最後の晩餐にはまだ早い


大阪・天王寺「うどん和匠」(2018関西食べ続け⑤)

 「オテル・ド・ヨシノ」での華麗なる午餐会が終わり、和歌山駅から大阪へ帰る前に、和歌山土産を買おうと、JR和歌山駅に直結した商業施設「MIO」に寄ったのだが、一階にあったコーヒーショップが何時の間にか無くなり、ガチャガチャ置場になっているのに驚く。

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 以前「オテル・ノ・ヨシノ」のディナーへ行った時は、階下のホテルに泊まり、朝食は摂らずに駅まで歩き、此処のモーニングサービスを注文していた、店のオバチャン達が実にいい味を出していたのだが、撤退はとても残念。同じフロアに残っているのは、全国展開しているコーヒーチェーンとベーカリーカフェ、機械でコピーしたみたいに何処へ行っても同じスタイルの店になり、面白くなくなってしまった。人間が営んでいた店の後が自販機等の機械が並ぶスペースになるのが、今の日本を象徴している気がする。
 紀州時快速の中では爆睡(笑)、天王寺駅で降りてホテルへ戻ると、もう夕方5時近くになっていた。食べ疲れもあって、このまま部屋で寝てしまおうかと思ったが、せっかく食べ続けに来たのだから、一食パスは勿体ない?(笑)、なにか軽いものでいいから近くを探そうと思った。旅行前に在阪の友人から教えてもらった、カレーうどんが美味しいと聞く店にも惹かれたが、地下鉄往復なので和歌山で満タンになった身体が重い、うどん店なら近くでもあるだろうと、スマホ検索で引っかかったのが、讃岐うどんを提供する「うどん和匠」と云う店、此処もカレーうどんが名物との事なので、行ってみる事にした。

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 店は天王寺駅前交差点から玉造筋を東に進み、南河堀の交差点を左折、天王寺中学校の道路を挟んで斜め前辺りになる、2015年9月開業だから比較的新しい店だ。
 入店したらほぼ満席、カウンター席の奥が空いていたので、「此処(座って)いいですか?」と厨房内の店主と思しき男性に訊いたら、「時間かかりますが、いいですか」との事、どうもこの日たまたまだと思うが、店主一人の対応つまりワンオペになっていて、料理出しが遅くなっている様子だ、これからまた別の店へ行くのも面倒だし、お腹が空いている訳でもないから(笑)待つ事にした。

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・メニュー

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・店名物カレーうどんの種類
 この中から「ちく玉天カレー」(750円)を注文する。

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・洒落た箸袋

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・讃岐なので砥部焼の器を使っている。

 店内はカウンター8席の他に小上がりみたいな座敷があり3卓12席、これ料理を作りながら一人で回すのは大変だ、東京同様に大阪も飲食の人材不足と聞いたが、その実態を見た思い。
 その後、中国系らしき若い女性が三人で入店して来た、ガイドブックでも見て来たのか、店主が相当待つ事を伝えたのだが日本語が通じない、見かねた一人の男性客が英語で、混雑していてかなり待たなければならない事、現在三人の席が無く店内が狭いので外で待つ事になるのを伝えたら、諦めて出て行った。店が頼んだ訳でもないのに、こうした事を進んでやるのが、やはり大阪人だなと感心する(笑)。

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 そんな事もあって結構待ったが、ようやく順番が来て、店主が運んで来たのが「ちく玉天カレー」、見た目のインパクトはかなりある(笑)。
 ちくわ天は一本を縦半分に切り、玉子は半熟に茹でたものを揚げてある、カレーは割と粘度のあるタイプで、辛さ・スパイシー感は少ない、何処か懐かしく分り易い味で、これ決して悪口ではないのだが、ボンカレーの味に傾向が似ていると感じた、大塚食品も大阪だから、これが受け入れられるのではないかと思った。
 饂飩と出汁はなかなかいい、出汁は昆布ベースにイリコ等を加えた混合だと思う、当たり前だが駅スタンドの饂飩とはレベルが違う、でも個人的には「南海そば」の饂飩も好きなのだが(笑)。
 これで750円なら安いと思う、電車賃かけて行くと云うより、家の近所に在れば月一位では行きたい店だ、従業員が安定して就く事を願ってしまう。

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 店を出て、ホテルへ帰る途中に見上げると、其処には「あべのハルカス」が光を放っていた。西城八十作詞、船村徹作曲で村田英雄が歌った「王将」の中に、「空に灯がつく 通天閣に おれの闘志が また燃える」とあるが、今なら通天閣ではなくあべのハルカスだなと思い歩いていたら、何時の間にか「王将」の歌を口ずさんでいた(笑)。


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和歌山「オテル・ド・ヨシノ」(2018関西食べ続け④)

 関西三日目は、前半戦のトリとも云える毎年恒例の紀州参りを敢行、和歌山「オテル・ド・ヨシノ」を訪れる事に。宿泊先が大阪天王寺だったので、JR紀州時快速に乗れば1時間10分で和歌山駅に着ける、駅からはタクシーなど乗らず線路沿いを歩き、まずは胃の中を空にしないといけない(笑)。
 12時過ぎに「ビッグ愛」に到着、エレベーターで12階に昇れば、其処に「オテル・ド・ヨシノ」と「カフェ・ステラマリス」が入った一角がある。

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 レセプションで女性サービスに挨拶し、調理場近くの円卓に案内される、この日は曇り空だったが、窓際に置かれたベネチアングラスの燭台と、眼下の高い建物の少ない和歌山の街並みが、不思議なコントラストを見せる。着席時は空席もあったが、13時過ぎには大体満席に、カフェスペースも混んでいるし平日昼ながら集客力は秀でている。
 今回食べ続けのフレンチ部門は、前記事のとおり「P・ボキューズに関連した料理」がテーマだったが、手島料理長には「スープV.G.E」を作って欲しいと、あらかじめお願いしていた。1975年ボキューズが料理人としては初めて、仏政府からレジオン・ドヌール勲章を授与され、それを記念したエリゼ宮での午餐会のために創作した料理で、「V.G.E」とは当時のフランス共和国大統領、ヴァレリ・ジスカール・デスタン(Valéry Giscard d’Estaing)の事。この午餐会ではボキューズの他にも、当時の名料理人達が各自のスペシャリテを提供し、伝説的な会食になった。
 手島料理長はおそらくこの故事に因んだのだろう、私の希望はとんでもない結果を生む事になってしまった(笑)、まずは以下をご覧ください。

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・グジェール

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・「びっくりトリュフ(truffes surprise)」、隠元、マーシュ、ミュスカジュレ(ルイ・ウーティエ)

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・店オリジナルのパン

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・「スープ・オ・トリュフ・ノワール・ヴェ・ジェ・ウ( Soupe aux truffes noires V.G.E)」(ポール・ボキューズ)

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・縮緬キャベツとフォアグラと黒トリュフのテリーヌ(吉野 建)

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・和歌山県産ヒラスズキのエスカロップ、マリニエール風(ジョルジュ・ブラン)

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・本州鹿背肉のロティ、牛蒡、シュペッツレ、ジロール、ジャガイモのムースリーヌ(マルク・エーベルラン)

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・細川メートレス兼ソムリエールセレクションの白赤

・和歌山黒沢牧場の牛乳ソルベ(Aya 杉江:「オテル・ド・ヨシノ」シェフ・パティシェール)※失礼、画像失敗しました。

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・金柑とキャラメルのムース、パッションフルーツのグラス、キャラメルソース(同上)

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・和歌山県産アンフィ―ジョン

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・ミニャルディーズ(ショコラマカロン、タルトノア、カヌレ)

 料理名後のカッコ内は、その料理の原型を考案した料理人名、ボキューズ以外はエリゼ宮午餐会の料理人達より少し後の世代になる。フランス料理に詳しい人なら知っている名前なので各自には触れないが、もし興味を持ったらWEB検索してみてください。
 「びっくりトリュフ」とはフォアグラを丸めてトリュフの微塵切りで覆い、一見トリュフだが中身はフォアグラと云う意外性を狙った前菜、以前流行したが最近あまり見なくなった、トーストしたブリオッシュと合わせると、超高級なトーストスプレッドと云う印象(笑)。
 期待していた「スープV.G.E」、似た構成の料理は国内他店で経験したが、こうしたパイ生地を載せるタイプは、1999年にリヨン近郊の本店訪問以来で実に19年ぶり、微かな記憶を辿れば、全体量は向こうの方がフランスサイズで多かった、中のトリュフ&フォアグラをサイコロ状にしていたのに対し、手島バージョンはトリュフを薄切りして、他にトリュフを混ぜた鶏のクネルを入れている。スープのベースは同等レベルだと思ったが、あちらは僅かに苦味を感じたのを覚えている、それを後で手島氏に話したら、「それはアルコールが飛んでいなかったのでしょう、かなり(酒類を)入れている筈です」との事だった、彼はボキューズ系では働いていないが、本店には食事に行ってこのスープを体験している。
 吉野建氏のスペシャリテである、縮緬キャベツテリーヌを此処に入れたのは憎いなと思った、スープV.G.Eの後に肉厚キャベツの旨味は、まるで肉を食べているかの様な錯覚を起こす。
 ジョルジュ・ブランのスペシャリテである鱸のエスカロップは、今回V.G.Eと共に最も印象に残った料理、ソースの酸味の尖らせ方に「ああ、これフランスだ」と溜息?が出た、日本では何処かに妥協や和合を感じてしまうのだが、それがない。
 鹿は古典的な一皿で、洗練されている様で何処か田舎臭さを感じるアルザスを連想させる(笑)、これもソースの濃い旨さが印象的。
 デセールは「オテル・ド・ヨシノ」パティシェールのオリジナル、巨匠達の料理の後では、高齢介護にあたる若いケアワーカーみたいにも思えるが(笑)、健気に頑張っていました。

 まるで自分が午餐会の招待客になった気分、実際には2回生まれ変わってもあり得ない話だが、この和歌山でそれに近い稀有な体験をさせてもらった。一方で客側の経験値と知識が試される怖いムニュでもある(笑)。
 手島料理長は最近フランスとベルギーへ行って来た直後で、現地の最新料理も体験している、それでも今回の料理を並べたのは、名作を模倣したのではなく、古典料理への帰依、リスペクトなのだと思った。
 女性陣が中心になったサービスも柔らかく、快適に時間を過ごせた、フランス的と云うより、高級料亭や旅館と同質のきめ細やかで日本的なもの。
 エリゼ宮に招待された後、歩き(á pied)で帰る人はまず居ないと思うが(笑)、満ち足りた気持ちで和歌山駅へ向かった。今回誘って参加出来なかった人は、これを見て行かなかった事を後悔すると思う(笑)。
 手島料理長、スタッフの皆さんお世話になりました、次回が今から楽しみです。


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大阪・玉出「びすとろぽたじぇ」(2018関西食べ続け③)

 今回の関西食べ続けのフレンチ部門にはテーマを持っていて、それは今年1月20日に91歳で亡くなった、フランス美食界の法王ポール・ボキューズのスペシャリテ、若しくは関連した料理を食べる事だった。
 この日の夜に伺う「びすとろ・ぽたじぇ」の肥田料理長は、フランスリヨン近郊コロンジュ・オ・モン・ドールにある「ポール・ボキューズ」本店で働いている、ボキューズ直系の料理人なので、テーマには最適な人物、あらかじめ「今回はボキューズ翁に関連した料理を作って欲しい」と我儘なお願いをしていた(笑)。

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 一年ぶりの玉出駅、駅の出入り口と同じ通りに店はあるので分かりやすい、この界隈は東京なら山谷辺りに似た大阪のディープゾーンだが、店までの道は静かで何も問題なく歩ける、去年覚えた階段を昇った2階店舗に到着する。

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 入口を開けると、カウンター席の向かいにボキューズのメモリアルコーナーが設けてあった、本店のメニュー、直筆サイン、私も持っているが肥田氏が翻訳した「ボキューズさんちの家庭料理」の本等々、晩年はすっかり萎んでしまったみたいだが、店に出ていた現役時代の堂々とした威容を思い出す。
 この日も在阪の友人達と同席、まず肥田氏より料理の説明がある、
「アミューズの後はフォアグラ、その後ムールのスープ(ボキューズのスペシャリテ)、ソール・フェルナン・ポワン(同じく)は揃えてあり、肉料理は好きなものを選んで欲しい、デザートにはウ・ア・ラ・ネージュ(同じく)を用意した」との事で、異存ある訳なく、それで進めてもらう。

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・ニュージーランドのゲヴュルツトラミネール

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・アミューズ(玉ねぎキッシュ、サーモンマリネ、ジャンボンペルシェ)

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・オーベルジュ・ド・リル風フォアグラのテリーヌ、無花果のコンフィチュール

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・ボキューズ風ムール貝スープサフラン風味

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・ボキューズ風ソール・フェルナン・ポワン

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・この日の黒板メニュー

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・私が選んだ鹿肉のパイ包み焼

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・デセールシャリオ(制限なし(笑))

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・ボキューズ風ウ・ア・ラ・ネージュ

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・チョコレートのテリーヌ、コーヒー風味のブランマンジェ、ハッサク&王林のソルベ

 アミューズ中のサーモンもボキューズのスペシャリテだと思った、3品共手をかけたフランス伝統の前菜、リル風フォアグラは盤石の美味しさ、脂肪肝気味の我身には多分良くないと思うが、此処でこれを食べなければ悔やむ(笑)。
 ムールのスープは予想より軽やかな味、輸送が不便だった時代に、内陸地のリヨンでこの料理を出したのは先駆的だったと思う。
 次の「ソール・フェルナン・ポワン」は今回最も期待していた料理、フェルナン・ポワンはボキューズが働いていた、同じローヌ県ヴィエンヌにある「ピラミッド」の伝説的料理長、そのメモリアル料理だが、肥田氏の話では文献を調べても、ピラミッドの料理に同じものは見当たらなく、おそらくボキューズが「ピラミッド風」として考えた料理だろうとの事、舌平目の肉質とクリームソースの濃厚な旨さが脳を刺激する、やはりフランス料理はソースだと、あらためて認識する。
 舌平目料理が食べ応えあったので、正直肉料理では一杯一杯になってしまった、この満腹感もボキューズ本店と同じ(笑)。でも手をかけた料理であり、調理器具も限られていた時代に、肉をパイ皮で包む事により間接的に火を通したフランス伝統の調理法、21世紀になっても残っているのは、それだけ優れた技法なのだろう、この料理もソースと一体となった旨さが印象的。
 デセールの「ウ・ア・ラ・ネージュ」は、前述の「ボキューズさんちの家庭料理」にも紹介されていて、ボキューズの祖母伝来のものだそうだ、構成要素は卵と牛乳と砂糖の少なさだが、これだけ豊かな味が出せるのは、「それがフランスなのだ」としか云い様がない。シャリオデセールももっと戴きたかったが、もうこれ以上は無理と云う臨界点で止めておいた(笑)。

 こうして体験してみると、料理に手間と時間をかけられた時代が間違いなくあった、今より物資の流通が悪く、調理器具もアナログだった時代に、先駆者たちが知恵を絞って考えた料理は今食べても美味しい、何でも便利になったからと、絶やしてはいけないのではないかと思う。
 ボキューズについてはあらためて偉大な料理人だったと思う、何と云っても料理が分かり易い(笑)、頭で考える前に本能が旨いと反応する。絵画はカンバスに、音楽は楽譜に残せるので、同時代には認められなくても後世に評価される事はある、ゴッホの絵画やマーラーの交響曲等はそれだが料理は残せない、まずは同時代人に理解してもらわないといけない、ボキューズ料理には過去にも現在にも通用する普遍性があると感じる。
 この日集まったメンバーも濃かったが、料理も濃かった(笑)、長時間大料理人の話で盛り上がったが、肥田料理長ありがとうございました、また若いスタッフの皆さんもこうした料理を作れるのは貴重な経験になったと思う、是非次の世代にも伝えて行って下さい。


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大阪・高麗橋 「桜花」(2018関西食べ続け②)

 今回の食べ続けは天候にも恵まれて、五日間一度も雨に会う事なく、また東京に較べて暖かかったので有難かった、帰りに成田空港に降り、第3ターミナルからの連絡通路を歩いていたら、思わず「寒い」と呟いてしまった(笑)。
 関西二日目は、高麗橋「桜花」のランチへ伺う事にした、過去数年は夜に訪れていた和食店だが、今年は諸事情により初めて昼食を体験する事に。店はビジネス街にあるので、近隣のサラリーマン&OLさん向けに週4日だけランチ営業をしている、高級和食店ではランチを開けない店が多いが、此の店はWEBページにあるように、「日本料理の粋はそのままに、敷居の高さを感じずに、和やかに楽しんで頂ける粋な時間を知って欲しい」との、店主の考えによるものみたいだ。
 昼は「だし茶漬け」一種との事で、昨日の夜も今日の夜も重量級の料理なので、高齢者の領域になった私にはかえって嬉しい(笑)。

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 店前の緑も夜とは違う雰囲気、考えてみればこのエントランスを使えるのは贅沢な事だ、銀座の鳩居堂前より安いとはいえ、此処は中之島も近い一等地、一平方の地価は幾らだろう?と、つい下世話な事を考えてしまう(笑)。

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 ランチ内容の紹介が分かりやすい。

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 店主の森田氏に一年ぶりの挨拶をして、カウンター席に座らせてもらう、ガラスの急須に入ったお茶は、その都度お替りをお願いしなくて済むので、客も気兼ねなく過ごせる、ランチタイムにはいいやり方だと思う。

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 昼のせいか雰囲気がいつもと違うと思っていたら、去年とは内装を変えていた、カウンターを椹(サワラ)の白木板に、また黒白2色のPタイルだった床をカーペット敷きにした事により雰囲気が落ち着き、より日本料理店らしくなった。思わず森田氏に「お金かかったでしょう?」と訊いてしまったが、以前から替えたいと思っていたので、儲かったからではないみたいだ(笑)。
 前述のとおり、昼席はだし茶漬けだが、遠来の私のために追加で前菜を出す事は出来ますが如何ですか?との事で、喜んでお願いした。ただこの日は比較的空いていたから可能だったので、頼めば出来ると云うものではないです。

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 雛祭りを思わせる、雅な器に盛り込んだ前菜、右:赤貝、葱、中:ホタルイカ、大和まな(青菜)、ぬた、左:キビナゴの手毬寿司、手前:玉子焼き、どれも見かけどおりに繊細で雅な味でした。

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 「だし茶漬け」一式、通常はこれに温度玉子が加わり税込950円で提供している。

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 刺身は鯛と鯵、上にかかった加減醤油が独特で、茶漬けに合わせた店主オリジナルとの事、不思議な風味があるので内容を訊いたら、「そんなものを使うのだ」と驚く珍しい物を加えている、企業秘密になるから此処には書かないが、味覚に自身のある人は店へ行って食べて当ててみて下さい(笑)。

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 奥は日替わりの「おかず」と称している、鰆のから揚げみぞれ餡、中が梅干と漬物で、手前が大阪能勢町の原田ふぁーむ作の有機米。今は何処へ行ってもクローンみたいに同質のコシヒカリばかりになったが、このご飯はサラっとしていながら香りもあり、茶漬けに最適だと思った。

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 温度玉子に替えて無理を云って作ってもらった「だし巻き玉子」、東京では甘い玉子焼きが殆どなので、正調関西風のものが食べたいとお願いしたのだが、お手数かけました、とても美味しかったです。

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 東京にも「だし茶漬け」専門のチェーン店があるが、ハッキリ言ってこんな繊細な味ではない、桜花のだし茶漬けは上質な昆布出汁を長年使ってきた関西ならではの、はんなり優しくて後を引く味だった、これ950円で食べられるのなら毎週でも来たいと思ってしまう(笑)。
 同じ高麗橋にある超高級高額和食店も、先代が開業当時「鯛茶漬け」で有名になったと聞く、こうしたものは大阪の和食の歴史が育んだ一つの文化だなと思った。
 今まで夜だけ行っていた店も、昼行くと別の顔を見る事が出来ると思った、食事中に女将さんも到着、一年ぶりに会えたのは嬉しかった(笑)。
 森田料理長に女将さん、お気遣いありがとうございました、この次はまた夜に伺います。


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大阪・本町「アラルデ」(2018関西食べ続け①)

 今年もこの季節がやって来た(笑)、ただ今回はインフルエンザの後遺症によるものか体調万全とは云えず、例年より無理をしない事に決めた、そのため遠出は毎年の紀州参りぐらいで、大阪それも南大阪中心の食べ続けになった事をお断りしておきます。
 
 オーボエ奏者でエッセイストでもある茂木大輔氏の著書で知ったのだが、オーケストラ団員には独特の符牒があり、その中では「コンマス」(コンサートマスターの略)が割と有名だが、他にも「ノリウチ」と云う言葉がある、これはオーケストラが客演等でその土地に「乗り込んで」、同じ日に演奏会を行うつまり「興行を打つ」事を呼ぶそうだ、そうすると移動したその日に外食に行くのは「ノリメシ」と云える(笑)。
 今回のノリメシ、何処へ行こうか悩んだのだが、月曜日なので大阪も東京と同じく休みが多い、「月曜営業をしている店」でWEB上を探してみて、引っかかったのがバスク料理を提供する本町の「アラルデ」だった、以前から行ってみたい店だったし、この日同行する在阪の友人も興味ある店との事だったので、ネット上で予約して伺う事に決めた。

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 店の場所は本町駅西側、地番では阿波座一丁目になる町中の一階角地で、飲食店としてはなかなかいい物件だ。
 料理人は山本嘉嗣氏、奈良県生れで日本料理から料理人歴を開始、その後アルゼンチンを経てスペインバスクの港町オンダリビアで働く、帰国後は大阪本町靭公園近くのバスク料理店「エチョラ」の料理長に就任、2016年2月に同じ本町の南側に独立開業した。店名の「アラルデ(Alarde)」はバスク語で「プライド」の意味で、オンダリビアの祭りにこの名前が付いているそうだ、店内にはその祭りの音楽が流れている。
 店内はカウンター8席の他に個室風なテーブル席も2卓ある、ただ現在は山本氏一人のワンオペ対応なので、全席は埋めていないと思う。
 カウンター席に座り、始まった5,500円の料理は以下のとおり、

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・バスクと云えば、まずは現地の微発泡白ワインのチャコリ、バルで使う平べったいグラスではなく、ワイングラスを使っている。

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・ピンチョス風の前菜(手前は最中皮の中にチーズ、奥左からペドロヒメネス風味のフォアグラのテリーヌ、パートブリックの中にブランタード、溶かしたチーズのスナック)

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・ハモンイベリコ・ベジョータ(上にパン生地で作ったスナック)

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・鯖のマリネ、金柑のコンフィチュール

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・不思議な容器から注ぐ苺風味のガスパチョ、皿中に熟成させた鱸の切身

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・塩ダラのトルティージャ

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・ハチノス(牛胃)と豚足の煮込み

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・兵庫県産豚肉の炭火窯焼き、ピモンデスプレッド、万願寺唐辛子

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・トルタケソ(チーズケーキ)

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・スペイン・リオハ産ハーブティー

 事前にWEB上の店情報はあまり見ておらず、何となくだがスペインのサン=セバスチャン(バスク語ではドノスティア)のバル街で出る、ピンチョス的な料理が続くのかな?と想像したのだが、もっとガストロ的で各皿の量もしっかりあり、「今日は何を食べた」が後になっても思い出せる料理、アセゾネ(味付け)も現地風にしっかり加えていると感じた。フランス料理みたいにソースには凝らず、素材の良さを前面に押し出し、構成要素も少なくして、客に何を食べさせたいのかが明確だと思った。
 特に印象に残ったのはガスパチョ、ベースに日本の赤苺を使いながら甘味を抑え、熟成した鱸の切身と合わせたのは、山本氏のオリジナルとの事だが、意外と云っては失礼ながら、いい相性になっていた、また変わった容器を使ったプレゼンも面白い。
 工務店に特注して作ってもらったと聞く、煉瓦製の炭窯で焼いた豚は脂の旨味が印象的、これで焼く他の肉類例えば熟成赤身牛だったら、どんな味だろうと想像してしまう、これはまた来ないといけない。
 実はこの店の事を、昨年末に東京代々木のスペイン料理「アルドアック」の酒井氏から聞き、彼の店でもデザートに「トルタケソ」を出すので、どう違うか食べるのが楽しみだった、見た目はとてもよく似ている、食べてみるとこちらの方が甘さや味わいが穏やかと感じる、後を引く味の濃さでアルドアック、料理の余韻を消さないまろやかさならアラルデ、そんな印象だ。

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 同行した在阪友人が、「バスクってどんな処?」と訊くので、サン=セバスチャンへ一回だけ行った経験だが、「道を尋ねると、一緒に付いて来てくれる人が居る」と答えたら、すかさず友人は「まるで大阪のオバチャンみたいやな」との事、この瞬間に私は何故大阪でバスク料理店が存在出来るのか、その理由が分かった気がした、「大阪人とバスク人は気質的に似ている、元を辿れば同じ民族か」この新説?を今度何処かで発表したいと思っている(笑)。
 山本料理長は大阪の料理人にしては珍しく、積極的に自分から話すタイプではないが、料理や食材を説明する言葉には、熱い思いが伝わって来る、真摯な姿勢には5年後10年後の、この店への期待を抱かせる。心配なのはワンオペ営業なので、健康&体力面だけだ。
 食べ続け初日は初訪問ながら良い店と出会えた、この後4日間も素晴らしい食体験が出来る吉兆だと思いたい(笑)。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
店の点数評価等はしません、「食と人」を描きたいと思っています。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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