厚焼サンド」(笑)、家にあったクルミ入りの食パン2枚をトーストにして、バターを薄く塗り「これだと味が薄いかな?」と思って、家にあったトリュフ塩を少し振り挟んで食べる。それなりに美味しかったが、思っていた程には感動しなかった(笑)、今流行りの「生食パン」なら、もっと合うのかも知れない。
 私の子供時代には贅沢品だった玉子焼だが、今の子供達にはあまり好まれず、お弁当の主役ではなくなりつつあるとも聞く、「巨人、大鵬、玉子焼」の昭和は遠くなりにけりか(笑)、そう云えば駅弁やコンビニ弁当に入っている玉子焼は概ね美味しくない(笑)、あれでは人気もなくなる。
 山雄商店の厚焼玉子みたいな本物を、一度味わって欲しいものだ(笑)。

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外苑前「フロリレージュ」(2017年3月)  

 関西から帰って顔も身体もパンパンに膨れ(笑)、暫しの間ヨコメシ系を遠ざけていたが、二ヶ月前から予約していた店をキャンセルする訳にはいかない、東京でのフレンチ再開は外苑前「フロリレージュ」から始める事に。
 2月にタイ・バンコクで開催された、サンペレグリノ主催「アジアベストレストラン50」に於いて、初登場ながらいきなり14位の上位に選出された「フロリレージュ」、今迄以上に世界から注目される店になった。レセプションの女性が話していたが、英語の電話とメールが急に増えたとの事、個室を含めても20席なので、これから更に席確保が難しく電話も通話中になりそう、今回賞発表前に予約出来たのはラッキーだった(笑)。
 勢いのある店は一歩店内に入っただけで空気感が違う、そして席に案内されると、スタッフ達の緊張感とやる気が、フランス語で云う「アトモスフェール‘atmosphère’」が上質である事を感じさせる。
 まずは川手料理長にランキング入りのお祝いを伝える、応える彼の表情や言動にも自信と余裕みたいなものを感じた、注目される店のスタッフを率いるリーダーは、迷ったり悩んだりしても顔に出せなくなる、それを続けると本物の自信が出来る(笑)。

 新店に移ってから昼に1回利用したが、その時は夜メニューをお願いしたので、ランチメニューは今回が初めて、どう違うかの楽しみもあった、以下に当日の料理を紹介したい。
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・提示された7品構成のランチメニュー、ディナーより4品少なくなる。

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・投影、ふきのとう

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・タケノコ イカ墨

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・旨み、椎茸

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・甘鯛 菜の花

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・分かち合う(宮崎産あかうし藁焼き)

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・切り分けドレッセした皿

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・レモンのソルベ

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・贈り物、アマゾンカカオ

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・奈良産烏龍茶

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・苺のパートフィロ

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・今回のドリンクペアリング

 まずは蕗の薹シフォンケーキの心地よい苦味で目が覚める(笑)、次の筍・烏賊墨パスタ・生烏賊を重ねた料理は、食感の違う素材の組合せで新たな味を構築した秀逸な皿、続く埼玉産原木椎茸はトリュフと重ねる事によって、「旨味椎茸、香りトリュフ」の見事な結合になっている。
 魚料理の鱗を付けて焼いた甘鯛は、大胆な量を乗せた菜の花の食感、香りが「春」を感じさせた。
 そして此の日のハイライトが宮崎産あかうし、確認はしなかったが「鰹タタキ」みたいに藁を使って表面を炙っていると思う、肉熟成はしていないと感じたが、濃い旨味ある赤身肉の食感と香りが口中に広がる。これだけ上質な牛肉は塩胡椒だけで食べたくなるが、其処はフランス料理店の矜持で、トマト水と蜂蜜を使った甘酸味のソースがプラスの方向に効いている、また焼いた肉の上に同じ肉のタルタルを乗せると云う、禁じ手みたいな技にも納得(笑)。日本のフランス料理店の牛肉焼系料理では、あまり感心するものに出会えないでいたが、これは過去国内では三指に入れたいと思った。
 デセールは現在のパティシェールになってから進化していると思う、旧店舗ではデセール単体で完結していたが、現在は料理との相乗で完成する方向と感じる。ドリンクペアリングも先駆店だけあって、ユーモアあるアイディアが面白く、味も高評価したいものだった。
 結果として品数が少なくなった事も忘れる(笑)、充実した料理構成だった。

 正直に云ってしまうと、関西でヘビー級古典フレンチを堪能した後だったので、比べたらフロリレージュは料理軽いだろうと、そう期待は大きくなかった、ところが実際に体験してみると、「これは関西とは違うTokyoならではの料理だ、存在価値は大」と、納得させられた。特に食感や味と香りの方向が異なる食材を組合せ新しい料理にするのは、この料理人ならではの特質。
 これだけ人気店になったので、次の利用は暫く先になるかなと思っていたが、この日の料理が秀逸だったので、思わず次回予約を珍しくも席の空いていた日に入れてもらう事にした、電話も繋がり難いので、その場で予約するのが最良の方法なのは間違いない。もっとも京都の某有名店みたいに、食後「今日、次の予約が取れる日は〇月〇〇日です、希望される方は?」と、店側から持ち掛けられるのも、気分が白ける限りなので、難しい処ではあるが(笑)。
 「世界何位」「星幾つ」とかは、私自身店を選ぶ基準にはせず、かえって眉に唾付けてしまう捻くれた人間だが、少なくともこの店に関しては「14位でも低いのでは?」と思ってしまった。今の東京が世界に誇っていい店の一つだと思う、つい最近発表された「世界ベストレストラン」でも99位に選ばれたと聞く、どうやら上昇は止まる事ない(笑)。


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大阪・布施「パパノエル」(2017関西食べ続け⑨)

 苦しかった食べ続けも遂に最終日、最後に選んだのは、十年来の付き合いになる友人の店、東大阪市布施のフランス料理「パパノエル」だった。
 東京も下町と山の手では街の雰囲気や人間の気質が違うが、大阪もキタとミナミでは相当違う、元々は摂津と河内と云う別の「国」だった事もあり、話す言葉も微妙に違って聞こえる、東京人がイメージする「大阪人」はおそらく南側に住む人達だと思う(笑)。更に言うと同じ南側でも東と西ではまた別の雰囲気になる、「パパノエル」の在る東大阪市布施は近くの鶴橋や八尾も含めて、おそらく「昔の大阪」が一番残っている地域ではないかとも感じている、東京なら墨田や江東区辺りになるか?
 中之島、天満や北浜辺りは再開発が進み、街並も綺麗だが、歩いていても東京と変わらず、あまり面白くない、また難波や道頓堀界隈も外国人観光客(特にアジア系)が溢れているので、日常の大阪を感じたいなら東大阪がいいと思う(笑)。

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 「パパノエル」は近鉄布施駅南口を出て、二条通り商店街へ右折、「フラワーロードほんまち」に出たら左折してすぐの場所、そのまま直進すると布施戎神社がある。

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 店到着は12時だが、店前には既に自転車が数台停まり、「ご予約で満席」の貼り紙も出ていた、土曜昼なのもあって店内は奥様達(マダムではない(笑))で賑わっている、大阪ランチはスタートが早い(笑)。
 入店後、サービスを担当する奥様に挨拶し、入口近くの個室風な席に座らせてもらう、以下に料理を紹介するが、この日使い続けていたカメラの調子が悪くて、前菜とデセールの撮影に失敗した事をお詫びしたい。

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・八尾産若牛蒡と鴨のスープ、牛蒡の葉を蓋にして

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・葉蓋を開けた処

・前菜三種(海老のファルシ、牡蠣とアボガド、アズキハタとラタトゥイユ)画像なし

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・パン二種

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・英虞湾直送の石鯛、ブイヤベース風サフランソース

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・鹿児島牛ミミクリ肉の赤ワイン煮込、干柿、百合根と小松菜

・デセール三種(フルーツグラタン、オレンジのコンポート、ミルクのアイス)画像なし

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・コーヒー

 壺に入ったスープを見て、すぐに「ボキューズだ」と連想した(笑)、P・ボキューズのスペシャリテ‘Soupe aux truffes noires V.G.E’のパイ皮に変えたのは、東大阪八尾の名産若牛蒡の葉、スープ中にも葉と茎に鴨肉団子、これはなかなかの名品だと思った。
 前菜三種もホッと心和む優しい味、食べ続けで疲れた胃にもスンナリ収まって行く。次の石鯛が抜群だった、市場を通さずに漁師から直接送られて来た魚で、身の締り、旨味が抜群、塩焼でも美味しいだろうが、フランス料理の技法によって更に一段上の料理になっている、やはり白身魚の旨さは関西だ(笑)。
 肉料理の「ミミクリ」とは、牛の耳付け根部分で頬肉以上に希少部位、私もたぶん初めて食べるが、頬肉より噛み応えは感じるが肉味があり美味しい、洗練され過ぎない煮込方で、惣菜風な印象もありながら、やはりこれはプロでないと出せない味だ。
 デセールも良かった、牛乳アイスは何処か懐かしく子供時代に帰れる味、母乳の記憶を呼び覚ますのかも知れない(笑)。

 奥田周一料理長は地元出身で、有名調理師学校を卒業し洋食店や神戸のフランス料理店勤務後渡仏、帰国後1986年に布施で独立開業、2003年に現在地に移転した。こう云っては失礼ながら、フランス料理があまり似合わない街で30年続いたのは、地元客の嗜好に合わせる柔軟さがあったからだと思う。
 年齢は私とあまり違わないので、既にベテラン料理人の領域、作る料理にもそうした大人の懐の深さ、穏やかさを感じさせてくれた、此処へ辿り着くまでには色々とあった事は想像するが、今は「信じたこの道を私は行くだけ」と云える境地に至ったのではないか?
 先に現役リタイアした私が云うのも何だが、体力の続く限りは仕事を続けて、此の地で地元の人達に愛される店である事を願っている(笑)。
 店を出た後は近くにある布施戎神社へ旅の無事?を感謝し、不信心者ながら御参りをする事に、日本一大きいとされる戎像があるが、私は布施駅構内にあるサンタさんみたいな「えべっさん」像の方が親しみ易くて好み、この像何処となく友人に似ている(笑)。
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 今回の関西食旅行は例年以上に濃かった(笑)、加齢により短期間に食を詰め込むのは正直辛くなって来ているが、充実した楽しい5日間でした。この間に同行同席していただいた友人、温かく迎えてくれた店の方達に感謝です、また限られた日程のため、今回伺えなかった店の方にはお詫び申し上げます。

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 最後に南海電車で関空へ向かうために、なんば駅の改札を通ったら、左手に見えたのが「南海そば」のスタンド、「そうだ饂飩を食べていなかった」と、止せばいいのにフラフラと吸い込まれ、「きつねうどん」(300円)を食べてしまった事を白状します(笑)。


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大阪・上本町「レストラン・コーイン」(2017関西食べ続け⑧)

 食旅行2日目に「オテル・ド・ヨシノ」に集まった、古典フレンチ好きの重量級選手達との会話で名前が挙がり話題になり、去年私が最も回数行ったレストランの料理人も「一番行ってみたい店」と話していたのが、これから訪れる事になる、大阪上本町の「レストラン・コーイン」だった、向かう方向が同じだと、結果辿り着くのも同じ場所になるみたいだ。「君達が気付くもっと前から行っているぞ」と、思わず自慢したくなるが、そこは笑って「そうですか」と相槌を打つ事にしている(笑)。
 去年は食旅行1日目に訪れたため、その後の訪問店の印象が薄れてしまった、それがあったので今年は日程最終夜に予定を組む事に、在関西の料理人で、やはりこの店に関心を持っていた友人と相席、1年ぶりに「上本町の巨匠」またの名を「無冠の帝王」が棲む館の扉を開く。 
 去年と店内のレイアウトが少し変わり、店奥が円卓から長卓になったが、この席に座らせてもらう、サービスを担当するのが、以前にもこの店で働いていた若い女性、有名調理学校の専門課程卒業生との事で、最近まで渡仏していたそうだ、料理の質問をしても「シェフに訊いてきます」みたいな事はなく、的確に答えるのはさすが。彼女もそうだが、今回の食旅行ではどの店も女性の活躍が印象に残った、今関西の食は女性達が支えている(笑)。

 湯浅料理長に挨拶し始まった濃厚な饗宴、まずは料理を紹介したい、なお後で湯浅氏より料理について説明があり、全部を載せると長くなるので、ブログ公開には適当でないと思われる部分(笑)等は要約し記す事にしたい、『』内がその説明。
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・アミューズ(赤ピーマンのババロア、カニ身、コンソメジュレ、カニみそ)
『カニは鳥取産活ズワイ蟹、熊野牛のコンソメジュレです。』

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・トリュフサンド(手前)とトリュフバター
『「フィセル」(ブランジェリー)のパンドゥミに自家製バターを塗り、オニオンソテーとトリュフスライスを挟みオーブンで焼いています。』(トリュフサンド)
『自家製バターにトリュフアッシェ、コニャック、ポルト酒、藻塩を練りました。レーズンバターのトリュフバージョン。』(トリュフバター)

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・ベレオロール‘Belle aurore’※
『(ファルスは)鴨、鳩、子牛、プーレ、フォアグラ、リードヴォー、猪、鹿、トリュフ、ピスタチオ等です。』

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・鳥取県産ミンククジラのタルタル仕立て、自家菜園の野菜添え
『今はなかなか手に入らない生ミンククジラの赤身。仕入先の鮮魚店が一頭買いしています、(入荷は)2ヶ月に1回位で今回は1トン物です。塩を打ち6時間後常温燻製1時間かけ、上のキャビアも燻製かけています。卵黄は土佐ジロー。』

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・コンソメクリュスタッセ
『オマール、赤座、足赤の頭でフォンをとり地鶏のササミのミンチでクラリッフェ。SPゲストの予約が入っている時だけ時間を逆算してそのまま(鍋ごと)プレゼンします。』

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・スッポンとアワビの赤ワイン煮
『スッポンは赤ワインと牛のフォンで1時間ほど煮る。縁ペラ部分を使いゼラチン質とコクを楽しんでもらいます。仕上げに軽くアワビを煮込み煮汁を煮詰めてソースにしています。通常なら魚のポアレやブレゼにブールブランやソースヴァンブラン等を合せた皿を提供するのですが、他(店)で沢山食べて来ると予想してこの料理にしました。』

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・ブレス産ピジョンのファルシー

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・同腿肉を使ったトリュフのリゾット
『ピジョンは綺麗に皮を残して、ささ身、フォアグラなどのファルスを中に詰込み全体を皮で覆い焼く、通常でしたらクレピーヌを使いたいところですが、ピジョンの皮でのみで覆うのがポイント、軽く仕上げたいためにそうしました。ソースはジュドピジョンに少しレモンを加えたもの。ガルニチュールはトリュフと保存していた米とピジョンの腿、内臓をフォンドピジョンとトリュフ、ジュドトリュフでブレゼしました。』

・フランボワーズのソルベ(画像なし)

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・ブリュレ
『トリュフと共に保存していた土佐ジローの卵黄でブリュレを作っています。飴のスフレと食べると(食感が通常の)ブリュレとなるようにしました。グラスもトリュフと土佐ジロー卵です。』

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・ミニャルディーズ

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・フレッシュアンフィージョン

※筆者注:料理中の「ベレオロールBelle aurore」とは、リヨンを中心に作られているパテ・アンクルートの一種で、型に入れないで焼く、その形から使っていた枕を連想し、子供時代の想い出から、母の名で呼んだのが料理名となったと伝えられる。

 全部について語ると長くなるので、特に印象に残った料理を挙げると、まずは鯨のタルタル、私の世代は「鯨=給食の竜田揚げ」のイメージがあり、あまり美味しいと云う認識ではなかったが、このタルタルには度肝を抜かれた(笑)、過去食べたどの牛タルタルより美味、これは「知ってしまった不幸」で、もうこれから牛肉では満足出来なくなりそう。友人も「金属バットで殴られたみたいに旨い」と云っていた(笑)。
 次のコンソメも脳髄に突き刺さる味と香り、時間とお金をかけたその一番いい状態を提供する、鍋全部飲みたい位だが、次を考えて一杯で止めておいた。スッポンと鮑で作る魚料理も圧巻、和の食材を使いながらも、王道真中直球のフランス料理にするのは、この料理人ならではの資質だ。
 そして「もう食べられないかな?」と思いながらも完食した、意外にも軽やかな鳩料理に加え、それに添えられたトリュフリゾットが異次元の旨さだった、満腹で少量しか食べられなかったのが心残り、誰も見ていなければ入れ物抱えて帰りたかった(笑)。
 デセールのトリュフブリュレは昨年版よりモダンになっていた、料理人は「私はモダンも作れるのです」との事(笑)。

 何回か通った店は「次はこんな料理が出るのでは?」と、行く前にある程度予想する、多くの店でそれが大きく外れる事はなくなったが、此の店はこちらの想像の斜め上を行く料理が出て来る(笑)。
 料理人の説明を読んでわかると思うが、料理はオートクチュール、食べる側の経験値や体調を考えて調理を変える、料理力に加えて推理力や洞察力も駆使するのでIQも高そう、過去私に何の料理を出したのかも概ね記憶(記録ではない)していると思う、アミューズ以外は殆ど料理がカブっていない。
 自分が海原雄山に料理ともてなしについて説教される山岡士郎になった気がした(笑)、今回の対決?も完敗に終わった。そして何より感心したのが、これだけ食べても翌朝胃が重くなく、ホテルの朝飯を普通に食べられた、これは特筆すべき事。
 記事を読んで此の店に興味を持ったら、ランチよりディナーへ行くべき、更に電話予約時に何故行きたいか理由を伝える事を勧めたい、「このブログを見た」でも構わない(笑)、客側が本気ならそれ以上の本気で応える料理人だから。
 濃い大阪夜の締めくくりに相応しい濃厚なトリュフ料理に酔い、何故か古い歌「アカシアの雨がやむとき」を口ずさんで帰り道を歩いていた(笑)。



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大阪・白鷺「グリル家Kutta(クッタ)」(2017関西食べ続け⑦)

 フランツ・カフカ「変身」の主人公は、ある朝目覚めると自分が巨大な虫になっている事に気付くが、関西4日目の朝にホテルで鏡を見ると、私は顔が膨れているのに気付いた(笑)。
 この日は毎年恒例の南大阪への遠足を敢行、まずは市営地下鉄で「なかもず」駅へ向かう、大阪狭山在住の食通友人と行動するためだ。
 車に乗せてもらい先ず向かったのは、友人の馴染みの店である、堺市白鷺の洋食店「グリル家Kutta(クッタ)」、本日のランチは此処でいただく事に。

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 店は2013年に開業、遠目でも目立つ赤いテントと、大阪的な直接客の心情に訴える店名に特徴あるが、ランチ700円からと云うリーズナブルな価格設定で、近くに大阪府立大学もある事から、学生や近隣住民に支持され人気店になっている。
 ランチタイムの席予約は出来ないが、友人はピーク時を外せば大丈夫だろうとの事で、13時近くに店に到着した。 
 店内は予想以上に混んでいた、総席数は30以上あるが、テーブル席は既に満席、カウンター席に空きがあったのでセーフだった。

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 ランチメニューは9種類に加え、一部の料理を組み合わせたコンビプレートもある、魅力的な料理が並ぶが、迷った末に「ハンバーグ&海老フライのコンビプレート」(税込1,050円)に決め、ご飯は小盛りにしてもらった(笑)。

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 ランチ時の店内は大学生らしき若い男女で賑わう、ベビーカーを連れたママさん達もランチ会をしている。夜は団体の貸切り宴会にも対応、コースメニューに加えてドリンク飲み放題もしているそうだ、店名入り焼酎も置いてある。

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・ポタージュスープ

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・ハンバーグ&海老フライのコンビプレート(ご飯少な目です)

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・友人が注文した「ローストビーフ丼」(980円)

 海老フライは予想以上に大きく、真っ直ぐ綺麗に揚げている、タルタルソースも美味しい、これなら海老好きの大阪人も納得だろう(笑)。ハンバーグは東京で食べるより柔らか目でフワッとした作り、たしか大阪の他店でも似た感じだったので、柔らかな口当たりが好まれるのかも知れない、ドミグラソースも丁寧な作りでした。
 友人は「此処でランチを食べるのは、お金持ちの学生」と話していたが、たしかに私が学生時代には、こんな上質なランチは一回も食べた記憶がない(笑)。
 羽賀稔料理長は有名調理学校卒業後、他店で経験を積んだ後に此の地で独立開業したと聞く、サービスを担当するのは奥様、気の短い大阪人は料理の出が遅いとすぐ催促があるそうだから、特にランチタイムは二人で大変だろうなと思う、見た感じでは料理はスムーズに出ていたが。
 家の近くにあったら、きっと通うだろうと思う店、変に背伸びする事なく、此の地で輝いて欲しいと思ってしまう、ご馳走様でした。

 食後は堺市内で江戸時代から続き、最近白イチジクの栽培直販で注目されている農家を見学訪問、入母屋造りの立派な日本屋敷で奥様に話を聞くが、偶然イチジクの木を植えた処、土地と合ったのか実が成り増えていったとの事、長野県でも林檎から桃へシフトする農家が増えている話を聞いたので、こうした先駆的な試みはいい事だと思う。
 その後堺市内美原区平尾にある「ファーマーズオリジン」へ寄る事に、二人の共通の友人である料理人が、此処の厨房を任されたので激励に訪れた。
https://r.gnavi.co.jp/hakmh9cu0000/
 元々工務店が経営していたカフェレストランだが、3月より熟成肉と産直野菜料理の店としてリニューアルする、これは興味津々で期待していいと思う、ただ車でないと行き難い場所ではあるが。

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・此処でいただいたのが、自家製さつま芋ケーキとコーヒーのセット、税込500円は安い(笑)。

 最後は堺が誇る、唐辛子と和香辛料の専門店「やまつ辻田」を訪問する事に。
http://www.yamatsu-tsujita.com/
 此処も豪壮な純和風建築で、居心地の良いゲストルームまで備えている、相手をしてくれたのは、格闘家と云っても通用しそうな大柄な辻田社長、話をしていると武芸の達人にも見えてくる(笑)。写真を見せてくれたが、サン=セバスチャンの「アルサック」や「ムガリッツ」でも此処の香辛料を使っているそうだ、世界中の料理人から山椒・干し柚子・鷹の爪と云った、和の香辛料が注目されている実態を知るが、現在国産の原料を得るのがとても大変な事を語ってくれた。
 お土産に石臼で挽いた粉山椒と七味唐辛子を購入、これで「大人の遠足」は終了しました、夕方の時間ギリギリまで付き合ってくれた友人に感謝です、ありがとうございました。
 荷物があったので一旦ホテルに戻り、いよいよこの食旅行の「真打登場」とも呼ぶべき店を訪問するため、急ぎ歩いて上本町へ向かう事に、詳しくは次の更新記事で。

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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