最後の晩餐にはまだ早い


麻布十番「ラ・リューン」

 このブログを始めてから5年半になるが、その間「行きたい」と思いながらも、行けないでいる店が幾つかある。現役時代から常に財布の中身は薄いので、一食2万円以上支払う高額店は最初から想定外だが(笑)、リーズナブルな店でも行き損ねている店がある、東京の東端に住んでいるので特に東京西側の店に多い。
 今回紹介するのはそうした初訪問の店、麻布十番のフランス料理「ラ・リューン‘La Luna’」で、この店も昨年まで私と定休日が同じだった事もあり訪れる機会がなかった。今回、店の常連客にお願いして、ランチタイムに同席させてもらう事が出来た、WEB上でも評判のいい店なので楽しみ、その気持ちが現れたのか、約束の12時より早く店に着いてしまった(笑)。
 店の場所は麻布十番駅を出て、環状三号線を十番商店街とは逆の方向へ進む、左側にある中国料理「富麗華」を過ぎたらガソリンスタンドのある角を左折してすぐ。以前は別の名前のフレンチで現在の料理長が働いて居たが、その後2002年に店を引き継いだと聞く。
 料理人は1973年生れの永田敬一郎氏、熊本出身で都内の「ラ・ブランシュ」「エブリーヌ」等で働いた後に渡仏、吉野建氏の「ステラ・マリス」開業時を手伝った後、主にプロヴァンスで働く、最後は私も訪れた事のあるヴェシーの「ジャック・デコレ」だったそうだ。

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 小柄なマダムの案内で窓際の席に座る、窓外にはハーブ等の鉢植えが並び、道路からの目隠しになると共に、南仏的な雰囲気も表現している。
 ランチメニューは、A.2,800、C.3,800、D.6,000円の3種類でBは欠番(笑)、AとCはスープの有無と、肉料理が鶏か豚の違い、初回訪問と云う事もあり中間を取って?Cでお願いする事にした。
 料理は以下のとおり、

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・雅鮎のフリット、クレソンの花

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・自家製パン(美味しい)

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・雲丹とトマトのソルベ、茄子の煮浸し、コンソメジュレがけ、ライム風味

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・「ゆかり」みたいな味がする海老のビスキュイ

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・淡路島産新玉ねぎのスープ

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・シラスとフロマージュブラン

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・岩手山高原豚のポワレ、ビーツのソース

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・枇杷とアーモンド風味のソルベ、枇杷のグラニテ、福井の梅ピュレ

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・スペシャルティコーヒー

 料理全体の印象から云うと、小細工なしの判りやすい直球勝負で、料理長がフランスで働いて居た1990年代の、本当に美味しかったフランスの料理を想起させる。複雑なテクニックや変わったスパイス等に頼るのではなく、上質な素材を丁寧に調理して繋がりある料理にしている、美味しいのか美味しくないのかも判らない料理では決してない(笑)、ストレートに旨さが伝わって来る。
 アミューズは旬の鮎を上手く使う、前菜の雲丹と野菜の料理は店のスペシャリテで安定の美味しさ、シラスの一品は料理長からの好意との事(笑)、正直に云ってしまうと、メニューの「豚」の文字にあまりテンション上がらなかったのだが、食べて納得した、これは美味しい豚だ。そしてガルニに使ったのは人参一本そのまま(笑)、1980年代生れの料理人ならまずやらないが、人参の旨味を感じるには一番いいやり方かも知れない。
 夏を感じさせるデセールは良かった、特筆すべきは自家製パンが美味しい事、今は各店の料理差が少なくなっているので、この二つで勝負が決まる気がする。

 料理長ともう一人の男性が調理し、店内はマダムが担当するが、居心地よい接客で寛げる。店の規模はもう少し小さかったが、好きな店だった牛込柳町の「ル・デッサン」の料理とマダムのサービスを思い出した、共通点があると思った。
 調理が終わって、挨拶に客席に出て来た永田料理長、痩身で飄々とした雰囲気で話す、フランスのレストランでもきっと戦力として重宝されたであろう事は、料理を食べれば想像出来る。
 今、麻布十番はフレンチ激戦区だ、現れては消える店も多くある中で、15年続いたのは、リーズナブルな価格設定に加え、やはり料理が良かったからだと思う、口コミやネット情報で高評価でも、一回来た客をリピートさせるには、料理の印象が何より大事だ。
 ‘La Luna’は「月」の事だから、本来は夜にもっと輝く店かも知れない(笑)、また訪れたいと思ういい店だ。


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亀有「めんこや 亀有店」

 今回記事にする「めんこや亀有店」は、去年12月に実家がある亀有に開店したうどん店で、「武蔵野うどん」を提供するチェーン展開店舗だ。都内に5店舗あり、幡ヶ谷に本店、五反田、京王閣(調布)、高円寺に続いての亀有店だが、他4店が東京西部なのに、何故亀有に飛んでやって来たのかは不明(笑)。面白いのが京王閣で競輪場内に店がある、定休日はレースの開催が無い日だそうだ。
 運営会社は㈱ドリームハーバー、「武蔵野うどん」については、ウィキペディアによると「東京都多摩地域と埼玉県に伝わるうどん、(中略)一般的なうどんよりも太く、色はやや茶色がかっている。加水率は低く塩分は高めである。コシがかなり強く、食感は力強い物でゴツゴツしている。」とある、冷たい「ざるうどん」にして食べるのが一般的との事。北関東は保水性の低い関東ローム層により米作にあまり適さず、昔から粉食の伝統があった。店名の「めんこや」とは「麺小屋」の事らしい。

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 店の場所はJR亀有駅至近で、北口を出ると両さん像があり、右に曲がるとすぐ高架下に店が在る、隣はコメダ珈琲、同じ高架下には飲食店が幾つか並んでいるランチ激戦地だ。
 店は間口が狭く奥に伸びていて、カウンターはなく椅子席のみ16席。厨房内に二人従業員が居て、一人が配膳も兼務する。

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 新しいので店内は奇麗だ、壁にはテレビ、腰板の前にはベンチシートではなく、居酒屋等でよくある壁付の畳席。

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 券売機ではなく口頭注文なのでまずメニューを眺める、ウィキペディアの記載どおり、冷たいうどんが多い。

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 値段は少し高めに感じたが、他店と共通?

 こうした店であまり悩んでいてもと思い(笑)、メニューの一番初めにあった「ぶったまうどん」(税込840円)を注文する事に。
 WEBページを見ると、チェーン店でも集中キッチンではなく、各店でうどんを打っているそうだ、この店も目立つ場所に打ち台があった。

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 手打ちの生うどんはどうしても茹で上がりに時間がかかる、しばらく経って出来上がって来たのが「ぶったまうどん」。見かけは「ざるうどん」と云うより「つけ麺」そのもの(笑)、麺とつけ汁部分とに別れている。

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 うどんは中太、ツヤがあって食べるとコシがあり喉越しも悪くない、関東の地粉だけではないと思うが、十分美味しい麺だと思った。

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 つけ汁はおそらく鰹出汁と濃口醤油ベース、チャーシューみたいな豚肉と茹で玉子半分、モヤシと青ネギが入っている、豚と玉子なので「ぶったま」と云う事だ。
 うどんをこのつけ汁に浸けながら食べるのだが、鰹+醤油味は東京で育った私にとって、たぶん母乳の次に覚えた味(笑)、記憶を呼び覚まされるので、どこか懐かしくて美味。
 スタイルはつけ麺だが、つけ汁の脂分が少ないので私には好印象、その分背脂好きの若い人達にはもの足りないと思うかも知れない、でも「万人向けの味」などと云うのは、どっち付かずになり易いので、この路線は賛成(笑)。

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 「茹で湯ご希望の方 お申し付け下さい」と貼り紙があったのでお願いする。蕎麦湯みたいものだが、つけ汁を割って飲むと、なかなか味のあるものだ。

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 麺、つけ汁共に期待したより美味しかった(笑)、なかなか考えたなと思う、昔風な「ざるうどん」をそのまま出しても特に若い客層には受けない、そこで「つけ麺」のスタイルを踏襲して出したら、期待以上に受けたので店を増やしている、そんな事業展開なのだろう。

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 印象が良かったので、しばらく経って再訪問し、「つけカレーうどん」(890円)を注文、カレーは鰹出汁の効いた昔ながらの「蕎麦屋のカレー」味で、これもなかなか良かった(笑)。
 
 駅から至近なので、もし亀有に行く事あれば、気軽に入れる事もあってお勧め出来る、夜は酒も飲める様に一品料理の用意もある。
 亀有は昔からラーメン店の激戦区だったが、最近うどん店が増えている、以前から北口にあり夜だけ営業の「琴ひら」(讃岐系)、住居を一部改造した店「菊屋」(讃岐系)、東京では珍しい富士吉田うどんの「五葵(いつき)」、亀有アリオ内には「丸亀製麺」(讃岐系?)まである、そしてこの店が加わり更にもう一店出来るらしい、うどん激戦区にもなりつつある(笑)。


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外苑前「フロリレージュ」(2017年6月)  

 殆どが平日のランチ訪問だが、今回は諸事情、簡単に云えば同行者の都合で日曜日、場所はお馴染みの外苑前「フロリレージュ」へ。
 川手料理長は海外の有名料理人とも親交厚く、フェア等を開催するので、現在は特にランチ営業する日が減っている。自分が不在時は二番手に任せてしまう料理人も居るが、彼は店を閉めてしまうか、あるいはスーシェフに任せる時は別名「ウラリレージュ」で営業する(笑)、これは潔い姿勢だと思うが、営業日が少ないと客は更に予約が難しくなる、ましてや日曜昼となるとプラチナシート的だ、それを何とか強運?で入手する事が出来た。
 東京メトロ外苑前駅を出ると、神宮球場へ向かう野球観戦客で混雑していた、それを掻き分け熊野神社前に到着、地下へ続く階段を降りると、いつものレセプション担当女性が迎えてくれる、担当者が一人増え二人になっていた、海外からの予約電話も多いと聞くので、体制強化したみたいだ。

 案内されたのはキッチン正面の席、調理スタッフも女性が一人加わっている、今迄パティシェールを除いては男性ばかりだったので、体育会系的雰囲気があったが、女性が入ると全体が柔らかくなり文化祭的?になる(笑)、いい事だと思う。
 川手料理長に挨拶し、始まったのが以下のメニュー、まずは料理を紹介したい、

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・「投影、とうきび」

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・中はコーンクリームポタージュを固めたみたいなもの(笑)。

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・「雅鮎のフリット」

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・「鳩のワンタン」

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・「鮑 米」(上に重湯、牡蠣のムース)

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・「サスティナビリティー、牛」(宮崎産経産牛のカルパッチョ)

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・「分かち合う」(三河産ウズラにフォアグラを入れたバロティーヌ)

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・ドレッセ後、ガルニには空豆と空豆のクロケット

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・「ブランマンジェ(ココナツ)、マンゴー」

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・「贈り物、アマゾンカカオ」(チョコレートのオムレツ)

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・さくらんぼのパートフィロ
・エスプレッソ

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・この日のドリンクペアリング(一部)

 まずはトウモロコシ売り娘(笑)が、トウモロコシが数本入った籠を持って登場、そこから各自1本ずつ取るのだが、中身はコーンクリームグラタン、何処か懐かしい味で記憶を呼び覚ます。
 香ばしい雅鮎の後は、中国料理みたいな鳩肉を使ったワンタンスープ、鳩のコンソメと冬瓜を合わせて食べると何故かフランス料理になっている(笑)。
 次の鮑料理はフロリレージュでは夏の定番、今回は柔らかくした鮑身に、重湯と牡蠣のムースを合わせた発想が大胆、見かけは地味だが今回この料理が最も印象に残った。新店舗ではスペシャリテになった経産牛のカルパッチョも安定の美味しさ、下に敷いたポムピュレとコンソメが半乾燥の肉と絶妙にマッチしている。
 「分かち合う」肉料理はウズラ、中にフォアグラを入れローストすると云う、フランス料理では古典的な手法だが、少し酸味と苦みのある鶉の肉味(それを更に強くしたのが雷鳥)を矯めるのではなく生かす方向で調理している、材料各自の特徴を殺さず、上手くマッチングさせ新しい味を創出するのが川手料理の特徴だと思う、ガルニの空豆の扱いもいい。
 パティシェールも経験を重ねたからか、デセールに硬さが取れてこなれて来た、特にチョコレートのオムレツは旧店舗からのスペシャリテだが、南米ペルーから直送されるカカオを使う事によって、味わいが深くなっている。
 廣田氏が考案するドリンクも毎回面白く楽しみ、今回は「夏」をイメージさせるものが多かった。

 今回の料理印象は、少し「古典回帰」しているのかなと感じた、旧店舗時代の料理を想起させるものがあり、今迄「前衛」を走っていた川手氏、一時は「このままだと、日本料理になってしまうのでは?」と思う時もあったが、此処で一度立ち止まり原点を見つめ直しているのかもと勝手に想像した。
 デビュー時は容姿で売った役者や歌手が、経験を積み実力を身に着けてからは、見かけより中身(技術)で勝負する、以前よりモテなくなったかも知れないが(笑)、違いの分かる人(客)には訴える、川手料理は今其処へ来ているのかも知れない。インスタグラム映えするビジュアル性は減ったが、美味しいのか不味いのか判別不能でそれ以前では?と感じる料理ではなく、食べて本当に美味しい料理を志向していると思った。

 さすがは日曜日昼だけあって、カウンター&個室共に早い時間に満席になった、来客が集中しても料理が停滞しないのは、新店舗の形態で2年が経過した経験によるものだろう、若いスタッフ達の動きもスムーズに見える。
 薄い財布を持ちながらブログを続けるには、訪問が一店に集中しない様にはしているのだが、料理が少し変化した印象を持ったフロリレージュ、一過性なのかそうでないかを確かめるためにも、次の予約を入れてしまった(笑)。やはり此処は来る毎にあらたな刺激を貰える店だ。


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浅草「ブラカリ」

 このブログの記事カテゴリ別では、フランス料理が圧倒的に多い、筆者の好みと云うより「偏愛」を表しているのだが(笑)、たまには他ジャンルの店も書かないといけないと反省、今回は浅草のイタリア料理店を食仲間を誘いランチ訪問する事に。
 店は浅草馬道交差点近くにある「ブラカリ(BRACALI)」、この店は以前「イル・セレーノ」と云う名前のイタリアンだったが、昨年5月にスタッフ全員が替わり、店名と共にリニューアルしたと聞く。WEB上では「特に手打ちパスタが美味しい」との情報があり、行ってみたいと思っていた店だ。
 店が在る「馬道」の由来は諸説あるが、知られているのは、昔浅草寺境内に馬場があり、僧侶がそこへ行く際にこの道を通ったので、馬道と呼ぶ様になったとの事、今は車を運転する坊さまも、昔は馬に乗っていた(笑)。

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 料理人は斯波順一氏、国内では「アカーチェ」「ラ・コメータ」「ジャルディーノ」、「ラ・ヴィータエベッラ」(川奈)、その後イタリアに渡り、トスカーナ地方の二ツ星「BRACALI」でスーシェフに就任。日本へ帰って今回「BRACALI」を名乗る事を店から許された。

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 「イル・セレーノ」を利用したのは5年以上前だが、店前に立つと少し記憶が蘇った、大きな窓前にはメニューの黒板と鉢植えの緑を置き、店内を少し隠している。
 サービス担当女性に予約名を告げテーブル席に案内される、既に2組食事中で、この後にも2組来客があった。客の会話で「今日は空いているね」と聞こえたので、いつもランチタイムはもっと混むみたいだ、今浅草への観光客は国内外含めて、昔より信じられない位に多くなった。

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 ランチメニューは4種類だが、せっかくだからと「本日の季節のコース」(3,500円)をお願いする事にした、パスタを乾麺4種と手打ち4種の8種類から選べるのが悩める処だが、今回は「生は珍しい」とトマトソースのペンネを選ぶ。
 料理は以下のとおり、

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・アンティパストミスト
(よく見えないが一番上は帆立稚貝のグラタン、時計回りにセリモナのニョッキ、ヒラマサのカルパッチョ、プロシュート、プロシュートとバルサミコのサンドイッチ、真中にリーフサラダ)

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・自家製フォカッチャとパン(美味しい)

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・ミネストローネ

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・サルシッチャとトマトのペコライヤ風リコッタアルフォルノかけ“生ペンネ”で

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・アンガス牛のタリアータ、バルサミコ風味、ルッコラとパルミジャーノ、下に白隠元豆のトマト煮

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・ドルチェミスト
(右からアメリカンチェリーのタルト、バニラのジェラート、キャラメルのパンナコッタ)

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・エスプレッソ(美味しい)

 料理全体の印象は、見栄え重視の派手な処がなく、どれも伝統的な料理をベースにしたもの、インスタグラム映えはしないかも知れないが(笑)、何処か懐かしくて安らぎを感じる美味しさ。
 生ペンネを使った料理はアラビアータみたいな辛みあるトマト味がベース、毎日食べ続けられそうな家庭的な親しみ易さがあるが、これはプロでないと出せない皿だ。
 タリアータはイタリア料理店ではポピュラーな料理だが、下に白隠元豆のトマト煮込みを敷いているのが日本では珍しい、豆をよく使う料理人は大体本場欧州で働いていると思って間違いない。
 パンもドルチェも美味しかった、最近はフレンチでもイタリアンでも、この二つで各店の勝負が決まる感じがする(笑)。エスプレッソも外れない。

 サービスの女性がとてもいい接客で印象に残った、眼鏡をかけおっとりとした口調の話し方が、青山にあったフランス料理店「アテスエ」に居たサービスの女性を思い出す。
 彼女の話では、この店のオーナーは以前から浅草の靴問屋で、その関係で地場産業である製靴業の人達が訪れるそうだ、彼らが「この店の料理は、自分がイタリアで学んでいた頃の料理を思い出す」と話すとの事。たしかに青山、六本木辺りのミラノ系北イタリア料理とは一線を画すと思う。
 最後に斯波料理長が挨拶に出てきたが、「自分がやりたいのは(イタリアの)地方料理です」と話してくれた、リニューアルしてまだ1年なので、これから楽しみな料理人だと思った、特にランチタイムで自家製生パスタを出す店は少ないのでありがたい。
 また来たいと思える店だ、浅草に行く時あれば、寄ってみる事をお勧めしたい。
 

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湯島「ベッケライ テューリンガー ヴァルト」

 時間は前後するが、今回紹介するのは「ビストロ・ヌー」へ行く前に寄った店、家のパンが切れてしまったので、秋葉原・神田界隈で良さそうなパン屋はないか?とネット上で検索していて見つけた。
 WEB情報では「ドイツ人職人が作る、本場ドイツのパンを売る店」とある、PARISにあるブランジェリーの名を付けた店には、期待外れな思いばかりしていたので、「ドイツパン、それも個人店なら面白そう」と好奇心が沸き、店まで行ってみる事にした。
 店の名前は「ベッケライ テューリンガー ヴァルト(Bäckerei Thüringer Wald)」、独語のベッケライは英語のベーカリー、ヴァルトは森の事だから、直訳すれば「チューリンゲンの森のパン屋」、なかなかロマンチックな店名だ(笑)。開業は2015年10月で、店主は製パン技術指導のために来日し、そのまま日本に滞在を続け独立したそうだ、「ビゴ」や「ルコント」みたいなケース。

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 食べログの地図を印刷して行ったのだが、これが予想以上に凄い場所だった、地下鉄千代田線湯島駅の御茶ノ水寄りの出口を出て、神田明神下へ向かい三組坂下の交差点を右折、本郷三丁目方面へ向かうと左側にラブホテルが並んでいるがその裏手、近くには東都文京病院(旧:日立病院)がある。湯島天神と神田明神の中間地、ラブホと病院に囲まれ、少し先には霊雲寺と云う大きな寺社もある、まさに愛(エロス)と死(タナトス)が交錯している(笑)。

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 前の店舗は何だったのだろう?小さな店舗だ、店前には「ドイツパン マイスターの店」と店のサイズに合わない大きな看板が掲げてある(笑)。

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 ガラス戸を開けるとそこはすぐパンが並ぶ棚、欧州式の対面販売で、客側に近い列は「~クーヘン」(ドイツ語でケーキの事)と書かれた、デニッシュ系みたいなパンが並ぶ、「スマイリークーヘン」と云う人の笑顔を表したパンがちょっと笑える。個々の値段は場所柄を考えたら結構高めだ。
 その後ろにはプレッツェルみたいな甘くないパン、後方の棚には食事用のパンを並べてあった。このキチッとスキのない陳列の仕方はドイツ的だなと感じた。
 販売担当は若い日本人女性、奥が作業場になっていて、大柄でお腹の出た外国人男性が手作業でパン種を練っていた、この男性と目が合い「グーテンモルゲン」と挨拶される、何と返すべきか一瞬迷うが、「おはようございます」と無難?に日本語で(笑)。あとでショップカードを貰ったが、この人がマイスターのフランク・ウィンターベルク氏。あまり日本語が得意でないのか、それとも元々無口な職人タイプなのか、あと喋ったのは退店する時に「ダンケ」と云っただけだった(笑)。

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 壁には額装されたレストランメニューみたいなものがあったが、これがマイスターの称号なのか?ドイツ語は全然判らないが。
 同様にドイツパンはよく判らず、店の女性の説明を受けながら選んだ、初回なので無難に食事用のパンを2種買う事に、以下はその紹介と食べた感想を。なおパンの撮影場所は「ビストロ・ヌー」のカウンターを借りました(笑)。

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・ヴァイツェンミッシュブロート(税別650円)
 一辺約11.5cm、ライ麦約20%混入との事で、フランスなら「パン・ド・ミ」みたいなパンか。スタンダードな食事パンと云う印象、粉の美味しさが伝わって来る、薄く切ってトーストにすると特に美味しい、バター&ジャムでも、ハムやチーズ等と合わせてもいい、この店へ来たら最初に買うパンとしてお勧め出来る。

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・バウエンブロート(750円)
 直径約12.5cm、ライ麦比率はたしか50%だと思った、ズシリとした重量感がある。個性的な味わいなので一般向けではないが、個人的には好みのタイプ(笑)。これと野菜と肉を入れたスープがドイツの伝統的な家庭の食事なのだろう、噛むほどに旨味が増すパン。

 ドイツパンと聞くと、広尾の「東京フロインドリーブ」を連想するが、1970年創業のあちらのパンと比べると、伝統的な作りは同じだが、より現代的な味わいになっていると思った。

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 WEB上では「値段が高い」とも書かれていたが、今、街場のベーカリーの食パンが一斤250~300円位なので、確かに高いとは思う、でも厳選した材料を使い、機械に頼らずに伝統的な時間と手間をかけるパン作りをすると、こうした値段になってしまうのだろう、この辺りをどう考えるかによって、この店の評価は変わる。
 個人的にはリピートしたいと思った、それだけの魅力はある、地味だが本物を提供しようとする、この店が継続できるなら、東京も本当の「食の街」になったと云えるのでは?(笑)。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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