最後の晩餐にはまだ早い


亀有「木楽」

 年末になると蕎麦店が混み合うので、その前に蕎麦を食べておこうと向かったのは、実家のある亀有北口商店街中にある「木楽」、今の店になってからは初訪問だ。
 此処は元々街中の出前もやる普通の蕎麦屋だったが、代替わりしたのか自家製粉で手打蕎麦を出す店に変わった、数年間やっていて私も一度だけ利用した事がある、それが急に店名が変わってしまった、噂では経営者も交代したとの事だが詳しい事は不明。
 最近、出前もやっていた街中の蕎麦屋から、手打蕎麦に変身する店がある、同じ亀有の人気店「吟八亭 やざ和」やブログ記事にした五反野「松月」がそうだが、経営が代替わりすると、今迄のやり方では将来性はないと思って手打蕎麦を勉強するみたいだ。寿司職人は一人前になるのに時間はかかるが、蕎麦はやる気さえあれば、構成要素が少ないだけに、寿司やフレンチ程には技術習得時間はかからないのかも知れない、ただ転換が全て成功するとは限らないようだ。
 
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 「木楽」の場所はJR亀有駅北口を出て、バスローターリーから東部地域病院の方へ向かう途中に、小さな商店街がありその並び、近くには行列で知られる、つけ麺店「道」がある。
 昔風の間口の広い店舗、内装は変えているが外箱は相当年月が経っている、隣が人気の青果店で年末なので人で賑わい、客が自転車を蕎麦店側にも駐輪する、この辺りは下町なので揉めずに上手く共存しているのだろう(笑)。

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 外から見える蕎麦打ち場、この日の蕎麦産地は秋田との事。

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 店前にはランチの品書きが、「牡蠣蕎麦」や「にしん煮蕎麦」など、なかなか魅力あり(笑)。

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 入店して打ち場前の席に座らせてもらう、逆光で見えにくいが蕎麦を挽くための電動石臼を備えてある。

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 蕎麦茶ではなく普通の焙じ茶、店内は女性が一人、厨房は男性一人の二人体制、ご夫妻だろうか?

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 ランチメニュー以外の品書き、夜は蕎麦居酒屋的な感じになるみたいで、この他に酒のつまみ系も結構揃えている。値段は亀有の相場からすると少し高めな気もした。
 迷ったが、蕎麦だけだと少し寂しいかなと、「天丼定食(天丼+せいろ)」(税込1,150円)」をお願いする事にした。
 時間が早かったので、私の他には男性が一人、昼間の蕎麦店では男性一人客に遭遇する機会が多い気がする(笑)。

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 天丼定食、蕎麦は江戸伝統の二八割(小麦粉2:蕎麦粉8)だと思う、あまり蕎麦の香りはしないが喉越しはいい、少し水分が多めな感じがするが普通に美味しい蕎麦だ。ツユは甘目かな?とも思ったが、気になる程ではない。
 天丼は海老、ピーマン、さつま芋、舞茸だと思った、揚げもいいし天つゆが下町風な辛口で美味しい、ご飯もよかった。

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 蕎麦湯は後から蕎麦粉を足したものではなく、普通の茹で汁みたいだった。昔風の塗りの容れ物。

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 我家から自転車で行ける範囲の蕎麦店を回っていて、今の処は綾瀬の「重吉」が一番好みに合うが、この「木楽」も真面目に作った蕎麦で美味しい、店の雰囲気も何処かレトロで落ち着く空間だった。個人的には蕎麦は「遠くの名店より、近くの佳店」だと思うので、思いついてすぐ行ける場所に、こうしたいい店があるのはありがたい。
 今年(2018年)は今まで以上に蕎麦店巡りをしようかなと考えている、そのうち道具を揃えて蕎麦打ちを始めるかも知れない(笑)。

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 木楽の帰りに、同じ商店街にある和菓子店「梅むら」に寄ってみた、昔からこの場所で続けている店で、下町的雰囲気と下町値段が特徴、サービス品の「栗むし羊羹」(350円)を買ったら、親父さんが石油ストーブの上で焼いていた餅をサービスしてくれた(笑)、スーパー等で売っている餅菓子は餅粉を固めたものが殆どで、こうして搗いた餅を作る店は少なくなっている。後継者不足から街中から和菓子店が減って来ているが、これからも続いて欲しいと願ってしまう。


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富ヶ谷「ルヴァン」(2017年12月)

 皆様明けましておめでとうございます。
 このブログも丸6年を過ぎ7年目になりました、此処まで続けてこられたのは、時に励ましの言葉をいただく、皆さんのおかげと思っています。
 何かにつけて「老い」を感じる齢になり、文字どおりの「最後の晩餐」を意識しないといけなくなりましたが、今年も食と人について語る事が出来ればと思っています。現在、定収入の無い身なので、高級店訪問は少なく地元のランチが増えると思いますが、時間がある限りお付き合いください(笑)。
 年初は旧年中の店訪問記事になりますが、初回は年末に行った「アルドアック」の帰りに寄った老舗ブランジェリーから。

 「アルドアック」のある小さな商店街を抜けると、井の頭通りに出るが、昔に比べると道が広くなり歩き易く整備された、道の反対側は歩道がなかったので、歩くのが怖かった。現在、富ヶ谷交差点近くには巨大なマンションが建設中で、2020年頃には街は更に変貌している事だろう。
 道を渡ると目の前にあるのが、老舗のブランジェリー「ルヴァン」、1月以来になってしまった、その間色々なパン店を回ったが、「釣りは鮒に始まり鮒に終わる」みたいに、私のブランジェリー巡りは、「ルヴァンに始まりルヴァンの終わる」かも知れない(笑)。
 1984年に調布で開業、1989年に現在の店舗を開いている、この地で28年営業を続けている事になるが、アンパンやクリームパン等を売る街場のパン店ではない、ハードタイプの食事パン専門店としては、1970年開業の広尾「東京フロインドリーブ」に次ぐ店ではないかと思う。

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 この店で感心するのが、私が通い始めた頃からずっと店員が皆若い事、もちろん歳をとらないのではなく、それだけ人が入れ替わりしている。前回この店を取り上げた記事でも書いたが、此処でパン作りを学んだ若者達が各地へ旅立ち、ルヴァンのパンを継承している、そして自分はルヴァン出身者である事を誇らしげにアピールしている。最近は女性の姿が目立つ、小学女子の「将来なりたい仕事」ランキングで毎年トップ争いをするのは「パティシェ」だそうだが、パン職人も静かな人気みたいだ、ただ両業種共に外から見る程キレイな職場ではないし、拘束時間は長く就労もブラック的だ(笑)、本人に余程「やり遂げよう」とする意思がないと続かない事は同じ。今は女子の方がそうした気構えを持っている気がする(笑)。

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 毎回変わらない無装飾な茶色い紙袋のみ、手提げ袋はくれないので、何か入れる物を持って行った方がいい。

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 この日買ったパン、パン好きにはこの画像を見ているだけで嬉しくなる(笑)。

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・パン・コンプレ25(ハーフサイズで税別360円)
 本当はコンプレ50が好きなのだが、今は一週間に一回しか焼いていないとの事で、ベーシックなこのパンを買う、ルヴァン初心者向けで、まず此処へ来たら買うべきアイテム、粉の旨味と焼き上がりの香りがいい。

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・メランジェ(小)(420円)
 ルヴァンの代表的存在、中はレーズンと胡桃がギッシリ詰まっている、これを薄く切ってカマンベールやブリー等を乗せれば、素敵なオードブルやデザートになる(笑)。

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・パン・オ・ノア(360円)
 中は胡桃、メランジェより味はシンプルになり、食事中のパンに向いている。

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・前日の残り分をオマケに入れてくれたもの、パン・オ・ノアだと思った。

 近くの「アルドアック」酒井氏が、「ルヴァンのパンは美味しすぎて、レストランの料理に合わない」と云っていたが、それはよく分かる(笑)、野菜スープとか、それも無ければワインとパンだけでも食事になりそう、まさにキリスト教の教えだ。
 「アルドアック」~「ルヴァン」のランチ散歩、気に入ったのでまた来るつもりだ、代々木公園駅近くの「365日」もいいブランジェリーなので、各自好みで選んで下さい(笑)。
 ルヴァンからアルドアックのある商店街を抜け、代々木公園駅に向かう途中にある、環状線高架下の小さなトンネル、此処に不思議な壁画が描かれていて、通る毎に「これ何だ?」と思っていたが、今回真面目に調べてみた。

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 ネット上では「オジサンが渋谷でJK(女子高生)を連れて歩いている絵」とか、きわどい解説もあったが(笑)、そうではなかった。このトンネルは昔からサイケ調の落書きが多く、困った周辺住人が武蔵工業大学の学生と協力して、「春の小川」のテーマで描いたとの事。
 「春の小川は さらさら流る」の童謡「春の小川」は、「故郷」と同じく高野辰之の作詞、高野が生前代々木に住んでいて、近くにあった河骨川(現在は暗渠化)を詩にしたとされる事に因んだそうだ。よく見ればアンリ・ルソーみたいな味のある絵とも思える?ルヴァンやアルドアックに行った時には一度見て下さい(笑)。


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2017年「今年印象に残った店」(デザート・スイーツ編)

 料理編に続いてデザート・スイーツ編を。
 今年この分野は女性達の活躍が目立った、レストランは夜遅くまで営業があり立ち仕事が続くので、女子には相当厳しい職場だと思うが、悪環境の中で奮闘している彼女達を見ると、この業界の先行きもそう悲観しなくてもいいのかなと、希望が見えて来る気がする(笑)。まずは料理編同様、4番打者的存在からで、
・東麻布「ローブ」の
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・5月訪問時、右上から時計回りで、「黒オリーブ(スフレ) タイム(後でタイムのソルベを添える)」「リュバーブ レティエ」「花菜ローズ マンゴー」「フロマージュ 赤い果実」

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・8月訪問時、「桃のコンポート、バラ花のアイスクリーム(右)」「ババ、ピニャコラーダ、パスティスのクレーム(左)」
 平瀬パティシェール作のデセールからと思ったが、一つだけ選べず、結局全品紹介する事に(笑)。彼女のデセールに関して解説は余計だと思うので、まず見て感じてください、そして味わいに行ってください、それが一番です(笑)。

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・芦屋「オステリア・オ・ジラソーレ」のフォンダンショコラと栗のスープ、マスカルポーネの雪見仕立て
 2月関西旅行時に最も印象的だったデザート、作ったパスティッチェーラは現在イタリア武者修行中と聞いたが、更にレベルアップして帰って来るのが楽しみ。

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・新富町「プレニチュード」の「苺のヴァシュラン、ピスタチオのアイスクリーム」
 パティシェール界の新人ヒカリちゃんの仕上げが奇麗なデセール、彼女はこれから期待出来そう。

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・新橋「コフク」の「広島県産 檸檬(バジルの液体窒素)」
 これも新人美少女系?パティシェールの作品、料理もユニークな店だが、デセールも面白い、彼女も経験を積んでいけばきっといいパティシェになると思う。

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・外苑前「フロリレージュ」の「贈り物、アマゾンカカオ(小布施の栗、栗のクリーム)」
 此処も若手パティシェールだ、シンプルな作りだが記憶に残るもの、チョコレートと栗は「黄金の組合せ」だが、いい素材でも生かして使えるかは作り手次第。使っているこの器を作ったのも女性陶芸家だと思った。

 以下は男性料理人達が作ったデザートから、
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・麻布十番「ジャニコロ・ジョウキ」の「生八ッ橋とホワイトチョコレートのムース」
 生八ッ橋とホワイトチョコレートは「禁断の組合せ」みたいだが(笑)、意外にも合っていた。独学派でマンガ好きの若手、内野料理長の発想は何時もユニークだ。

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・赤坂「古屋オーガストロノム」の「いちごとミルフィーユ、さくらのソルベと共に」
 春のデザートだった事もあるが、内野氏作の物と続けると、それ迄の女性陣作デザートに比べてフェミニンな印象がする、「春に誘われた訳じゃない」か(笑)。

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・麻布十番「ラ・リューン」の「枇杷とアーモンド風味のソルベ、枇杷のグラニテ、福井の梅ピュレ」
 これは夏を感じさせてくれた、麻布十番で15年続く人気フレンチ、痩身の永田料理長の料理も良かったが、特にこの酸味の効いたデセールは印象深かった。

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・御茶ノ水「ビストロ・ヌー」の「ホワイトチョコレートのムース、キャラメルのグラス、ショコラマカロン」
 店の雰囲気と値段はカジュアル、味は本格派と云いたい秋葉原至近のフレンチ、イケメンの磯貝料理長と美人マダムの二人体制になって、料理もデセールも更に良くなって来たと感じた(笑)。

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・稲荷町「キエチュード」の「チョコレートタルト(ノエリー酒風味)ラズベリー チェリー カボス・カルダモン・ジンジャーのアイス」
 荒木料理長が「自信作です」と云うだけあって、各素材のバランスが良好で、また味わいたい一品。
 チョコレート、バター、バニラビーンズ等原材料が値上がり続ける中で、どうしても原価が限られるレストランデザートだが、どの店も本当に苦労して工夫していると思う。
 
 以下はレストラン以外で、
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・表参道「グラッシェル」の「かぼちゃのパフェ」
 パフェブームが続いているが、都内で出会える最上質な店の一つだと思う、「プリンパフェ」も良かったが、南瓜と云うあまりパフェとは結び付かない素材を使い、印象深い味に仕上げるのは作り手のセンス、値段はそれなりにするが納得出来る、満足感は大きい。

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・西新井「エスキモーカフェ」の「かぼちゃアイス&ミカンのシャーベット」
 地元で見つけたアイスクリーム専門店、私は「下町のグラッシェル」と呼んでいる(笑)、これも南瓜を使ったアイスだが、焼く事で香りを増していい出来だった。

 一年間ブログをお読みいただき、ありがとうございました。
 勤めをリタイアした後は、千円ランチ専門ブログになるかなと思っていましたが、何故か現役時代以上に高級店も出かけています(笑)。何時までこれが続けられるのか分かりませんが、体力が続き財布が空になる迄、来年も食と人を語れたらと思います。
 混迷が続く世界情勢ですが、食を通じて人がもっと幸せになれる社会である事を願っています、皆さまどうぞ良い年をお迎えください。


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2017年「今年印象に残った店」(料理編)

 ブログの更新も年内はあと2回の予定、そこで毎年恒例の「今年印象に残った店」を挙げておきたい、昨年同様に「料理編」と「デザート&スイーツ編」の2回に分けるが、毎回言っている事ですが、私が訪れて此処に載せなかった店が、料理もデザートも駄目だったと言う訳ではありません、本当に駄目な店はブログ記事にはしていません(笑)。
 文字どおりの「最後の晩餐」を意識し始めた私にとって、人生最後に食べたい、もし食べられなくても思い出したい位の、強い印象が残っているかどうかで選びました。まずは料理からで、

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・外苑前「フロリレージュ」の「分かち合う(北海道産仔羊背肉骨付ロースト)」
 いきなり4番打者が出て来たみたいだが、もう東京と云うより日本の代表選手と云っていい店と思っている、もし人生をやり直せるなら、料理人としてチームフロリレージュに加わりたい位(笑)。川手料理長は少しずつ変化していて、以前より料理が単純化された気がする。

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・六本木「ル・スプートニク」の「エゾ鹿のシヴェ、自家製セミドライピオーネとロックフォール、ジェニパーベリー」
 フロリレージュの川手氏が食のエンターテイナーとすれば、高橋料理長は食のアルチザンと云う印象、細部にこだわり妥協をしない姿勢は、孤高の職人此処に在りと見える。このエゾ鹿は近年最上の鹿料理だった。

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・赤坂「古屋オーガストロノム」の「豚足のファルシ(リ・ド・ヴォーブレゼ、トランペット茸、ムース・ド・ヴォライユ)のグリエ、シャルキティエールソース」
 昨年から注目している赤坂の古典派料理人の店、うるさいベテランのフレンチフリーク達に注目されるようになったが、まだまだ古屋料理長の抽斗は空にならない筈(笑)。今の時代に、この手間がかかる割にはおよそインスタ映えしない、地味な豚足料理を作る心意気に拍手。

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・代官山「レクテ」の「青森産真鯛、大鹿村(長野)の天然キノコ(トキシメジ、アミダケ)、黒大根」
 私にとって、去年の発見が古屋氏なら、今年の発見は佐々木氏、花の都で3年間料理長を務めた実績は、料理を食べれば感じ取れる。国産食材を積極的に使う料理人は他にも居るが、佐々木料理長程のフランス的エスプリは表現出来ていないと感じる、レストランチームとしても優秀、来年も楽しみな店だ。

 以下は東京以外で、
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・大阪上本町「レストラン・コーイン」の「鳥取県産ミンククジラのタルタル仕立て、自家菜園の野菜添え」
 同行した友人が「金属バットで頭殴られたみたいに旨い」と云っていたが、今なら「リモコン」と云い変えた方が判り易いか(笑)。とにかく物量攻撃で高級素材を積み上げ料理を構築、それでいて絶妙のバランスを取るのが、湯浅料理長の稀有な才能。「日本の食材はフレンチに合わない」などと云っている人に、この料理を食わせてみたい。今の処「最後の晩餐」に食べたい料理では第一候補か、これと近江「招福楼」の白飯、ブラス(勿論ライヨールの方)のクーランで締めたい(笑)。

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・和歌山「オテル・ド・ヨシノ」の「舌平目のパテショー」
 今はなきPARISの名店「ヴィヴァロワ」のスペシャリテが食べたいと、無理を云って手島料理長にお願いした料理、意外にも軽やかな味わいで、現代のメニューに入れても十分通用する、この時は同席したメンバーも濃くて、忘れ難い午餐会になった(笑)。

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・兵庫芦屋「オステリア・オ・ジラソーレ」の「手打ちのパッケリ、潮の香のソース」
 今回唯一のイタリア料理店、顔の濃さなら負けてはいない(笑)杉原料理長の名店、高級住宅地にありながらも、ベースは南イタリアのマンマの味だと感じる、「私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ」の、コクトーの詩の一節が思い出されるような、秀逸なパスタだった。

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・札幌「プロヴァンサル・キムラの「南フランスシストロン村仔羊背肉のロースト、黒米を詰めたプチトマト」
 今年16年ぶりに輸入解禁された、仏シストロン産仔羊を料理するなら、同じプロヴァンスで働いていた木村料理長は最適任者、そう思わせる圧巻の肉料理、国産羊もかなり良くなっているが、まだ足りないものがある事を知った。
 エントリーは以上だが順位は付けられない(笑)。

 以下は今年オープンで、今後の展開を期待したい料理人の店で、
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・新橋「コフク」の「新潟県産 玄米(上に金時草)」
 フランス料理と北欧料理の経験を経て、国産食材のみで作る「日本でしか食べられない料理」を目指している赤木料理長、コンセプトは興味深く、あとは客とどう折り合いを付けていくかだが、これから楽しみな才能だと思う。

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・札幌「Obtenir K(オプトゥニール・ケイ)」の「マダチ(鱈白子)のムニエル、ソースブイヤベース」
 1983年生れと云う若さながら、古典派料理を志向する藤谷料理長、この分野には濃くて重い先輩達が多く(笑)、彼等に較べるとまだ足りないと思う部分はあるが、これから経験を積んでいけば、札幌を代表する料理人になる可能性あると思う、5年後10年後が楽しみ。

 以下は他の料理ジャンルから印象深かった2店。
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・南青山「MAMA」のランチメニュー「イベリコ豚のカツカレー」
 過去人生最高のカツカレーを選ぶなら、現在の処これか(笑)。高級フレンチ出身の料理人とサービス2人が営む、箸で食べる創作料理、インテリアも素晴らしいし、家から近かったら、毎月いや毎週でもランチに通いたい店(笑)。

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・西新井「香府山」の「担担麺(ランチセット)」
 地元足立区内に、こんな秀逸な中国料理店がある事を今迄知らなかったのを恥じる、車か自転車でないと行き難いが、この担担麺は中国料理店ならではの、湯の深さある味と香辛料使いで秀逸だった。

 次回は「デザート&スイーツ編」の店です。


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代官山「レクテ(Recte)」(2017年12月)

 私の好みは相当偏っているので、あまり参考にはならないし、それよりまず訊かれないと思うが、もし「ジャンルを問わず、今年初めて行った店の中から一つだけ選べ」と云われたら、代官山と恵比寿の中間にあるフランス料理「レクテ」と答えると思う。
 旧「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」を約一年かけて改装、店名も変更しリニューアルオープンしたこの店だが、前回利用時に佐々木料理長の豊富な経験を感じさせる、安定感ある料理に瞠目、「近いうちにまた行きたい」と思っていた処に、関西から食通友人がやって来る事になり、私が書いた記事でこの店に興味を持ったらしく、意見が合って昼に再訪問する事になった。
 「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」は、現「ア・ニュ・ルトゥルヴェ・ヴー」の下野氏、「ル・スプートニク」の高橋氏が歴代の料理長、更にこの場所はそれ以前には「オ・コション・ローズ」として、井上料理長が名を馳せた由緒ある場所、友人はその3人の料理を体験しているので、どんな感想を云うのかその楽しみもあった(笑)。
 JR恵比寿駅で友人夫妻と待ち合せ、西口のケンタッキーフライドチキンの角から、雑多な飲食店街を抜け代官山方面へ向かう、日曜昼のこの界隈は「夢破れて山河あり」みたいな雰囲気も漂っている(笑)。
 店が入っているのは建物の2階、階段を上がると店名表示の一切ない大きな扉、開けるとすぐ客席になる、齊藤支配人とサービス&ソムリエの辻氏に挨拶すると、予想どおり前回同様奥の個室に案内される(笑)。

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 外は冷たい風が吹いていたが、個室内は明るい光が差し込み、サンルームみたいな穏やかさ、支配人が注いでくれたシャンパーニュで乾杯し昼餉が始まる。

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・三野農園牛蒡のスープ(中に今治産ワタリガニの身)

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・蝦夷鹿のパテ

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・音更町庄司農園はるきらりとライ麦の一品(パン)

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・松島産牡蠣とポワローを様々な火入れで

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・函館産平目と山内人参

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・白糠産蝦夷鹿のシンタマ

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・コーヒー、紅茶、ハーブティーのメニュー

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・スフレショコラとプラリネアイス

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・コーヒー(ニカラグア エル・リモンシージョ農園 パカマラナチュラル)

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・ミニャルディーズ(カヌレ、フィナンシェ、黒糖のショコラきな粉)

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・辻ソムリエ考案のドリンクペアリング(良かったです、あとは「フロリレージュ」みたいに、プレゼンに工夫があるともっといい。)

 まずアミューズがスープで始まるのは、「手で摘まんで」のフィンガーフードよりホッとする、「それが古い」と云われそうだが、私は旧世代なのだろう(笑)。
 蝦夷鹿のパテは量がしっかりあり、味も割と食べ易くしてあった、添えてあるマルメロのコンフィチュールが効いている。牡蠣料理はポワロー葱を多彩な調理法で添えてあり面白い、クラシックな様でいて何処かにPARISのエスプリを感じさせる、佐々木料理ならでは。
 前回の魚料理も旨いと思ったが、今回も秀逸で次の肉料理のために味わいを抑えているが、それでいて印象に残るもの、秋田産山内(さんない)人参の味がいい。
 肉料理は蝦夷鹿の内モモ肉で火入れが抜群、最近では「ル・スプートニク」と双璧か。佐々木氏は洞爺湖の高級ホテルで働いていたので、今でも北海道の生産者や猟師と繋がりがあるそうで、この鹿も銃痕、血抜きの状態と保管が申し分ない個体との事。
 洞爺湖時代から一緒に働いているパティシェールが作ったデセールとミニャルディーズもよかった、チョコレート、バター等原価の高い素材を沢山使っている(笑)。選べる食後ドリンクのアイデアも評価したい。
 これだけ充実した内容なのに、後で支払い額を見ると申し訳ない位に安い、思わず「星なんて付かないで良かった」と口走りそうになるが、スタッフ達には勿論云えない(笑)。客人夫妻もきっと満足された事と思う。
 1973年生れの佐々木氏、同年生まれの「古屋オーガストロノム」の古屋氏と、どうしても比較したくなるのだが、重厚でいながら柔らかさもあり、根底にはレジオン(地方)の骨太さを感じる古屋料理に対して、軽快でいながら芯の強さがあり、国産食材を使いながらPARISの味も感じさせる佐々木料理。古屋氏がベートーヴェンなら佐々木氏はモーツァルト、古屋氏が宮本武蔵なら、佐々木氏は名前のとおり佐々木小次郎(笑)、何かそんな違いを感じる、共通しているのはどの料理も安定していて、不出来な皿が無い事。欧州戦線の最前線で戦って来た二人の料理には、静かな凄みとブレない普遍性がある。

 食後、席に挨拶に来た佐々木氏、3年間料理長だったPARIS時代の話、日本へ帰って来た動機、食材の話などで盛り上がってしまい、友人夫妻を交え気が付いたら、3時を過ぎ4時近くになっていて、スタッフの休憩時間まで浸食してしまったみたいで、すいませんでした(笑)。
 色々面白い話も聞けたが、此処に書くと差し障りありそうなので、興味のある人は是非一度訪ねて聞いてください。料理は間違いないレベル、スタッフ達の動きや表情も前回より硬さが取れ、居心地が良くなったと思う。
 佐々木料理長、齊藤支配人、辻セルヴール、遅くまでありがとうございました。
 
 年内の単独店記事は今回で最後になり、次回・次々回は年末恒例の「今年印象に残った店」を記事にします。 


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
店の点数評価等はしません、「食と人」を描きたいと思っています。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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